連載
#5 宇宙天文トリビア
宇宙で落とし物!? 飛行士が工具袋を「うっかり紛失」 観測も可能
実は2008年にも同じことがありました
国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士が、11月上旬、宇宙空間での活動中に工具の入った袋を「うっかり紛失」してしまったという事件が起きました。現在、宇宙空間を漂っている工具袋はどうなってしまうのでしょうか。危険はないのでしょうか。調べてみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
NASAによると、国際宇宙ステーション(ISS)に滞在中の宇宙飛行士が11月上旬、ISS船外での作業中に、持っていた工具が入った袋を「うっかり紛失してしまった」ということです。
作業をしていたのはNASAの宇宙飛行士のジャスミン・モグベリさんとロラル・オハラさんの2人で、太陽電池の部品交換やケーブルの調整などをしていました。
作業を中継していたNASATVでは、飛行士が、袋のようなものが離れていかないように留め具で固定している様子が見られました。
理由は明らかにされていませんが、袋の留め具が外れてしまった可能性もありそうです。その後、船外のカメラで宇宙を漂う工具袋が確認されました。
工具袋がなくなったのは高度約400km。NASAは工具袋の軌道を分析し、ISSに衝突する可能性は低く、措置は必要ないと判断したそうです。
この工具袋は今は宇宙ごみとして漂っていますが、徐々に高度を下げ、最終的には大気圏に突入して燃え尽きます。
このような宇宙での落とし物は今回が初めてではありません。実は2008年にも同じようなことがありました。
NASAのスペースシャトル・エンデバーの宇宙飛行士が2008年、船外での作業中に同じように工具が入ったかばんをなくしています。
当時は、飛行士が太陽電池パネルを回転させる部品に潤滑油を塗る作業をしていたところ、かばんがふわふわと飛んで行ったということです。
当時、AP通信によると、中には特殊な工具が入っており総額10万ドル(当時で約950万円)の価値があったといいます。
かばんはその後、地上から相次いで目撃されました。太陽光を反射し、肉眼でなんとか見える6等星に近い明るさがあったため、海外のアマチュア天文ファンが双眼鏡などで見つけてネット上で報告していたといいます。
今回の落とし物も同じくらいの明るさで見える可能性があり、SNS上では「双眼鏡で追いました」「ISSの前を飛ぶ工具箱を見つけた」「狙ったけど無理だった」など、すでに観測を試みる天文ファンも出てきています。
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