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若者の社会運動「若いのにすごい」と言われがち? 大学生の本音は

社会学者が語る「若者と運動」。「若者」に読んでもらいました。

社会にアクションを起こしている3人に、オンラインで語り合ってもらいました。平井登威さん(左上)、章子昱さん(右下)、古井茉香さん(左下)
社会にアクションを起こしている3人に、オンラインで語り合ってもらいました。平井登威さん(左上)、章子昱さん(右下)、古井茉香さん(左下)

目次

若い世代が社会課題にアクションを起こしたとき、大人に比べて注目されやすい状況はないでしょうか。社会学者の富永京子さんは、社会運動で重要な「革新性」よりも、運動をする人の「若さ」に価値が置かれがちだと指摘します。学生の頃から社会課題の解決に取り組んできた3人に、「若者と運動」について考えてみてもらいました。

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早稲田大学2年・古井茉香(ふるい・まのか)さん…高校1年生のとき、都市部と地方の教育格差の解消を訴える学生団体を立ち上げ。現在は地元・青森県の地域おこしにも注力。

慶応義塾大学2年・章子昱(しょう・こいく)さん…高校で生徒会長を務め、コロナ禍で「全国オンライン学生祭」を開催するなど、メディアに取り上げられた活動多数。現在は若者向けテレビ番組にも出演。

関西大学4年・平井登威(ひらい・とうい)さん…精神疾患の親を持つ子ども支援のNPOを立ち上げ活動。自身も当事者としての経験を行政やメディアに向けて発信している。
【※こちらのインタビュー記事を踏まえて話してもらいました】若者の社会運動、ほめそやす年長者 革新性ではなく「若さ」拾う思考:朝日新聞デジタル

求められる姿でいるのは合理的だけど…

――富永さんはインタビューで、若者が社会運動をしたときに、その「若者性」に注目したり、その注目を大人自身の主義主張のために体よく使ったりしているのではないかと語られていました。

 

平井さん

若者を応援した方が社会的に評価されるということは、いまの社会の流れでは当たり前かなと感じます。一方で、大人から応援されるときに「同志」もしくは「社会を変えていく仲間」という見られ方はしていないように思います。

でも、経験が少なく、知識も少ない僕たちの方が、「同志」と見られないのは仕方ないことなのかもしれません。

そういった状況の中で、逆に若者世代が「若いから取り上げられやすい」風潮を利用して、大人から評価された方が合理的な場合があるというのはあります。

そのときのジレンマは、若さを利用しやすいからこそ自分を含め若者は闘わないな、ということです。求められる姿でいることが合理的だからこそ、闘わず、若さをいいように利用してしまっているのかもしれません。それによって、自分たちの知見のなさをごまかしているようにも感じる。
――富永さんは、メディアに取り上げられる運動に取り組む若者を研究する、トッド・ギトリンという研究者を紹介していました。「メディアに繰り返し取材されるたびに、若い活動家がメディアの考える『若者活動家』らしい振る舞いをするようになるというものなんです」

 

古井さん

非常に共感します。
平井さんの発言に併せて思ったのは、「合理的にリソースを獲得するために戦略をとる」ということです。

「こう見せたら取り上げられやすくなるだろうな」の中に「若者っぽさ」を取り入れて考えることもあります。

本来は、プログラムの「本質」を訴えるべきだけど、甘えの行動をしている自覚があります。

見せ方という点で、いま悩んでいることがあります。

高校生の時、教育格差の解消を訴えた学生団体を立ち上げ、複数のメディアに取り上げられて「よいしょ」され続けました。「高校生なのにすごいね」と言われて気持ちよくなってしまったんです。

その結果、メディアでみせる「外枠」の部分と、自分が団体立ち上げ当初に考えていたこととの整理がつかなくなってしまいました。最近になって、ようやく少しずつ大切にしたいものが戻ってきた感覚はありますが、もう一度心の整理をしないといけないと思っています。

大人の価値観に左右されない資源配分は可能?

――まさにトッド・ギトリンの研究そのもの、ですね。資源が少ない若者にとって、資源獲得のためにメディアに出ることは重要で、その結果メディアの考える「若者活動家」らしい振る舞いをする、と。

 

章さん

現状、お金など様々なリソースが大人に集中しているのは間違いないことです。それを獲得するために大人が好みそうな「表面」を作り、リソースを獲得していく現状があります。

でもそれ自体が間違っていると思います。つまり、リソースを当たり前に若者に回すべきだと私は考えています。 この先の社会を変えていくのは当たり前ですが若者です。リソースの大部分を大人が持っており、「評価軸」を大人が造ってしまっているから、大人の価値観に合わせた「顔」を若者が作っている、その現状はよくないと思っています。

 

平井さん

「力」の定義の問題でもありますが、若い人の方が力不足ではあると思います。 そういう意味では、若者にリソースを投入するときに、期待すべきは高確率で成果を出すことではなく、「チャレンジ」に投入するかたちになると思います。見返りを過度に求めない仕組みがあったらいいのにと思います。

