お金と仕事
〝年収の壁〟対策、扶養枠意識する人の3割「利用する」の意味
「扶養をめぐる制度は複雑。わかりやすく内容周知を」
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「扶養をめぐる制度は複雑。わかりやすく内容周知を」
短時間労働者が「年収の壁」を意識せず働ける環境づくりの支援策として、政府が昨年末に打ち出した「年収の壁・支援強化パッケージ」。「壁」を超えて働いても、手取りが減らないようにする仕組みですが、扶養控除の範囲を意識して働いている人たちはこの対策をどう捉えたのでしょうか。民間の調査では、扶養枠を意識して働いている人の3割がこの仕組みを「利用する」と答えました。
「年収の壁・支援強化パッケージ」は、短時間労働をする人が「壁」を超えて働く際、社会保険料の負担分を穴埋めして手取りが減らないようにする仕組み。短時間労働をする人が繁忙期に労働時間を増やすなどし、収入が一時的に上がったとしても、事業主の証明書があれば、扶養に入り続けることができます。対応した企業には、1人最大50万円の補助があり、来年度予算に270億円が計上されます。
このパッケージについて昨年末、パートタイム労働などをする主婦・主夫層への調査を行っているしゅふJOB総研が550人を対象に調査を行いました。
調査では、2023年に収入上限を設けていたかどうか、2024年に収入上限を設けるかどうかを尋ねた上で、パッケージの利用を聞きました。
パッケージの利用の質問では、「政府は、130万円などの収入上限を超えても連続2年まで扶養枠内にとどまれる制度を打ち出しました。あなたはこの制度を利用しようと思いますか」と質問しています。
その結果、「利用して、収入上限を超えても扶養枠内で働きたい」が20.4%、「利用せず、収入上限に収めて扶養枠内で働きたい」が18.4%、「利用せず、扶養枠を外して働きたい」は26.4%という結果になりました。この回答者の中には扶養枠を意識せずに働いている人も含まれます。
しゅふJOB総研の研究顧問・川上敬太郎さんは2024年に収入上限を設定すると答えた人のうち、33.3%がパッケージを「利用する」と回答した調査結果に着目。
「扶養枠を意識して収入上限を設定する人」は、本来なら年収の壁以下の収入に抑えて働いている人たちとのこと。「収入上限を超えて働く意思がある人がおよそ3割いることになります」と指摘します。
さらに労働市場全体を見渡した視点として「パートタイマーはおよそ1000万人いるので、仮にその3割がパッケージ”の利用を考えているとしたら約300万人。それだけの数の働き手が労働時間を増やせば相当なボリュームになりそうです」と見込みます。
さらに、これまで職場では、年収の壁を超えないようにシフト調整をしてきた実態があるといいます。
「その工数を3割程度減らせることになります。それらを総合して考えると、実際におよそ3割がパッケージを利用した場合、見込める効果はそれなりに大きいのではないでしょうか」
その一方で、パッケージの利用について尋ねた回答の中で、11.6%が「制度がよくわからないので答えようがない」と答えたことについては「制度理解の壁」があるとも指摘します。
「扶養をめぐる制度は複雑なだけに、できる限りわかりやすく内容を周知する必要があります」と話しています。
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