お金と仕事
更年期世代の働く女性の7割〝不眠症状〟専門家「改善、社会全体で」
「フェムテックは女性優遇ではない。社会全体に波及していくもの」
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「フェムテックは女性優遇ではない。社会全体に波及していくもの」
更年期世代の働く女性の約7割に、不眠症状がある――。大手ベッド会社などの調査で明らかになりました。関係者は「更年期の不調を当事者だけの問題とせず、社会全体で環境作りをする必要がある」と訴えます。
調査はパラマウントベッド(東京都)と、福島県の地域活性化を推進する会社「陽と人(ひとびと)」が、昨年年7月から今年1月末にかけてに実施しました。
更年期世代の40・50代の働く女性200人を対象としました。
WHOが作成した睡眠評価法「アテネ不眠尺度」などを使って、対象者の睡眠の状況を調査しました。
すると、「不眠症の疑いが少しある」もしくは「不眠症の可能性が高い」と分類された人は73%にのぼりました。
パラマウントベッドの睡眠研究所で、睡眠データを用いた実験や研究をしている理学博士の塩貝有里さんは、「女性ホルモンの一つ、エストロゲンが減ることによって睡眠中に無呼吸が起こり、睡眠の質が悪くなることが報告されている。そのため、閉経前に比べると不眠の症状を訴える女性の割合が増えるということはすでに知られている」と話します。
塩貝さんは、「これまでは半分ぐらいと言われていたので、7割という数字は思った以上に多かった」といいます。
また、睡眠時間が足りているかどうかの質問には、「十分である」と答えた人は20%にとどまりました。
調査では、実感している更年期の症状と睡眠の関係についても調べました。
すると、更年期の症状が重い人は、不眠症状も重いという相関関係が見られたといいます。
さらに、イライラや落ち込みなどの心の不調、のぼせやドライアイなどの身体の不調など、更年期症状のある30人の女性を対象に、セルフケアプログラムを行う実証実験も実施しました。
睡眠計測やカウンセリングなどを約1カ月にわたって行ったところ、参加した93%が改善効果があったと回答しました。
一連の調査に携わったNPO法人更年期と加齢のヘルスケア学会が認定する更年期カウンセラーの吉川千明さんは、セルフケアプログラムのカウンセリングに携わる中で、働く更年期世代の女性の「危うさ」に触れたといいます。
プログラムの参加者の中には、パートナーはいても一人で子育てをこなし、家事も仕事も抱えて短い睡眠時間しかとれていない女性や、仕事で抜擢されても「男性とは同等に扱われていない」と感じながら働いている女性もいたそう。吉川さんは、会社側は更年期症状を含めた女性の状況を知っているのか、不安に感じたといいます。
女性の健康に関する研修を医療関係者と開催したり、実施する事業が経済産業省のフェムテック実証事業に複数採択されたりしている「陽と人」代表の小林味愛さんは、更年期の女性がケアや知識を得ることについて、「女性個人だけが取り組むことなのか」と疑問を投げかけます。
「これまでは、個人の体調の問題だからと、女性自身がリテラシーをつけ、改善していくことが求められてきました。しかし、この問題には様々な社会的背景があります。個人だけに向けてそれを呼びかけるのは酷なのではないかと思います」とした上で、「これからは社会の環境作りに取り組む必要がある」と指摘します。
今回の調査と実証実験は、経産省の「フェムテック等サポートサービス実証事業費補助金」の採択事業です。
経産省・経済産業政策局社会制作室の青柳光葉係長は「フェムテックは『女性のもの』と捉えられがちですが、女性だけを優遇させるものではなく、社会全体に波及していくものだと周知を進めていく必要がある」と話します。
「女性が誰にも相談できず一人で抱えるのではなく、社会全体でお互いに支え合い、認め合い、許容し合う機運作りが非常に重要です」
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