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子の入院に付き添う親へ 「過酷な環境からひととき離れる」空間を
紅茶やパン、マッサージチェアなどが用意されています
コンビニで買ったご飯を食べ、簡易ベッドで眠る。子どもの入院に付き添う親たちは、何日もそんな生活を送ることがあります。24時間子どもに付き添うなかで、「わずかな時間でも心身ともにリフレッシュしてほしい」と、都内の病院に保護者向けの休息スペースが設置されました。コーヒー・紅茶や軽食、コンセント、マッサージチェアなどが用意されていて、親たちは自由に利用することができます。
12月上旬、心臓などの病気の子どもが入院する榊原記念病院(東京都府中市)に、付き添いの保護者のための「ファミリールーム」が設置されました。
子どもが入院する病棟と同じフロアに用意された、59平方メートルの空間。本棚やカフェスペース、軽食カウンター、ミニキッチン、搾乳・化粧室などがあります。
ルームの利用料は無料。利用時間は午前9時~午後9時ですが、ミニキッチンと搾乳・化粧室は24時間使うことができます。付き添いの大人のみが過ごせる空間です。
入院する子どもに付き添う保護者が、特に頭を抱えるのは食事です。
親のための食事は用意されないため、同病院が事前に行ったアンケートでは、「毎日コンビニ食は非常につらい」「給湯室の電子レンジを増やしてほしい」という意見が寄せられました。
家族の切実な声を受け、ルーム内には電子レンジ2台、トースター1台が設置されています。ミニキッチンにはフライパンなども置かれ、簡単な調理もできるそうです。
コーヒーや紅茶、フリーズドライのスープ、パン、くだものなど、軽食カウンターや冷蔵庫・冷凍庫に並ぶ食品は協力企業などから寄付されたもので、自由に食べることができます。
食品の補充や清掃などは、50人のボランティアが交代で担当するそうです。
同病院には常時、付き添う保護者が十数人いるといいますが、大部屋のカーテンで仕切られたなかで生活するため、交流があるわけではありません。
アンケートでは「同じ境遇のご家族と話したい」という要望もあり、ファミリールームはコミュニティ機能を担う場としても期待が寄せられます。
一方で、「泣いたり、気持ちを落ち着かせたりする場所がほしい」「子どもの前では絶対に泣いているところを見せたくない」という意見も多くありました。
「1人の時間がほしい」という保護者は、カーテンで仕切られた半個室や、鍵がかけられる搾乳・化粧室を使うこともできます。
ファミリールームは、同病院と、入院した子どもに付き添う家族をサポートしてきた公益財団法人ドナルド・マクドナルド・ハウス・チャリティーズ・ジャパン(DMHC)が共同で設置しました。
DMHCによると、「ドナルド・マクドナルド・ファミリールーム」は世界260カ所以上で開設されていますが、日本では初めての開設です。
DMHC常任理事の河野辺孝則さんは、「病院でお子様のそばにいながら、医療スペースからひととき離れて、また違った環境の中でリフレッシュして、お子様と向き合える環境を整えていただける空間になるのではないかと思います」と話しています。
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