 

章さん

少子化で若者は数が少ないですが、今後の社会を担う世代です。 人数が多い方にリソースが回されるのはある種合理的ですが、「今後の社会を担う」という視点で、リソースは分散すべきです。 富永さんの「クラウドファンディングで匿名で寄付するぐらいの距離感がちょうどいいのかな」という提案に共感しました。

<あるアクティビストが「年長者ができることは、基本的には静かに資源を供出することだけじゃないですかね」とおっしゃっていて。この「静かに」がいいなと思いました。

そういう意味で、それこそクラウドファンディングで匿名で寄付するぐらいの距離感がちょうどいいのかなと思います>
若者の社会運動、ほめそやす年長者 革新性ではなく「若さ」拾う思考:朝日新聞デジタル

 

古井さん

ある財団では、返済不要な奨学助成金を抽選で支給しています。

過去の自分は、自分がやりたいことを言語化できなかったし、ましてや大人に受けのいい言葉も出てきませんでした。だから、偶発的に機会が提供される「くじ引き」で選ぶのはいいと思いました。

 

章さん

いいですね。クラウドファンディングも結局「いい感じ」のものが選ばれてしまいます。でも、一回目の成功体験が大切だと思っていて、それがあれば、その先も作り上げられる。その経験を持てるかどうかではないでしょうか。

大学生になり、動きやすくなった

――大人が「若者性」に着目しすぎていると感じることはありますか。

 

章さん

価値観を押しつけるといいものが生まれないとわかっている大人が増えていると感じます。

大学生になってから、23歳以下の若者が集まり議論する場「U-23サミット」の代表をしましたが、「基本的に内容は参加者の自由にする」と約束してくれる企業に協賛してもらいました。 企業側も、若者と価値観をすりあわせる方が効果的に関係を築けることがわかってきてくれているような気がします。

 

古井さん

高校生のときは、大人と話すときには制服だったし「お前に何ができるんだ」という見られ方をしていた気がします。

ですが、これまでやってきたことも含め、ある程度の肩書を得たことで信頼される要素を得られた。そうなると、「もうそろそろ自分に正直になってもいいかな」という気持ちになりました。

若さに注目されると焦りを感じる

――「若さ」に注目されることはどう思っていますか?「そこじゃないんだけどな」という気持ちになったりしませんか?

 

古井さん

若さに注目されると、実力不足を感じてしまう。「どこがすごいと思っているんですか?」と逆に聞きたくなります。

 

章さん

高校生の時の活動は、私も焦りを感じていました。

若さというのはいずれなくなります。これがなくなったら何が残るんだろうと思っていました。

自分を含め、多くの高校生や大学生の活動は「若いのにすごいね」と言われます。しかし本来は、若さではない「すごい」要素があるはず。「若いのにすごい」というのはシンプルにまとめられすぎていると感じます。

 

古井さん

「若いのにすごい」っていわれるときの「すごい」は、振り返ってみると、当事者目線の課題に気づいていたり、企業が事業化できていないところを見つけたりしていることだと思います。

形骸化された誉め言葉ではなく、「すごい」を細分化して言語化することが必要だと思います。

 

平井さん

「若いのにすごいね」は、過去の自分との比較なんじゃないでしょうか。 私は二人より少しだけ年上で、高校時代はサッカーばかりやっていました。そんな私から二人をみると、やっぱりすごいと思う。「高校生のときの自分はこうだったけど、この人は高校生でもうこんなことをやっているのか」という気持ちです。 ただ、それを「若いから」とまとめるのではなく、細分化してどこがすごいのかを伝えられるといいんですね。

「経験だけですべてを語ることはできない」

――富永さんのインタビューでは、メディアが若者性に注目しがちなことへの指摘もありました。メディアはどうしたらいいんでしょうか。

 

章さん

若いからすごい、という視点で伝えても、受け手の役に立ちません。「若いからすごい」じゃなくて、何がすごいのかまでちゃんと伝えてほしい。「何が」こそが、多くの人の役に立つことです。

 

平井さん

「若さ」がニュースバリューになるという雰囲気はどうしてもあるからこそ、難しいと思います。

でも、古井さんが言っていたように何がすごいのかを細分化しないといけないし、若者側からも、伝え方を変えることができるはずです。

 

章さん

ほかにも、「若い=経験が少ない」「経験が少ないと成功は難しい」「経験が少ないのに成功していてすごい」という、「経験至上主義」的な風潮もありますが、私は案外そうでもないと思っています。
経験がないからこそつくれるものがある。経験がないからこそ見える社会があると思います。 経験があると成功率が上がるのは間違いないですが、確実な成功と、爆発的な奇跡はどちらもあり得ます。だから、すべてを経験で語るのには反対です。

 

古井さん

確かに、これまでを振り返ると、経験がないからこそできたこともあったし、大人と関わったことでスモールビジネスをできるようになったりもした。

年を重ねるごとに一つ一つリソースを獲得しながら成長できたらいいのかなと話を聞いて思います。

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