twitter facebook hatebu line LINE! IT・科学 2023/10/16 みんなの感想 激しく運動した翌日、逆に体重が増えるのはなぜ?炎症とむくみの関係 激しく運動した翌日、逆に体重が増えることがあるが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images 朽木誠一郎 朝日新聞デジタル企画報道部記者 健康 目次 急に体重が増減する原因は水分 炎症はむくみを引き起こす コロナ禍を経て運動意識が高まる今、ダイエットしようと「激しく運動した翌日にむしろ体重が増えている」という経験をしたことがある人も多いのでは。体重を減らそうとして運動したのに、体重が増えてしまうのはなぜなのでしょうか。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎) 【PR】手話ってすごい!小学生のころの原体験から大学生で手話通訳士に合格 急に体重が増減する原因は水分 健康診断で体重の増えすぎを指摘され、ダイエットになればと始めた運動。しかし、頑張りすぎた翌日、かえって体重が増えてしまっていた――。そんな経験をしたことはありませんか。 せっかく努力しても、意味がなかったように感じてしまいそうですが、結論から言うと、これは一時的な体の反応で、一喜一憂しなくていいものです。 人間の体は「水分」「たんぱく質」「脂質」「ミネラル」の4つの主要成分で構成されています。このうち、短期間に変動しやすいのが水分です。 2022年11月、国立医薬基盤・健康・栄養研究所や早稲田大学などの国際共同研究チームが、人間の体から1日に排出される水分量を推定する数式を発表(※)しました。 ※Variation in human water turnover associated with environmental and lifestyle factors - Science. 2022 Nov 25;378(6622):909-915. doi: 10.1126/science.abm8668. Epub 2022 Nov 24. 23カ国にわたり生後8日から96歳までの男女5604人を対象に調査した結果、平均的な成人で1日に体の水分量の10%、乳児で25%が排出されることがわかりました。成人では体重の約60~65%が水分なので、例えば体重70kgであれば、そもそも体には約40kgの水分が含まれ、そのうち4kgの水分を汗や尿などで排出していることになります。 もちろんその分、水分は補給もしているわけですが、人間の体は1日で数kg分の変動の幅があることを知っておくのは、体重に一喜一憂しないためにも大事です。 1日や2日で大きく体重が減ったときは、それはダイエットに成功したのではなく(余分な脂肪が減ったのではなく)、水分が減ったと考えられるということです。 炎症はむくみを引き起こす この水分が、逆に体の中に貯留してしまう状態が「浮腫」いわゆる「むくみ」です。 浮腫は“組織(血管内、リンパ管内、細胞内を除くスペース)に生理的な代償能力(元に戻る力)を超えて過剰な水分が貯留した状態”と定義され、その原因の一つが「炎症」です。激しい運動をした後には、体にこの「炎症」が起きていると考えられます。 炎症とは、体の傷ついた組織が反応して起きる「血管の拡張」や「血流の増加」、「血液成分の血管から組織への漏出」「白血球の炎症組織への侵入」「局所的に作られた物質による神経への刺激」などのこと。この結果、炎症が起きた部分が熱感を持ったり、腫れて痛みを感じたりするようになります。 この炎症が、いわゆる筋肉痛を引き起こすという説が、現在では有力になっています。ただし、筋肉痛のメカニズムは、医学的には未だにはっきりとは解明されていません。 今のところ、運動をしていつもは使わない筋肉を使ったり、同じ動作を繰り返したりすることで、筋肉の繊維に細かな傷ができて、それを修復するときに炎症反応が起こり、痛みの物質が生成される=筋肉痛とされます。 筋肉痛になるような運動をすると、炎症が起きて血管が拡張し、血流が増加し、血管から水分が染み出しやすくなり、組織に水分が貯留し、体重が増えます。 前述したように、体内の水分量は体重を数kg変動させるインパクトがあります。実際に、浮腫で数kg体重が増加する例はよくあるものです。 浮腫はさまざまな病気やケガによっても発生します。筋肉痛ではそこまで大きな体重の変動は認められにくいものの、例えば激しい運動の翌日に1kg前後、体重が増えているといった場合は、「せっかく運動したのに体重が増えた」とショックを受けるのではなく、一時的に水分が貯留しているとみるのが妥当だと言えるでしょう。 今回のような「健康にいい」の落とし穴をまとめた書籍が発売中です。詳細はリンク先から▼ 健康診断で「運動してますか?」と言われたら最初に読む本 【連載】「健康にいい」の落とし穴 世の中で「健康にいい」と言われていることや、イメージされることは、よく考え直してみたり、正しい知識を持ったりすると、実は“そうでもない”ばかりか、かえって健康から遠のいてしまうことも――。身近なトピックをフカボリします。 BMIはそれぞれ「肥満」「標準体重オーバー」でもやせすぎ?普通? 1/6枚 withnews