連載
#7 宇宙天文トリビア
「まるで銀河鉄道」夜空を進む光の点 「きれい」で片付けられない訳
まるで「銀河鉄道999」のシーンのように、夜空を一列になって進む光の点々――。実はこれ、米宇宙ベンチャー「スペースX」が打ち上げた人工衛星で、肉眼でも見ることができます。SNSで投稿されるたび「きれい」と話題になりますが、それだけじゃない困った問題も起きています。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
11月22日午後6時前、朝日新聞宇宙部が福島県矢祭町に設置している星空ライブカメラに、まるで銀河鉄道のような光の点が連なって移動する様子が写りました。
実はこれ、20日に打ち上げられたスペースXの衛星「スターリンク」が22機、連なって飛んでいる様子です。
この日は、西の地平線からスターリンク衛星がのぼっていく様子が見え始め、約2分後にはカメラの画面の外へ消えていきました。わし座の1等星「アルタイル」と同じくらいの明るさだったということです。
この日は全国的によく晴れていて、目撃した人も多かったようです。SNS上では「初めて見た」「UFOかと思った」「めっちゃ感動した」「夜空にたくさんの光の点が連なって移動する様子は銀河鉄道そのもの」といった投稿が相次ぎました。
スターリンク衛星とは、X(旧ツイッター)のイーロン・マスクCEOが率いるスペースXが運用するインターネットサービス用の衛星です。
衛星が太陽光を反射して光りながら、一列に並んで飛ぶ様子が見られることから「スターリンクトレイン」とも呼ばれています。
これまでに5千機を越える通信衛星が打ち上げられ、離島や山間部でもインターネット利用が可能になりつつあります。最終的には4万機まで増やすそうです。
スマホがつながりやすくなるなど、衛星によるサービスは私たちの生活において歓迎されている一方、多すぎる衛星の明るさが問題にもなっています。
最近も米国の通信衛星が、「1等星」と同じ明るさで夜空を飛んでいるとして話題になりました。肉眼でもはっきり見えたそうです。運営する企業は今後、同じ衛星を150機以上打ち上げる計画です。
天文学者は、その明るさに危機感を募らせています。
衛星の光が望遠鏡の観測中に入り込むと線となって画像に写ったり、衛星からの電波で観測が影響を受けたりする恐れがあります。
国立天文台の平松正顕さんは「天文台によっては、撮影する画像の数枚〜10枚に1枚ほどの割合で人工衛星が写り込んでしまっています」と指摘します。
衛星を画像処理で消したり、画像を破棄したりして対処しているそうですが、場合によっては追加の観測が必要になるなど観測効率の低下が懸念されています。
反射を抑える日よけを衛星につけるなど対策を取った例もありますが十分ではなく、対策が追いついていないのが現状です。人工衛星側への規制やルールもほとんどありません。
平松さんは「衛星によってもたらされる恩恵も理解しています。衛星事業者とも協力し、天文学との共存の方法を探っているところです」と話しています。
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