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激しく運動した翌日、逆に体重が増えるのはなぜ?炎症とむくみの関係

激しく運動した翌日、逆に体重が増えることがあるが……。※画像はイメージ
激しく運動した翌日、逆に体重が増えることがあるが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

コロナ禍を経て運動意識が高まる今、ダイエットしようと「激しく運動した翌日にむしろ体重が増えている」という経験をしたことがある人も多いのでは。体重を減らそうとして運動したのに、体重が増えてしまうのはなぜなのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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急に体重が増減する原因は水分

健康診断で体重の増えすぎを指摘され、ダイエットになればと始めた運動。しかし、頑張りすぎた翌日、かえって体重が増えてしまっていた――。そんな経験をしたことはありませんか。

せっかく努力しても、意味がなかったように感じてしまいそうですが、結論から言うと、これは一時的な体の反応で、一喜一憂しなくていいものです。

人間の体は「水分」「たんぱく質」「脂質」「ミネラル」の4つの主要成分で構成されています。このうち、短期間に変動しやすいのが水分です。

2022年11月、国立医薬基盤・健康・栄養研究所や早稲田大学などの国際共同研究チームが、人間の体から1日に排出される水分量を推定する数式を発表(※)しました。

※Variation in human water turnover associated with environmental and lifestyle factors - Science. 2022 Nov 25;378(6622):909-915. doi: 10.1126/science.abm8668. Epub 2022 Nov 24.

23カ国にわたり生後8日から96歳までの男女5604人を対象に調査した結果、平均的な成人で1日に体の水分量の10%、乳児で25%が排出されることがわかりました。成人では体重の約60~65%が水分なので、例えば体重70kgであれば、そもそも体には約40kgの水分が含まれ、そのうち4kgの水分を汗や尿などで排出していることになります。

もちろんその分、水分は補給もしているわけですが、人間の体は1日で数kg分の変動の幅があることを知っておくのは、体重に一喜一憂しないためにも大事です。

1日や2日で大きく体重が減ったときは、それはダイエットに成功したのではなく(余分な脂肪が減ったのではなく)、水分が減ったと考えられるということです。
 

炎症はむくみを引き起こす

この水分が、逆に体の中に貯留してしまう状態が「浮腫」いわゆる「むくみ」です。

浮腫は“組織(血管内、リンパ管内、細胞内を除くスペース)に生理的な代償能力(元に戻る力)を超えて過剰な水分が貯留した状態”と定義され、その原因の一つが「炎症」です。激しい運動をした後には、体にこの「炎症」が起きていると考えられます。

炎症とは、体の傷ついた組織が反応して起きる「血管の拡張」や「血流の増加」、「血液成分の血管から組織への漏出」「白血球の炎症組織への侵入」「局所的に作られた物質による神経への刺激」などのこと。この結果、炎症が起きた部分が熱感を持ったり、腫れて痛みを感じたりするようになります。

この炎症が、いわゆる筋肉痛を引き起こすという説が、現在では有力になっています。ただし、筋肉痛のメカニズムは、医学的には未だにはっきりとは解明されていません。

今のところ、運動をしていつもは使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすることで、筋肉の繊維に細かな傷ができて、それを修復するときに炎症反応が起こり、痛みの物質が生成される=筋肉痛とされます。

筋肉痛になるような運動をすると、炎症が起きて血管が拡張し、血流が増加し、血管から水分が染み出しやすくなり、組織に水分が貯留し、体重が増えます。

前述したように、体内の水分量は体重を数kg変動させるインパクトがあります。実際に、浮腫で数kg体重が増加する例はよくあるものです。

浮腫はさまざまな病気やケガによっても発生します。筋肉痛ではそこまで大きな体重の変動は認められにくいものの、例えば激しい運動の翌日に1kg前後、体重が増えているといった場合は、「せっかく運動したのに体重が増えた」とショックを受けるのではなく、一時的に水分が貯留しているとみるのが妥当だと言えるでしょう。
 
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