連載
#5 #わたしと学校
「勇敢さがライオンと重なった」 今なら理解できる、同級生の生き方
金髪で自由な彼女が印象に残っています
子どもの頃、印象に残っているクラスメートはいますか? イラストレーターの珠虫(たまむし)さとりさん(@SatoriTamamushi)は中学時代、「とにかく怒られてはいけない」とがんじがらめな学生生活を送っていました。そんななか、「金髪」で自由なクラスメートの行動に感銘を受けたと話します。
中学時代、ノートに漫画を描いていた珠虫さん。クラスメートの「江藤ちゃん」に漫画を見せ、感想を聞いていました。
髪の毛は「金髪」でスカートの丈も短く、授業をサボる江藤ちゃんは、教師から目をつけられる存在でした。
当時校内で喫煙したり、窓ガラスを割ったりして暴れていた集団も金髪だったため、同じように思われていたのかもしれません。
ただ、珠虫さんは江藤ちゃんの「物や人にあたることもなく、筋の通る話をするところ」が他の金髪の生徒と違うと感じていました。
ある日、珠虫さんが江藤ちゃんに自作の漫画を見せていたところ、教師がやってきました。
「おい! 髪色直せって言っただろ」
「うーーーーす」
江藤ちゃんの返事に我慢ならなかったのか、教師は「聞け!」とノートを取り上げ、床にたたきつけました。
その様子が衝撃的だった珠虫さん。「先生が物にあたるわけ?」と立ち尽くしてしまいました。
一方、普段は温厚な江藤ちゃんでしたが、怒りがこみ上げ教師に向かっていきました。
「私に彼女と同じことができるだろうか」。教師につかみかかった江藤ちゃんを見て、珠虫さんは思いました。
暴力はあってはならないことですが、そのときの珠虫さんは江藤ちゃんの勇敢さと髪色が「ライオン」と重なって見えたのだといいます。
珠虫さんは、あの日のエピソードを漫画で描きました。登場人物はいずれも仮名ですが、実体験をもとにしています。
「マンガのノートをたたきつけられて自分が殴られたかのような衝撃で動けなくなりましたが、彼女が代わりに怒ってくれたので私のショックが消えていき、冷静になれました」と珠虫さん。
「普段は温和な彼女が激高したのは戸惑いましたが、『私にはこんなにも大事に思ってくれる友人がいる』と気づけ、うれしかったです」
自分だったら友人のために教師に向かっていけるだろうか、という思いもあったそうです。
大人になった今は、教師という職業の大変さも認識しています。
当時は生徒の視点だったからこそ、「彼女の勇敢さにライオンというイメージが重なったのだと思う」と話す珠虫さん。
「校則を守っていれば怒られなくて済む」「とにかく怒られてはいけない」とがんじがらめだった中学時代、江藤ちゃんの存在は「強烈に」印象に残りました。
「当時の自分に『彼女のような生き方も美しいじゃないか』と今だったら言えると思って描きました」と話します。
江藤ちゃんに見せていた漫画ノートは、今も大切に保存してあるそうです。
大人になってたまたま彼女と再会した際も、「あいかわらず我が道を行く、たくましく素敵な人でした」と振り返りました。
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「#わたしと学校」:マンガのSNSを運営する「コミチ」とwithnewsのコラボ企画です。
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