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1万5千本分が流出 能登ワイン、発送を再開「買って応援」の声に…
「瓶が汚れていてもいいので、再開したら送ってください」「また飲める日を楽しみにしています」――。能登半島地震で被災した石川県穴水町のワイナリー「能登ワイン」。貯蔵していたタンクからはボトル1万5千本にあたる量のワインが流出してしまいました。1月末、ようやく商品の発送再開にこぎつけましたが、支えになったのは全国からの応援の声だったといいます。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
1月1日に能登半島を襲った地震により、石川県穴水町のワイナリー「能登ワイン」には多くの被害が出ました。
激しい揺れによって、たるや棚に並んだワインの瓶が落ち、天井の照明がゆがみました。
特に被害がひどかったのは、瓶詰め前のワインを貯蔵していたタンクでした。パッキンがずれて、1万リットルものワインが流出。これはボトル1万5千本に相当する量でした。
道路が土砂崩れなどで寸断されていたため、被害を確認できたのは1月3日のこと。そこから社員総出で片付けを始めました。
ちょうど1〜3月はブドウの木の剪定(せんてい)の時期でした。
被災したワイナリーの片付けに追われ、剪定作業は遅れ気味に。能登ワインの専務・宮下謙二さんは「新芽が出る前に枝を切らないと、ブドウの成育に影響が出てしまう」と懸念します。
2006年にワインの製造を始めた能登ワイン。地元産のカキ殻を畑にまき、ミネラル豊富な土壌で育てたブドウでワインを醸造してきました。
いまだ断水が続き、瓶や機械の洗浄ができないため、製造はストップしています。断水が解消されるのは3月との情報もあり、製造再開は春以降になる見通しだといいます。
被害がなかった商品の在庫があったため、オンライン販売での注文だけは地震後も受け続けていました。
ワイナリーの片付けが一段落した1月末、受けた注文の商品発送を再開することができました。
地震後1カ月で発送再開にこぎつけた理由の一つに、全国からの応援や励ましの声があったといいます。
「頑張ってください」「また飲める日を楽しみにしています」「瓶が汚れていてもいいので、再開したら送ってください」「近くの酒屋さんに売ってたから買って応援するよ」――。
SNSやホームぺージなどを通じて、全国からたくさんの応援のメッセージが届いたそうです。
宮下さんは「多くのネット注文もいただき、応援の声に励まされました。やっとお客さんに能登ワインを飲んでもらうことができ、一歩ずつですが前に進むことができました。ただ、製造再開が春以降になることは今でも不安を感じています」と話しています。
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