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サライ、いい日旅立ち、昴…歌い継がれる谷村新司さんカラオケ1位は

谷村新司さん=2019年11月
谷村新司さん=2019年11月 出典: 朝日新聞

目次

シンガー・ソングライターの谷村新司さん(74)が8日に亡くなりました。数々の名曲は世代を超えて歌い継がれています。カラオケ店「ビッグエコー」などを展開する第一興商に、過去1年間で歌われた谷村さんの曲トップ10を聞きました。谷村さんが歌に込めた思いやエピソードとともに紹介します。

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「DAM」で1年間に歌われた上位10曲

「チンペイ」の愛称で親しまれた谷村さんは1948年、大阪府生まれ。高校時代に結成したフォークグループ「ロック・キャンディーズ」が人気を集め、別のバンドにいた堀内孝雄さん(ベーヤン)を誘って71年に「アリス」を結成し、翌72年「走っておいで恋人よ」でデビューします。ドラムの矢沢透さん(キンちゃん)も加わり3人で活動しました。

ランキングは、第一興商の通信カラオケ「DAM」のデータから、谷村さんの曲と「アリス」の曲に加え、谷村さんが作詞または作曲した曲を対象に、2022年10月から23年9月までの1年間に歌われた上位10曲を調べました。

「ヒット曲を作ろうと意識」「愛がない歌なんか、やる意義がない」

まずは10位から5位です(曲名後の括弧内は歌手、発売年)。

10位「冬の稲妻」(アリス、1977年)
9位「いい日旅立ち」(谷村新司、1986年)
8位「忘れていいの」(小川知子・谷村新司、1984年)
7位「秋止符」(アリス、1979年)
6位「群青」(谷村新司、1981年)

10位の「冬の稲妻」は、谷村さんが作詞、堀内さんが作曲をしました。曲作りの裏側について谷村さんはこう語っていました。

「完全にヒット曲を作ろうと意識して詩を書きました。シンプルな詩で、堀内(孝雄さん)もシンプルに曲を作ったのが見事にはまった。アリスってギターの初心者でも弾けて、しかも『せーの』でやると格好いい、というのを一つのテーマにして歌を作ってたので、出来上がった時はどんぴしゃだなって、みんなで手応えを感じてました」
朝日新聞(2014年5月)

6位に入った「群青」は、親より先に逝った子への鎮魂歌です。そこには「愛」が込められていました。

「家族愛、兄弟愛、友人への愛…。愛がない歌なんか、やる意義はない。『群青』は、あなたを眠らせるという愛の形であり、一番大きく、そして深いプロテストソングでしょ」
朝日新聞(2000年1月)

「その瞬間に浮かんできたものを書く」「幸せな歌だと思います」

次に5位から1位です。

5位「チャンピオン」(アリス、1978年)

作詞作曲を手掛けた「チャンピオン」は、一夜にして書き上げたといいます。

「作家の沢木耕太郎さんと雑誌の企画で対談した後、誘われて下北沢の金子ジムへカシアス内藤のスパーリングを見に行ったんです。その夜のうちに感じたことを書いたのが『チャンピオン』でした。詞の世界に決めごとはなくて、その瞬間に浮かんできたものを書くようにしているんです。書こうと決めるとスイッチが入る」
朝日新聞(2020年1月)
4位「遠くで汽笛を聞きながら」(アリス、1976年)

「遠くで汽笛を聞きながら」を作詞していた頃は「年間300回ステージぐらい」やっていたという多忙なときでした。

「感じたことを、そのまま素直に言葉にしているような歌です。『俺はこの街で生きていこうと決める』という詩の内容に共感してくれた人が多いのは、地方からの目線の歌だったからだと思うんです。大都会に出て行こうと思いながら、両親のことや色んなことがあって断念したという人は、当時、ものすごい数いらっしゃったと思うんです。GLAYのTAKURO君は、『この歌を(地元の)函館で聞いてました』って言ってましたね」
朝日新聞(2014年5月)
3位「昴―すばる―」(谷村新司、1980年)

「チャンピオン」の2年後にソロで発表した「昴」は国境を越え、アジアの人々にも広く歌われます。

「歌が独り歩きした。昴がアジアへの扉を開いた」
朝日新聞(2015年4月)

谷村さんはアジア諸国を公演で巡りました。特に日中の文化交流に大きく貢献します。日中国交正常化10周年を祝うコンサートを始め、中国で何度もその歌声を響かせました。

2位「サライ」(加山雄三・谷村新司、1992年)

「サライ」は「24時間テレビ」(日本テレビ系)のテーマ曲として、加山雄三さんとともに作った曲です。放送中に視聴者から送られてくる詞をまとめ、曲を作る企画でした。加山さんは、谷村さんと取り組んだ曲作りを後にこう振り返っています。

「24時間の番組内で曲を完成させて、最後にはみんなで合唱できるよう覚えてもらわないといけないってことで、もう大変だったな。曲は自然にすっと出てきたと思う。あの曲は、いいメロディーだな、と自分で思える。大したもんだと思うよ。(サビの)転調は意識したわけじゃなくて、感覚的にそうなったんだ。(ペルシャ語で)『宿』『住まい』という意味のタイトルも、歌詞も谷村さんが付けてくれた。あれから番組で長いこと歌ってくれてるよな。大変だったけど、作って良かったな」
朝日新聞(2023年8月)
1位「いい日旅立ち」(山口百恵、1978年)

1位は、谷村さんが作詞作曲し、山口百恵さんに提供した「いい日旅立ち」でした。当時の国鉄のキャンペーンソングとして、レコード会社から作詞作曲の依頼を受けたものでした。卒業式ソングとしても知られ、学校などでも広く歌われました。

2014年3月の朝日新聞の記事では、山口さんとのこんなやりとりを明かしていました。

「できてすぐ、百恵さんに電話したんですよね。僕は職業作家じゃないので、歌い手にまず聞いてもらって、喜んで歌いたいと思ってほしい。彼女に『今そこで歌って下さい』と言われて、電話口でギター1本で歌ったんです。そしたら、『すごくいいと思います』と言ってくれたんですよ。あーよかった、これで絶対よくなるだろうと思いました」
朝日新聞(2014年3月)

続けて、歌詞に込めた思いやその歌われ方についてこう話していました。

「30歳のころに作った歌なんですが、僕の場合はわりと20代の頃から、40代50代の人が書くような詞を書いてました。体をこわしたこともあって、命って永遠じゃないってことも歌の中にちゃんと書こうと思ってました。結婚式などで前向きな歌として歌われている? そう思う人がいるってことはそういう歌でもあるんです。だから僕は絶対、『いいや、そうじゃない』とは言わないんですよね。歌ってそういうものですから。人それぞれに『いい日旅立ち』のイメージがあるというのは、幸せな歌だと思います。今も新幹線や駅の到着メロディーで使われているのは、うれしいですよねぇ。歌が自立して生きている。作品というのは、その時代や人が育ててくれるものなんです」
朝日新聞(2014年3月)

上位10曲はいずれも30年以上前に発売された曲ですが、今でもすぐに口ずさめる曲ばかりです。谷村さんの曲が長く愛され、歌い続けられてきたことが伝わってきます。

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