IT・科学
大量の宇宙ゴミ「ちゃんと捨てる」「掃除する」 対策は進んでる?
〝お掃除〟衛星、日本企業が打ち上げ
ハワイの上空で2月8日深夜、巨大な火の玉が目撃されました。使い終わった中国のロケットの残骸が大気圏に再突入したとみられます。近年はロケットや人工衛星の打ち上げが増え、宇宙ゴミの対策が課題になっています。そこで、漂う宇宙ゴミを「掃除する」計画が持ち上がり、日本の企業がそのための衛星を打ち上げました。(デジタル企画報道部・東山正宜)
火の玉は、ハワイ時間で2月8日午後11時48分ごろ、ハワイ列島の最高峰、標高4200メートルのマウナケア山頂に朝日新聞宇宙部が設置している星空カメラが捉えました。
カメラは、国立天文台のすばる望遠鏡が入っているドームの作業用の足場に取り付けられており、北東の方角を向いています。
火の玉は、カメラの視野に右側から入ってきて、ゆっくりと水平線の上を移動し、再び視野の外に出て行きました。
この間、2分ほど。この間、火の玉からはいくつもの破片が分離して、燃えながら尾を引いていきました。
その様子はさながら小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還のようでした。
宇宙ゴミの再突入を監視している米国の非営利法人「エアロスペース」によると、今回再突入したのは、北アメリカ航空宇宙防衛司令部(NORAD)が48257の番号を付けた物体でした。
この物体は、2021年4月に中国山西省の太原衛星発射センターから打ち上げられました。
その後、宇宙ゴミを監視している豪企業「HEO」が撮影したところ、長征6号ロケットの衛星フェアリング(カバー)の一部とみられることがわかりました。
宇宙ゴミは現在、直径10センチ以上のものだけでも2万~3万個あるとされ、新たな打ち上げがあるたびにどんどん増えています。
米国と中国、ロシア、インドが衛星をミサイルで破壊する実験をしたほか、2009年には衛星同士の衝突事故も起き、さらに多くの破片が新たなゴミになっています。
こうしたゴミは極めて速い速度で動いていますから、ぶつかると大きなダメージを与えます。
これまでに、いくつもの人工衛星がゴミと衝突して壊れていますし、国際宇宙ステーション(ISS)がゴミとの衝突を避けるために軌道を変えたり、滞在している飛行士が避難の準備をしたりしています。
これから宇宙開発をさらに進めていくには、宇宙ゴミ対策は喫緊の課題。そこで考えられているのが、ゴミを「ちゃんと捨てる」、「掃除する」の二つです。
「ちゃんと捨てる」は、打ち上げたロケットを早めに落下させたり、使い終わった人工衛星を「墓場軌道」と呼ばれるゴミ捨て場に移動させたりすることです。
これらはすでに各国が取り組み始めていて、新たなゴミをなるべく出さないようにしようという意識は高まってきています。
問題は、すでに燃料を使い果たして漂っているゴミです。
これから打ち上げたり、設計したりするロケットや衛星は対策のとりようがありますが、自分で動けないゴミはいかんともしようがありません。
そこで考えられているのが、お掃除衛星を打ち上げて、ゴミを動かそうという計画です。
お掃除衛星がドッキングして相手(ゴミ)を押したり、ケーブルをくっつけて引っ張ったり、磁気の力で軌道を変えたりといった案が検討されています。
しかし、かなり高度な制御が必要です。いずれにしろ、ゴミがどんな状態なのか、確かめてみないとどうしようもありません。
そこで、日本の企業アストロスケールが2月18日夜、ニュージーランドから打ち上げたのが、衛星「ADRAS-J」です。
2009年に打ち上げられたH2Aロケットの残骸に近づいて調査する計画で、漂っているゴミに接近して、状態を近くから確かめます。
アストロスケールは「宇宙のロードサービス時代の幕開けで、世界の宇宙産業界にとっても大きな一歩」としています。
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