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#11 宇宙天文トリビア
幻となった「しぶんぎ座」なのに… 新年初の流星群が4日にピーク
新年の最初を飾る「しぶんぎ座流星群」が4日にピークを迎えます。見ごろは4〜5日未明で、暗い場所でなら1時間に10個ほど見ることができそうです。それにしても、「しぶんぎ座」って聞いたことがないような…。そう、しぶんぎ座は今はもうなくなってしまった幻の星座なんです。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
しぶんぎ座流星群は8月のペルセウス座流星群、12月のふたご座流星群と並んで「三大流星群」と呼ばれています。
国立天文台によると、今年は1月4日午後6時ごろがピークとなります。ただ、この時間は「放射点」がまだ低い位置であるため、観察には向いていません。
放射点とは、地上から夜空を見たときに、ある1点から流れ星が放射状に飛んでくるように見える点のことをいいます。
見ごろは4日と5日の午前1〜5時ごろとなりそうです。街の明かりなどがない暗い空であれば、1時間あたり10個ほど見える可能性があると予想されています。
また、月明かりがあるので、月のない方向の空を見て観察するといいです。
流星(流れ星)とは、宇宙空間にある直径1mm〜数cmほどのちりの粒が地球の大気に飛び込んできて大気と激しく衝突し、光を放つ現象です。
流星群は、彗星(すいせい)などが放出したちりの帯に地球が突っ込むことで起きます。
ふたご座流星群は放射点がふたご座の方向に、ペルセウス座流星群は放射点がペルセウス座の方向にあるため、そう名前が付いています。
ところが、この流星群の名前に使われている「しぶんぎ座」は、現在では存在しない幻の「壁面四分儀(へきめんしぶんぎ)座」という星座に由来しています。
「四分儀」とは、天体の高度を測る観測装置です。象限儀(しょうげんぎ)とも呼ばれていて、詳しい日本地図を作った伊能忠敬も使っていました。
天体は時間と共に東から西へと動いています。その天体が南中(真南に来る)するときの高度は、観測する地点の緯度によって変わります。
それを知っていた伊能忠敬は測量時に、夜になると四分儀を使って星の高さを測り、その土地の緯度を決めていたそうです。
さて、この四分儀の名前を持つ「しぶんぎ座」、今はもう存在していません。なぜでしょうか。
国立天文台の担当者は「数百年前は、研究者がそれぞれ星をつなげたりして星座をつくり、星座が乱立していたことがありました」と説明します。
どうやら、同じ星でも別々の星座として、つながれていたようなこともあったそう。ちなみに、しぶんぎ座は18世紀にフランスの天文学者がつくったそうです。
「100年ほど前、国際天文学連合が全天で88個の星座を正式に決めました。その際に、しぶんぎ座は採用されず、廃止されることになりました」
ただ、しぶんぎ座があった方向に放射点があることから、今でも「しぶんぎ座流星群」と呼ばれています。現在の星座でいうと「うしかい座」と「りゅう座」の境界あたりになっています。
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