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紅白で幸せな1年を願う「年明けうどん」香川から広まったきっかけは
「うどん県」ブランド
「うどん県」としてブランド化している香川県では、年越しそばの代わりに「うどん」を食べるほか、近年では年始にも「うどん」を食べる食文化が根づきつつあるといいます。その名も「年明けうどん」。白いうどんに赤い具材を載せ、紅白のめでたい色合いで新年の幸福を願うといいます。いったいいつから、なぜ始まったのでしょうか?(withnews編集部・水野梓)
香川県の県産品振興課によると、「年明けうどん」が始まったのは2009年。香川県内のうどん団体が提唱してスタートしたのだそうです。
県の担当者は「年の初めに純白のうどんに赤い具材を入れて、紅白のめでたいうどんを1年の幸せを願いながら食べる、新しい食文化です」と説明します。
年明けうどんは、かまぼこ・海老・金時人参といった赤い具材が入っており、元日から1月15日までにいただくものと定義されています。
担当者は「最近は、赤い『あんもち』を入れることもあります」といいます。
「もともとお雑煮に、あん入りのもちを入れる郷土料理があり、それと年明けうどんがコラボしたメニューです。県外の方は驚かれるかもしれませんが、あまじょっぱい味わいが、いりこ出汁にとってもよく合うんですよ」と話します。
年始に先立って、2023年12月2、3日に高松市のコンベンションホールで香川県主催の「全国年明けうどん大会」が開かれました。
北海道から九州・佐賀、台湾からもブースが参加し、こだわりの赤い逸品が載った20の年明けうどんが集まり、3万1300人が訪れたそうです。
担当者は「年明けうどんの知名度はだんだん上がってきて、大手の食品メーカーがカップ麺を開発してくれたり、コンビニがメニューを開発してくれたりしています」と話します。
2024年は、大手うどんチェーン店「丸亀製麺」が1月3日から3年ぶりに「年明けうどん」の発売を予定。ズワイガニのほぐし身の贅沢なメニューが全国で楽しめるそうです。
香川県の担当者は、「うどん県としてのブランド力の向上、地域活性化につながればと『年明けうどん』の取り組みを県も応援しています。飲食店でも限定の年明けうどんを楽しんでもらおうと、検索できるサイトを公開しています」と言います。
有名店の年に1回しか食べられないメニューということもあり、そのうどんを狙って香川を訪れる観光客もいるそうです。
なぜ「年明けうどん」の取り組みを始めようとしたのでしょうか。
本場さぬきうどん協同組合の理事長・大峯茂樹さんは、「年明けうどん」が始まった経緯を「業界のメンバーで集まっていた時の雑談がきっかけ」と話します。
2008年に「世界麺フェスタ」を香川県の高松市や善通寺市で開催。「さぬきうどんをもっと盛り上げよう」という機運が高まり、うどんに携わる飲食店や製粉・製麺業界のメンバーが集まって、定期的に会合を開いていたそうです。
ある日、2時間ほどの会議が終わった後に世間話をしていたところ、あるメンバーが「年越しそばが終わったら何もないなぁ」と言ったそうです。
そこに大峯さんが「年明けうどんがあったらいいんじゃない」と何げなく応じたところ、みんなで「いいじゃないか!」と盛り上がったのが始まりだといいます。
メンバーで大手コンビニエンスストアや飲食チェーンなどを訪問し、「年明けうどん」のメニューづくりを交渉。2009年の年明けには、善通寺市の善通寺で「年明けうどん」2000食を配るイベントを開催しました。
2014年から県主催の「年明けうどん大会」の開催も始まり、認知度が高まっていき、ことしの「年明けうどん」提供店のサイトでは132店舗が紹介されています。
香川・小豆島にある大峯さんのうどん店「おおみねうどん」でも、1月15日まで「年明けうどん」を提供しており、大峯さんは「最初は鳴かず飛ばずだった年明けうどんが、ここまで根づいたことがうれしい」と話します。
「お店によって味が違いますし、いろんな具材で楽しめるので、ぜひ香川のうどんを多くの人に味わってほしい」と話しています。
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