連載
#5 プラネタリウム100年
「全ての人に星空を」11万人に届けた 病院への出張プラネタリウム
「すべての人に星空をーー」。この思いから、本物の星空を見ることができない人たちへ、移動式のプラネタリウムで星空を届ける活動をしている団体があります。どのような取り組みなのでしょうか。聞いてみました。(朝日新聞デジタル企画報道部・小川詩織)
病気や障害で外出できない子どもたちに星空を見せようと、病院や支援学校への出張プラネタリウムを続けているのは、一般社団法人「星つむぎの村」(山梨県北杜市)。
共同代表の高橋真理子さんと跡部浩一さんのほか、多くのボランティアメンバーがこの活動を支えています。
高橋さんは以前、山梨県立科学館でプラネタリウム番組などを手がけていました。科学館時代に山梨大付属病院の小児科の医師らと知り合ったことをきっかけに、病院への出張プラネタリウムを思いついたといいます。
出張プラネタリウムは、空気を送り込むことで自立するテントのようなドームの中で、プロジェクターで星空の映像を映し出し、高橋さんらスタッフが星空解説をします。
ほかにも、プロジェクターを施設や病院へ送って、各施設の天井などに投影してもらう「フライングプラネタリウム」という方法もあるといいます。
コロナ禍で出張ができない時期は、このフライングプラネタリウムが大活躍しました。
「私たち一人一人は星のように輝く存在。みんな違って、みんな一緒。ごろっと寝転べば、境界線もなくなります」。
10月初旬、東京都江戸川区で開かれた出張プラネタリウムでは、高橋さんの解説がドームの中に響いていました。
この日は、幼くして老化が進む難病「コケイン症候群」の患者へ向けての投影会でした。
視野が少しずつ失われているという娘を連れてきた福岡県宗像市の北野千鶴さんは「娘の目が見えるうちに星空を見せてあげたかった。頭上に広がる星空はみんな同じ。きょうは病気という境界を忘れられました」と話していました。
2014年から続くこの活動では、これまでに約1千カ所、約11万人に星空を届けています。
高橋さんは「『すべての人に星空を』という思いで続けてきた活動。本物の星空を見られない人たちにこそ、プラネタリウムの意味があるんです」と話しています。
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