MENU CLOSE

エンタメ

〝衝動〟や〝感情〟中学生が映画に ある巨匠作品、彷彿させるカット

「理屈じゃない何か」

「TIFFティーンズ映画教室」の撮影風景©2023 TIFF
「TIFFティーンズ映画教室」の撮影風景©2023 TIFF

目次

中学生たちがプロの映画人と一緒に短編映画を撮影するとーー。彼らに向き合う「本気の大人」として特別講師を務めたのは「宮本から君へ」「ディストラクション・ベイビーズ」で注目された真利子哲也監督。お題は「衝動」。どんな作品が生まれたのでしょうか。

【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格

民主的に決める役割分担「とことん考える」

夏休み、都内に13~15歳の中学生18人が集まりました。6人ずつに分かれた3チームが、8日間でそれぞれ10分の映画をつくる。東京国際映画祭と「こども映画教室」が共同で企画した、映画制作ワークショップ「TIFFティーンズ映画教室」です。

現場で活躍するプロの映画人たちがサポーターとして見守りますが、物語を考えるのも演じるのも撮影するのも中学生たち。
監督、撮影、録音、脚本……誰が何を担当するか、あえて役割分担はしません。「じゃあこれやるわ!」と、その場その場で自然と決まっていきます。

「時間はかかるが民主的に決めていく。安心できる場で否定されることなく、とことん考える。時間に追われることが多い日常の中で、貴重な機会になるはず」と、こども映画教室代表の土肥悦子さんは話します。

「TIFFティーンズ映画教室」の撮影風景©2023 TIFF
「TIFFティーンズ映画教室」の撮影風景©2023 TIFF

「エゴ」を上回る何かが生まれる瞬間

「カメラ回った!」「よーい、スタート!」

細かな動きやカメラの角度を確認しながら、カットを重ねていく。

「映画は色々な人がいるからこそつくることができる。自分のエゴもとても大事。だけど、他の人がいることで、それを上回る、より面白い何かが生まれる。そう思える瞬間がある。あるときからチームが一つになり、ドライブがかかっていく」。土肥さんはそれを「映画の魔法」と呼びます。

7回目となる今年、講師を務めた真利子哲也監督は「衝動」をテーマに選びました。仲間たちと一緒に映画を撮りたいという思いに突き動かされた大学時代を振り返り、「うまくつくろうとしがちだけど、思うままに撮る自由さが一番強い」「難しいことを考えず、やりたいことをやってみよう、と伝えたかった」と語ります。

「かえして」「もう悲しみをはなさないで」「あの夏、孤独と共に」と題した3作品のポスター
「かえして」「もう悲しみをはなさないで」「あの夏、孤独と共に」と題した3作品のポスター

「衝動」って何だろう?「感情」って何だろう?「欲望」との違いは? 衝動に駆られた人とは? それぞれ悩み、話し合いながらカメラに向かいました。
「やりたいシーンを撮って、そこから物語を作っていく。時間はかかるけれど良い映画になる」と真利子監督。「大人も学ぶところが多い」とも語ります。

紆余曲折を経て完成したのは、「あの夏、孤独と共に」「もう悲しみをはなさないで」「かえして」と題した三つの作品。少女の葛藤と和解、日常と非日常が入り交じった実験的な映像、躍動感あふれる動きなど、それぞれに言葉では表現しきれない等身大の「衝動」が刻まれていました。

真理子監督は「理屈じゃない何か、が見つかった」。中学生たちは「映像で表すのが難しかった」「色んなことを考えてたけどきれいに別の作品になって、それがまた面白かった」「衝動は、誰にも邪魔できない、みたいなもの」とおのおのの感想を口にしました。

「日本の映画界でなかなか撮れないものが撮れた」

完成した作品を鑑賞した東京国際の市山尚三プログラミング・ディレクターは「良くできているけどどこかで見たような作品が多いなか、この3本はどこでも見たことがない作品」と評しました。特に即興で撮ったという公園で走り回る縦横無尽な4分半のワンカットについて、かつて共に仕事をした台湾の巨匠ホウ・シャオシェン監督の作品を彷彿させるとして「日本の映画業界ではなかなか撮れないが、この年齢だからできたのかもしれない。こういうことができた、と忘れないで」と語りかけました。

3作品は第36回東京国際映画祭で10月29日に上映されます。

「TIFFティーンズ映画教室」の参加者たち©2023 TIFF
「TIFFティーンズ映画教室」の参加者たち©2023 TIFF

関連記事

PICKUP PR

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます