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#11 イーハトーブの空を見上げて

なぜお箸で? 10段巻きソフトクリームの謎 署名で復活した大食堂

箸でソフトクリームを食べる子どもたち
箸でソフトクリームを食べる子どもたち
「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。
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イーハトーブの空を見上げて

レトロなメニューケース、その先にそびえ立つ…

岩手の短い夏を味わいたくて、花巻市にソフトクリームを食べに行く。

花巻ではソフトクリームは箸で食べるものらしい。

午前11時。花巻駅前の「マルカンビル大食堂」に足を運ぶと、レトロなメニューケースの前に多くの家族連れが群がっていた。

人気の10段巻きのソフトクリームは、高さ約25センチ。値段260円(取材当時は230円)。

「ソフトクリーム、4つ!」「ソフト6個!」

キッチンには慌ただしく注文が飛び交い、レトロな制服を着たホールスタッフたちが、トレーにいくつもソフトクリームを載せて、フロアを駆け回っている。

平日には約300個、休日には約800個も売れるらしい。

テーブルに並べられた瞬間、大人も子どももうれしそうに割り箸を割り、ソフトクリームのてっぺんをつまんで口へと運ぶ。

「うーん、おいし~い!」

ソフトは箸で食べるもの

なぜ箸を使うのか? 正しい答えは誰も知らない。

「地元では小さいころから、ソフトは箸で食べるものでした」

家族で来ていた花巻市の佐々木奈津美さんは笑う。

佐々木さんにとって、マルカンのソフトクリームはいつもとっておきのご褒美だった。

地域の行事や部活のあとに家族や友人と誘いあって食べた。

だから2016年6月、マルカン百貨店が閉店し、「大食堂」も姿を消したときには、家族や友人との大切な思い出までが消えてしまったような気がして、悲しかった。

復活した大食堂、変わらぬ笑顔

ところが2017年2月、「大食堂」は地元高校生らの署名活動などを受けて復活する。佐々木さんもうれしくてすぐ食べに来た。

昭和のころは、どこにでもあったデパートの大食堂。

佐々木さんの隣で、7歳の娘の優花さんが、口の周りにいっぱいソフトクリームをつけながらうれしそうに叫ぶ。

「箸で食べると、やっぱりおいしい!」

時代がどんなに変わっても、ソフトクリームを口にしたときの子どもたちの笑顔は変わらない。

(2022年8月取材)

三浦英之:2000年に朝日新聞に入社後、宮城・南三陸駐在や福島・南相馬支局員として東日本大震災の取材を続ける。
書籍『五色の虹 満州建国大学卒業生たちの戦後』で開高健ノンフィクション賞、『牙 アフリカゾウの「密猟組織」を追って』で小学館ノンフィクション大賞、『太陽の子 日本がアフリカに置き去りにした秘密』で山本美香記念国際ジャーナリスト賞と新潮ドキュメント賞を受賞。
withnewsの連載「帰れない村(https://withnews.jp/articles/series/90/1)」 では2021 LINEジャーナリズム賞を受賞した
 

「イーハトヴは一つの地名である」「ドリームランドとしての日本岩手県である」。詩人・宮沢賢治が愛し、独自の信仰や北方文化、民俗芸能が根強く残る岩手の日常を、朝日新聞の三浦英之記者が描きます。

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