連載
#10 プラネタリウム100年
なぜお寺にプラネタリウム? 声楽家でマジシャンの住職が星空解説
プラネタリウムがドイツで誕生して100年
都内のお寺にプラネタリウムがあるらしい。しかも星空解説をするのは、9カ国語をあやつるテノール歌手であり、マジシャンでもあり、テレビのキャスターもやっていた、アマチュア天文家の住職だといいます。情報量が多すぎる…。まずは訪ねてみることにしました。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
東京都葛飾区の京成立石駅から5分ほど歩いたところにある證願寺(しょうがんじ)。境内に入ると、ライオンと恐竜のオブジェが出迎えてくれました。
お寺としては、それだけでも十分風変わりなのですが、なんとここにはプラネタリウム施設が併設されています。名前は「プラネターリアム銀河座」といいます。
銀河座でのプラネタリウムの投影は月に2回ほど。床暖房完備で、靴を脱いで入るタイプの施設です。定員は25人で、一人ずつソファに座ってプラネタリウムを見ることができます。
星空解説を担当するのは、お寺の住職でもある銀河座館長の春日了さんです。
春日さんは、證願寺の第17代目住職。大学ではインド哲学などを専攻するも、卒業後はイタリアやドイツに留学して声楽を学び、テノール歌手として活躍しており、9カ国語で歌を歌えるそうです。
その後、帰国し、日本のニュース番組でキャスターやコメンテーターを経験。親が亡くなったことから、寺を継ぎました。
プラネタリウムを始めた理由について、春日さんは「幼い頃から天文が好きだったことや、日本人が無関心な仏教に親しみを持ってもらいたいことから、プラネタリウムの星の下で仏教を話す試みを始めました」と話します。
それが好評となり、仏教にかかわらず一般向けの投影が始まりました。
ほかにも春日さんは、ドイツ語の詩の朗読コンテストで優勝するなど、人前でのしゃべりが得意だといいます。
昨年、銀河座で開催された、睡眠を促すプログラム「熟睡プラ寝たリウム」でも話が面白すぎて、誰も眠ることができなかったという〝事件〟を引き起こしました。
今年11月の熟睡プラ寝たリウムでも、皆既日食やハレー彗星(すいせい)といった天文の話から、自身の失恋の話、ドイツでレンタカーを借りたら途中でガス欠になった話などで盛り上がり、熟睡どころか笑い声も響いていました。
春日さんは「銀河座は極めて特殊なプラネタリウム。『星空が見られる』『星に癒やされたい』という人は一般のプラネタリウムへ行く方がいいです」と笑います。
銀河座は完全予約制で、申し込みはホームページから。プレミアムコースを選ぶと、お茶やお菓子を味わいながら、日本奇術協会参与を務めるほどの腕前である春日さんのマジックも見ることができます。
12月24日には、「クリスマスイブに仏教に触れよう!」という斬新なプラネタリウム上映会も開かれます。
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