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連載

#25 #就活しんどかったけど…

秋に引退、就活に出遅れた…部活生を応援する〝おせっかい〟イベント

「ミーハー就活」する傾向がある学生に……

「業界研究会」での一コマ=「部活のみかた」提供
「業界研究会」での一コマ=「部活のみかた」提供

目次

部活動のユニフォームやジャージー姿の学生がずらり。12月に都内で行われた就活イベントに参加した学生の共通点は、国公立大学で部活に取り組んできた就活生です。秋に引退を迎える部活生もおり、就活に出遅れてしまうケースもあることから、主催者には「部活と就活の両立」を支援したいという狙いがあるそうです。

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就活しんどかったけど…

アメフト、ラクロス……夏のインターン逃す部活生

12月、東京都中央区で開催された就活イベント「業界研究会」。パナソニックや関西電力、日本航空など30社が出展しました。
参加したのは、アメリカンフットボールやラクロス、サッカーなどの部活に青春をかけつつも、就職活動を進める国公立の大学生79人です。それぞれが、部活のジャージーやユニフォーム姿で企業のブースに集まり、社員の話に熱心に耳を傾けます。

イベントを主催したのは、2019年に創立した会社「部活のみかた」(兵庫県宝塚市)です。全国の国公立大学の部活生(文化、運動いずれも)約1500人を対象に、就職活動の支援を行っています。

昨今の就職活動で学生たちは、3年生の夏のインターンから力を入れ始める傾向があります。
ところが、責任者の谷村謙一さんは「部活生にとって夏のインターンは中途半端になりがち」と話します。9月から11月にかけて部活の競技シーズンを迎える場合もあり、夏のインターンに参加できない学生も多く「行けたとしても、1、2社だけになってしまいます」と指摘します。

そこで、部活と就活を両立させたい学生を支援しようと、「部活のみかた」では夏以降、就活イベントを開催しつつ、12月から年明けにかけて、「業界研究会」と題したイベントを開催しています。実際に12月のイベントから就活を本格化させる部活生もいるそう。

信州大アメリカンフットボール部。写真はイメージです=2022年8月、長野県松本市、阿久沢悦子撮影
信州大アメリカンフットボール部。写真はイメージです=2022年8月、長野県松本市、阿久沢悦子撮影 出典: 朝日新聞

企業名で就活先を選ぶ…それでいい?

谷村さんが危惧するのは、部活生たちの「ミーハー就活」です。

「国公立の部活生は、勉強も部活もがんばってきているので、どの企業に入っても活躍できると思う」と話します。一方、他の学生に比べてスタートが遅れるため、自分の関心や得意な点を分析しきれないまま、知名度の高い会社を基準に就職先を探す「ミーハー就活」をしてしまう可能性があるのだといいます。

「自己分析ができていないがために、就職できても合わずにすぐ辞めてしまうようなケースもある」と指摘します。

そのため、業界研究会のほかにも通年にわたって部活生の就活をサポートしているのだそう。

特に、秋に引退した部活生が本格的に就活を始める第一歩となることが多い12月からの「業界研究会」では、企業ブースでの立ち見は基本的に「なし」としています。

設置した数席のいすに座れた人だけが説明を聞くことができ、「少ない人数で、企業の説明をじっくりと聞いてほしい」という狙いがあるそうです。もし希望する企業の席に座れなかったとしても、選択肢になかった業界の話を聞き「思いがけない企業との出会い」があるのも魅力の一つなのだといいます。

この「業界研究会」を経て、2月ごろまでは企業で働く社会人に話を聞ける「個別座談会」をオンラインで実施。その後、「部活のみかた」社員によるエントリーシート添削や模擬面接なども行い、部活生の就活に伴走します。谷村さんは「だいぶおせっかいだと思います」と笑います。

部活のみかたが主催する「業界研究会」では、「思いがけない企業との出会い」も大切にしています。写真はイメージです=Getty Images
部活のみかたが主催する「業界研究会」では、「思いがけない企業との出会い」も大切にしています。写真はイメージです=Getty Images

「社会の解像度が低かった」

このイベントを機に、自分の関心事を絞ったり、ギアを入れることができた学生がいます。

一橋大学4年のアメフト部主将だった倉田樹さんは、3年生の1月に参加した「業界研究会」を機に、希望の業界を定めることができ、無事内定を得たそう。

イベントに参加するまでは「学生時代はずっと部活をやっていたので社会の解像度がすごく低い状態だったし、(就活についても)特になにも考えていませんでした」。しかしイベント参加後、「国と関わりの深い企業への就職を希望するようになった」といい、最終的には政府系金融機関への就職を決めました。

神戸大学4年でテニス部の主将だった松本佳也さんも、3年の12月にイベントに参加。「強制的にスイッチを入れる感じだった」と振り返ります。業界研究会に参加したことで、「気になる業界がまったくない状態」から「ここは合う、ここは合わない」と、就職先を選びとるだけの知識がついていったのだといいます。

谷村さんが指摘していた「ミーハー就活」から一歩先に進んだ学生もいます。
名古屋大学4年の清水蓮さんは、就活開始当初は「名前を聞いたことのある企業で働きたいなあくらいに思っていた」といいますが、イベントで様々な業界の話を聞くうちに将来の道が具体化していったといい、広告代理店への就職を目指し、内定をもらっています。

企業にとっても、国公立の部活生に多く接触できる場としてのメリットがあるとされるイベント。年が明けてからの「業界研究会」は、2024年1月8日に東京、13日に大阪で開催されます。

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