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#10 宇宙天文トリビア
ハレー彗星、地球へ戻る「折り返し点」到達 「アレ」ともシンクロ?
およそ76年の周期で地球に接近してくるほうき星の「ハレー彗星(すいせい)」。前回観測された1986年には、姿をひと目見ようと「ハレーフィーバー」が巻き起こりました。12月上旬、そのハレー彗星が、再び戻ってくるまでの旅路の「折り返し点」に到達しました。ことしの流行語大賞「アレ」とも関連があるような、ないような……。詳しく解説します。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
ほうき星とも呼ばれる彗星。核と呼ばれる彗星本体は、氷やドライアイス、岩などが混じっており、「汚れた雪だるま」のような存在です。太陽に近づくたびに熱で溶けてガスなどが噴き出し、尾を引いたように見えます。
ハレー彗星は約76年の周期で地球に接近します。彗星の軌道を計算したイギリスの天文学者エドモンド・ハレーにちなみ、ハレー彗星と呼ばれています。
ちなみに、10月中旬〜下旬にかけてよく見られるオリオン座流星群は、ハレー彗星が放出した「チリ」に地球が突っ込むことでみられる流星群です。
ハレー彗星が前回地球に最も接近したのは1986年。ヨーロッパ宇宙機関や旧ソ連の彗星探査機、日本の探査機「すいせい」「さきがけ」などが観測を行いました。
当時は、ハレー彗星をよく観察しようと天体望遠鏡が飛ぶように売れたそうです。日本航空が、真上に彗星が見えるオーストラリアへ臨時便を出すなど、旅行会社の南半球への観測ツアーにも申し込みが殺到。「ハレーフィーバー」が起こりました。
東京・三鷹の東京天文台(現・国立天文台)では「ハレー彗星テレホンサービス」を設置。1日に1千人ほどから、問い合わせの電話がかかってきたそうです。
次にハレー彗星が近づき、地球から観測できそうなのは2061年。今年の12月9日、再び太陽の近くまで戻ってくる約76年の長い旅の中での折り返し点に到達しました。
この場所を「遠日点(えんじつてん)」といいます。太陽の周りを回っている天体は一般的に楕円形に近い軌道上を動いていますが、その軌道上で太陽から最も遠くなる点のことです。
ハレー彗星が到達したのは遠日点で、地球までの距離は地球の位置によって変化するものの、事実上、地球に近づく折り返し点を通過したと言えます。つまり、今後、どんどんと太陽や地球へ近づいてくることになります。
遠日点を通過した翌日の12月10日には、なんとも怪しげな「ハレー彗星遠日点通過記念祝賀会」なるものも開催されていました。
怪しげなパーティーがもう直ぐ始まります。 pic.twitter.com/tdZDm7O3py
— Hitoshi Hasegawa (@KinHase) December 10, 2023
実はこのハレー彗星、流行語大賞に選ばれた「アレ」とも興味深い関連があるかもしれません。もちろんこれは、「ハレー」と「アレ」、文字面が似ているということではありません。
国立天文台上席教授の渡部潤一さんは、「プロ野球の阪神タイガースが38年ぶりに日本シリーズで優勝したと聞き、ハレー彗星とシンクロしていることに気が付きました」と話します。
阪神が前回、日本シリーズを制したのは1985年。ハレー彗星はそのすぐ後の86年春に接近して、一大ブームを巻き起こしました。
そして今年の阪神は再び日本シリーズを制覇。その直後の12月に、ハレー彗星は太陽から最も遠い場所を通過しています。
「ハレー彗星はこれからどんどん地球に近づいてきて、2061年7月29日に最も太陽に近づきます。次はシーズン中の最接近となります。その年の阪神の成績はどうなるか…。期待できるのではないでしょうか」
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