ネットの話題
いじめられた経験を事実で上書きできたかも 話題の新刊作者に聞いた
書籍に込めた思いを作者に聞きました
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書籍に込めた思いを作者に聞きました
6月にSNS上で話題になった漫画「あした死のうと思ってたのに」。この作品を収録した本が今月上旬に発売されました。書籍に込めた思いを作者に聞きました。
「あした死のうと思って……」とつぶやく少年。
隣で聞いていた友人が「そっか そっか」と言いながら、ラーメン店に誘います。
食べ終わった後に「つけ麺もうめーから 来週食べにこねえ?」と約束する友人。
河川敷で一緒にキャッチボールをしたり、レコードショップへCDを買いに行ったり。
死の気配はだんだんと薄れていきますが、気持ちのすれ違いが起こります。
そして、お互いのつらい過去が明らかになって不穏な展開になるものの、最後は音楽が2人をつないでくれて――。
「あした死のうと思ってたのに」はそんな作品です。
今年4月から、描き上がった分をその都度X(旧ツイッター)で発表して約1カ月半で完結。
その後、小分けに発表したものをまとめて投稿したところ、14万を超える「いいね」が寄せられました。
あした死のうと思ってたのに (1/7) pic.twitter.com/ZlsZzw8HUo
— 吉本ユータヌキ@12/02 書籍『あした死のうと思ってたのに』発売します (@horahareta13) June 13, 2023
扶桑社から今月発売された書籍のタイトルも「あした死のうと思ってたのに」。
表題作を含む全7作品を集めた短編集で、発売前に重版が決まるほど予約注文が寄せられました。
「中学時代、いじめを受けて人付き合いがこわくなったことや、両親の離婚が重なった時期に、楽しみも希望も夢もなく、死ぬしかないと思っていました」
そう話すのは、作者の吉本ユータヌキさん(37)。
登場人物たちに自身の経験や思いを反映させながら描いたのが「あした死のうと思ってたのに」だといいます。
Xで発表していた当初は「どんどん新たな来週の約束をして今週も生きる」という繰り返しの展開を想定。
ところが、描いていくうちに自身の過去を思い出してしまい、「こんな友達いたらよかったなのにな」という希望を反映させていったそうです。
音楽に救われるという展開も、自身が先輩からパンクロックをおすすめされたことで専門学校に進み、バンドを結成して26歳まで活動した経験に基づいています。
あとがきに「過去をどう思うかは今からでも変えられるかもしれない」と書いた吉本さん。
いじめによって傷ついた事実は変わらないけれど、「その傷があったからこの作品を描けた」という新しい事実を作ることができたと感じているそうです。
本の帯には「クリープハイプ」でボーカルとギターを担当している尾崎世界観さんのこんなコメントが載っています。
「世界をひっくり返すとかじゃなくて、ちょうど一人分くらいの隙間をあけてくれる。この本が自分だけの居場所になる」
発売直後から寄せられているレビューや、SNSでの反応を読みながらこう感じているといいます。
「ご自身の過去を振り返りながら読んでくださる方が多く、この本で理想としていたものが叶っていて、すごく嬉しいです」
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