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年齢差が薄まる〝消齢化〟 世代論、どう思う?Z世代やロスジェネは
押しつけの世代論とは違うこれからの「世代論」
団塊、バブル、ロスジェネ、ゆとり、Z…なにかと「世代」でくくられがちな日本社会ですが、好みや価値観における世代間の差が縮まっているとの調査結果が発表されました。多様化が叫ばれる時代に、「世代論」は必要なのでしょうか。
博報堂生活総合研究所が昨年、高齢化ならぬ「消齢化」という世代の意識変化に関するキーワードを発表しました。20~60代を対象にした30年に及ぶ定点調査の変化から、「生活者の意識や好み、価値観について、年齢による違いが小さくなっている」としています。
例えば、「将来に備えるよりも、現在をエンジョイするタイプである」「いくつになっても恋愛をしていたい」「家庭生活よりも仕事を第一に考える方だ」といった項目で、年代間の違いが小さくなっている、といいます。
同研究所は背景として、元気なシニアが増えるとともにデジタル化で「できる」ことが増えたこと、従来の常識や慣習など伝統的な考え方から離れる形で社会から「すべき」という固定観念が減ったこと、さらに生き方の選択肢が広がることで他の年代と好みや関心の重なりが大きくなった、といった要因を挙げています。
世代の違いがなくなるなか、世代論は必要なのか。様々な立場の人に聞いてみました。
貧困や格差を見つめてきたノンフィクションライターのヒオカさんは、1995年生まれの自分の世代の自覚はなく、「中ぶらりん」だと言います。ただ、世代でくくることには一定の意味や必要性はある、とも。そんなヒオカさんが世代の違いを感じるのは「ハラスメントへの耐性」「働き方に関すること」だと言います。一方で、世代だけにとらわれず、世代を貫く「階級」や「貧困」の構造にも目を向ける必要がある、と語ります。
マーケティングの世界から世代を発信してきた人はどう考えるのか。「Z世代」「さとり世代」の著者で、世代をくくり、広めてきたマーケティングアナリスト・原田曜平さん(46)は「そもそも世代論って浅いもの」と語ります。それでも、テレビからYouTube、TikTokへとメディア環境が変化し、世代間ギャップが広がるなかで、今後さらに世代論の重要性が増していく、と強調します。また、「若者研究は未来研究」と語り、世代論を「未来予測」として活用すべき、と提案します。
様々な世代の中でも、「就職氷河期」「ロスジェネ」は当事者たちが世代を打ち出すことによって社会の問題を可視化させました。一方、課題は解決されぬまま現代に続いています。「『丸山眞男』をひっぱたきたい 31歳、フリーター。希望は、戦争。」と題した論考を2007年に発表し、ロスジェネ論客として注目されたフリーライターの赤木智弘さん(48)は「人々を語る上で世代論を絡めないというのは、社会性を喪失したまま個々人を語ることになってしまいます」「世代論をしっかりと見据えなければ、現代をも見据えることができないと、僕は考えています」と語ります。
1997年生まれの在米ライターで「#Z世代的価値観」著者の竹田ダニエルさんは、米国のZ世代について当事者目線から分析・発信しています。竹田さんは米国のZ世代について「今の資本主義や既存のシステムが機能せず、うまくいかなくなっているという価値観を持っている」と指摘。一方、日本では、特にマーケティングでつくられた「物を売るためのレッテル」というイメージが強いせいか、「Z世代」という言葉への嫌悪感が強いと感じる、といいます。その上で、竹田さんは世代論について「社会分析をするうえで大事な属性。レッテル貼りではない形で傾向を分析すれば、色々なものが見えてくる」と語ります。
世代でくくられる人、世代をくくってきた人、日米の違い、など、様々な視点を通して感じたのは、世代論を考えることは、社会の変化や未来に向き合い、自らがよって立つ価値観を相対化することでもある、ということ。押しつけの世代論とは違うこれからの「世代論」が、新たな連帯や対話のきっかけにつながることを願っています。
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