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BLマンガ、Z世代女性の人気トップに躍進 支持される理由と変化

購入された電子書籍の3割占める存在に

大手の電子書籍ストア「ブックライブ」では「25歳以下女性」ユーザーが購入したマンガでBLジャンルがトップになった
大手の電子書籍ストア「ブックライブ」では「25歳以下女性」ユーザーが購入したマンガでBLジャンルがトップになった

目次

かつて「やおい」「腐女子」などの言葉とセットで語られてきた男性同士の恋愛「BL(ボーイズラブ)」マンガに変化が起きています。大手の電子書籍ストア「ブックライブ」において、Z世代を含む若い女性の人気ジャンル1位にBLが躍り出たというのです。地上波のドラマでは、自然に同性愛の関係が描かれる作品も少なくありません。BLマンガの今を探りました。

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同性の恋愛を特別視しない

「ブックライブ」が2023年4月にZ世代を含む「25歳以下女性」のユーザーが購入した作品のTOP200を調べたところ、BLマンガが占める割合が34.5%になりました。

2019年には「25歳以下女性」のユーザーが購入したBLマンガの割合は9.9%だったことから5年で3.8倍に増えたことになります。

「25歳以下女性」のユーザーが購入したジャンルごとの順位においても、2022年から「女性マンガ」のジャンルを抜き「BLマンガ」が1位になりました。

BLマンガに何が起きているのか? 話を聞いたのは「ブックライブ」のサイト運営を担当する、書店員すず木さんです。電子書籍ストアに関わりながら、自身も年間2千冊のマンガを読むという強者です。

変化のきっかけとして、すず木さんが挙げるのが地上波のドラマです。

2018年のドラマ「おっさんずラブ」(テレビ朝日系)では、同性の上司と後輩から告白される主人公の恋愛模様を、それを特別視しないまわりの人たちの姿とともに描き大ヒットしました。

「それまでもBLは人気ジャンルの一つではありましたが、特定のファンに限定されていました。それが『おっさんずラブ』のような地上波のドラマによって、ストーリーを含めて楽しめる一つのジャンルとして認識されるようになったのです」


人気シリーズとなった『おっさんずラブ』

赤楚衛二さんが普通に出演

BLマンガの作品は、時代とともに変化をしてきました。

もともとは線が細く耽美的で現実にないような描写の絵柄が多かったのが、最近は、リアル志向に。実写化する際も、原作のイメージを踏襲した人気俳優があてられています。

『おっさんずラブ』やよしながふみさんの『きのう何食べた?』(テレビ東京系で2019年にドラマ化)。『チェリまほ』で知られる豊田悠さんのマンガ『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』(テレビ東京系で2020年にドラマ化)、さらには、2021年のMBSドラマ『美しい彼』のヒットなどにより、BLのジャンルは広く浸透していきました。

『チェリまほ』の実写化では、主人公の安達清を仮面ライダーシリーズで人気の赤楚衛二さんがつとめ、安達に思いを寄せている黒沢優一を劇団EXILEの町田啓太さんが演じました。

主従から対等の人間関係に

BLマンガの変化は絵柄だけではありません。特に、男性同士の関係の変化からは、Z世代の新しい価値観が浮かび上がります。

すず木さんは「主従から対等の関係になったのが一番大きいです」と説明します。

「1990年代のBLマンガは、無理やり関係を持つようなシーンも少なくありませんでした。2000年代に入っても社会的な強者が弱者の相手を守ってあげるという設定は残っていました。最近多いのは対等な関係性です。どちらかがリードするわけではなく、それぞれの存在を尊重しながらストーリーが進んでいくようになりました」

さらに最近のBLマンガには恋愛シーンにおいても「相手の嫌がることはしない」という特徴があると言います。

「溺愛と呼ばれるジャンルの人気が高まっていて、双方が思い合うシーンが重視されます。お互いを大切にする作品が増えているのです」

Z世代の特徴である多様性の表れとも言えるこの変化。それは女性キャラクターの描かれ方からも見て取れます。

「そもそもBLマンガに女性キャラクターはあまり出てきませんでした。それが最近では、普通に登場するようになった。〝特別な物語〟ではなく日常の延長にあるような描き方と言えます」


ドラマも人気の『30歳まで童貞だと魔法使いになれるらしい』

現実とのギャップあらわに

マンガ作品全般の最新の傾向として、すず木さんが注目するのがジェンダーレスです。

「主人公がバイセクシュアルだったとしても、周囲は『そういう人もいるよね』という感じで普通に受け止めている。加えて最近のマンガの傾向として、ジェンダーレスなキャラクターが登場する作品が増えています。例えば、メイクアップアーティストを目指す男子高校生が登場したり、従来男性の趣味のイメージが強かったオンラインゲームにはまっている女子がいたり。それらをちゃかすのではなく、当たり前の風景として描かれています」

価値観が多様化する中、BLマンガも変化し、その結果、Z世代に浸透してきたといえます。一方で、現実の日本社会では、政治家や政府高官による性的マイノリティーに対する差別的な発言が絶えず、同性婚も認められていません。

BLマンガが次の時代を担うZ世代女性から人気というデータは、旧来の価値観に縛られ足踏みする現状へのアンチテーゼとも受け取れそうです。

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