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本物の犬にしか見えない… 500時間かけて作った羊毛フェルト作品
500時間かけて制作したという作者に話を聞きました
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500時間かけて制作したという作者に話を聞きました
本物の犬かと思いきや、実は羊毛フェルト作品でした――。そんな動画がTikTokに投稿されて注目を集めました。500時間かけて制作したという作者に話を聞きました。
先日、TikTokに投稿された1分15秒の動画。
モデルとなったミニチュアピンシャーの「モナカちゃん」の写真も紹介しながら、完成するまでの様子が収められています。
ブラッシングしたり、毛をカットしたりしながら仕上げていく様子は、まるで本物の犬のよう。
この投稿に対して「生きてる」「今まで見た羊毛作品で1番リアル」といったコメントが寄せられ、いいねの数は3万2000を超えています。
「他の制作依頼が重なっていたこともあり、最終的に7年越しでの完成となってしまいました」
そう話すのは、羊毛造形作家の太田光美(てるみ)さんです。
およそ500時間かけて制作したというこの作品。
ミニチュアピンシャーが短毛種であることから、難易度が高かったといいます。
「骨格や肉のたるみなどの体のラインが毛で隠されていないため、お顔を含め全ての箇所をきっちり作り込まなければなりません。その上、植毛作業も長毛種に比べ何倍、何十倍もの手間がかかります」
何種類もの羊毛を混ぜて色を作り、少量の毛束を専用ニードルで少しずつ刺し込んで植える作業。
毛束と毛束の間に数ミリの隙間があるだけで、きれいな毛並みが表現できなくなるため、隙間なく植える必要があるそうです。
「ただ密に植えればいいだけではなく、そこから艶やかで滑らかな見た目と手触りにするため、毛並みを整える作業にも時間をかけています」
そんな太田さんが先月、TikTokに投稿した作品が「白象」。
高さ180センチと、これまで作った中で最も大きな作品です。
初めてお披露目したのは2018年で、東急プラザ銀座に展示した「まめやかモノガタリ。」のメイン作品でした。
制作期間が2カ月弱しかなかったため、展示が終わってから手直しすることに。
全体のバランスを再度検討し、象の硬そうな皮膚、細かなしわや腹部などの膨らみをさらに細かく表現。
開いた口から見える舌や、奥に見える歯やまつ毛なども加えたそうです。
「左右の顔の表情に違いをつけ、左面は優しさや包容力、右面は強さや凜々しさを表現し、見る角度によってりさまざまな表情や意思を感じられるように意識しました」
コロナ禍での個展中止もありましたが、オンラインサロンを開講して羊毛フェルトの魅力を伝えている太田さん。
昨年末には、新たな挑戦として羊毛造形の「写真絵本」も出版しました。
「出産を経て、以前のように制作にあてる時間を確保できなくなりましたが、今までにはなかった感情で物事を見る目が養われたような気がします」
現在、依頼を受けての制作はストップしているそうです。
TikTokの投稿が注目を集めたことについては、こう話します。
「白象が『神々しい』『神秘的』などとコメントをいただいているのを見ると、表現したかったイメージが伝わっているようで、とても嬉しく思います。ミニチュアピンシャーに関しては、本当に多くのコメントをいただいていて、ここ数年なかなか制作や展示ができていなかった分、報われたような気分です」
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