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#12 宇宙天文トリビア
月のクレーターには人名が付く? 日本の探査機が着陸めざす地点にも
日本の月探査機が、1月20日にも月面着陸に挑みます。着陸する地点は、「SHIOLI(シオリ)」という名前がついたクレーター付近です。シオリクレーターってなんだか人の名前みたい…。そもそも、月のクレーターの名前はどう決まっているのでしょうか。調べてみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
1月20日未明、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の月探査機「SLIM(スリム)」が月着陸に挑戦します。成功すれば、旧ソ連、米国、中国、インドに続き5カ国目となり、日本としては初の月面着陸となります。
昨年9月、日本の主力ロケット「H2A」に載せられて、鹿児島県の種子島宇宙センターから打ち上げられました。順調に飛行を続け、着陸の準備を進めています。
スリムは、月面の「神酒(みき)の海」と呼ばれる平原にあるクレーター付近に着陸する計画です。
降りやすい場所に着陸するのではなく、狙った場所に降りるという「ピンポイント着陸」が目標です。ほかの国も月面探査を目指す中、日本は高い着陸技術を確立しようということです。
この着陸点付近にあるクレーター、名前はなんと「SHIOLI(シオリ)」といいます。なんだか人の名前みたいです。
そもそも、月の表面には隕石が衝突してできたクレーターが多数あり、そのクレーターには、天文学者や有名な科学者、宇宙飛行士にちなんだ名前がつけられているものがたくさん存在します。
中には、天文学者の山本一清から「ヤマモト」、物理学者の仁科芳雄から「ニシナ」といったように、日本人の名前が名付けられたクレーターもあります。
月のクレーターや地形の名前は、国際天文学連合(IAU)が命名のルールを決めていて、IAUによって承認されなければいけません。
ルールとしては、例えば、月面の大きなクレーターには、すでに亡くなった有名な科学者や学者などの名前が使われます。政治的、宗教的、軍事的に関わる人物の名前は使えません。
小さなクレーターには、一般的に使われる名前(ファーストネーム)が使われます。
1969年に人類初の月面着陸をしたアポロ11号の3人の宇宙飛行士(アームストロング、コリンズ、オルドリン)の名前が付けられているクレーターもあります。
このシオリクレーターは、スリムのチームのメンバーがIAUへ提案し、承認されました。
メンバーは、こう名付けた理由について「スリムの着陸技術は、月探査の新時代を切り開くことが期待されています。スリムが、歴史のターニングポイントに挟まれる『栞(しおり)』となるよう願いを込めました」といいます。
プロジェクトを指揮する坂井真一郎さんは「かなり難しい挑戦になります。が、私たちチーム、関係者、そして、たくさんの人の思いが詰まったスリムなので、なんとしても着陸を成功させたいです」と意気込んでいます。
スリムの月面着陸は20日午前0時20分ごろの予定。JAXAのYouTubeチャンネルでもライブ配信があります。
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