ネットの話題
軽妙で明るいのに胸を打つ、暗さも魅力に 「置かあば」編集者に聞く
潮井エムコさんの魅力について、担当編集者に聞きました
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潮井エムコさんの魅力について、担当編集者に聞きました
「潮井エムコ」。noteやX(旧ツイッター)を使っている人であれば、一度は目にしたことがある名前ではないでしょうか。一筋縄ではいかない人間模様を軽妙なタッチで描くエッセイストです。1月に発売された初の著書「置かれた場所であばれたい」の魅力について、担当編集者に聞きました。
「女子高生の私が同級生と学生結婚した話」や「招待しなかった友達が結婚式に来た話」など、思わず目をとめてしまう見出しの数々。
クリックして読むと、笑いをこらえきれない描写の中に思わずホロッとくるエピソードが盛り込まれていて――。潮井さんのエッセイにはそんな魅力があります。
幼稚園教諭を経て医療従事者として働きながら、日々の出来事の中での気づきをnoteで公開。
その内容を紹介するXの投稿が何度もバズって、ウェブメディアなどで紹介されてきました。
「SNSを見ていて『これはいい話だなぁ』『えっ、これも同じ人が書いてるの?』と潮井さんのファンになり、すぐにお声がけしました」
そう話すのは、朝日新聞出版の大谷奈央さん。「置かれた場所であばれたい」の担当編集者です。
大谷さんが特に印象に残っているのが「ひろみちおにいさんといっしょ」。
「体操のお兄さん」として知られる佐藤弘道さんをゲストに迎えた、幼児教育者向けの研修会のことをつづったものです。
本を買ってサインをしてもらう時に「ひろみちおにいさんを見て育ちました」と声をかけて、「おおきくなったねぇ」と返された場面。
「その瞬間、私とひろみちおにいさんの間に21年分の風が通り抜けた」という描写があります。
潮井さんが生まれた年に体操のお兄さんになった佐藤さんと、潮井さんの人生が交差した瞬間。
その場面が大谷さんも脳裏にはっきりと浮かんで、本当に風が吹いたように感じたといいます。
本には書き下ろしや大幅加筆を含む26作品が収録されていますが、ひろみちおにいさんとのエピソードがトリを飾っています。
「置かれた場所であばれたい」というタイトルは、大谷さんが提案したもの。
渡辺和子さんのベストセラー「置かれた場所で咲きなさい」がモチーフになっています。
深刻なエピソードを軽妙に描いたり、笑いの中にも覆いきれない暗さが見え隠れしたり。
潮井さんのバランス感覚に着目して、暗くなりすぎず、笑いに振りすぎないように意識して考えたそうです。
「つらかった幼少期にあっても『目いっぱいやってやる』という強さを感じました。咲くというよりも『あばれる』がピッタリだなと」
表紙に描かれているのは、収録されている各エピソードに登場するリュックや卵、枝豆など。
その中に、宙に浮かぶ潮井さんが描かれています。
「あばれているようにも、寝ているようにも、喜んでいるようにも見える。そんなイメージでイラストレーターさんに描いていただきました」
収録作の順番を決めるにあたって、潮井さんのnoteを全部印刷して実際に並べながら考えたという大谷さん。
それを見た潮井さんは、「うぁ……」と何とも言えない声を上げていたそうです。
Xのアカウントについては「プレッシャーになるかも」と思って、あえてフォローせずに閲覧。
校正作業中にこんな投稿を見つけた時は、泣きそうになったといいます。
「編集さんの業務の幅広さが想像以上でマジで頭が上がらない。世に出てる本はみんなこんな風に作家と編集さんが奔走して出来上がっているんだと思うとこれから本屋に入るだけで泣いちゃいそうだ」
あまりにうれしくて、この投稿をシール化してスマホに貼っています。
毎日がちょっとつらい、自己肯定感が低くて悩んでいる。そんな人に届けるべく編集した一冊について、大谷さんはこう話します。
「私自身が『100%元気!』『明るい!』『ポジティブ!』な人の考え方はちょっと違うし……と感じてしまうタイプなので、ほの暗さが垣間見えるくらいのほうが『私もこうありたい』と思える気がします。つらい気持ちに寄り添ってくれる、でもクスッと笑わせてもくれる。そんな本になっているので、ぜひ手に取ってください」
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