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文字の輪郭が「ぷっくり」 読み書き苦手な子ども、印刷技術で支援

枠からはみ出しそうになると、軌道から外れたことに気付きます。

「できるびより」の凹凸書字ドリル。真上からは気付きませんが、水平にみると、輪郭が盛り上がっていることがわかります。
「できるびより」の凹凸書字ドリル。真上からは気付きませんが、水平にみると、輪郭が盛り上がっていることがわかります。

目次

上から見ると、なんの変哲もない文字ですが、触ってみると…輪郭がぷっくり。読み書きが苦手な子どもたちに向けた教材を開発している会社があります。自社の得意な技術を生かした取り組みを聞きました。

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線の輪郭を盛り上げる技術で、文字の認識手助け

東京都荒川区に本社を置く「オフィスサニー」は、文具の企画製造、販売などを手がける会社です。
オフィスサニーでは、子どもたちの発達支援教材を扱うブランド「できるびより」を展開しています。

その看板商品となっているのが「凹凸書字ドリル」です。ひらがなや、様々な形の線の輪郭を「バーコ印刷」という技術を使って盛り上がらせることで、鉛筆でなぞったときに枠からはみ出ると、そのことに気付きやすくなっています。

想定されている利用者の中には、書字障害のある人がいます。書字障害は、発達障害のひとつである学習障害(LD)にあたる症状。文字や文章を書くことが極端に苦手で、文字を構成するパーツの位置関係や大きさを把握したり、パーツを組み合わせてひとつの文字と捉えにくかったりするケースがあります。「凹凸書字ドリル」は、輪郭を浮きだたせることで、文字のかたちを触覚で認識する手助けをする効果が期待されます。

記者も渦巻き型のものに挑戦。枠からはみ出しそうになると、鉛筆の先が盛り上がり部分にひっかかり「軌道修正しないと」という気持ちになりました。

上から見ると、輪郭の盛り上がりはさほどわかりません
上から見ると、輪郭の盛り上がりはさほどわかりません

印刷技術、応用できないか…行政に相談

元々、オフィスサニーでは「バーコ印刷」の技術を使って、紙を皮革素材のように見せることを実現させ、「革のような紙のブックカバー」を販売するなどしていました。

この技術を他にも応用できないかと試行錯誤する中、子どもの「書く」という動作に着目。取締役の高橋晶子さんは「子どもを育てた経験から、ひらがなをなぞるときに苦労した子どもの姿なども覚えていた」と話します。凹凸をつけた印刷が可能な、バーコ印刷の技術をそこに生かせないかと考えました。

とはいえ、発達支援に関する知識が豊富ではなかったため、地元である荒川区に相談に行くと、産学官の連携をすすめられました。近隣の大学とつながり、そこから、子どもの発達支援に携わってきた作業療法士の鴨下賢一さんと出会います。

鴨下さんがすでに実践している読み書き支援のメソッドを、「バーコ印刷」の技術を使ってかたちにしたのが、8年前から販売している「凹凸書字ドリル」です。その後、鴨下さん監修のもと、「できるびより」の商品が展開していきました。

「できるびより」の商品の一部
「できるびより」の商品の一部

「はみ出すことは悪くない。『できた』の気持ちが…」

「凹凸書字ドリル」は、鉛筆を動かす練習のための線のなぞり書きから、ひらがな・数字をなぞれるものまで、5段階に分かれています。

ひらがなに関しては、縦線や横線に比べて鉛筆の動かし方が難しい「斜め」の書字動作が入る「はね」のないフォントを採用しています。「まず形が書けるようになることや、読める字を書くことを目指しています」と代表取締役の高橋淳一さん。

現在、「できるびより」の商品はオンラインショップや、各地で開催している「体験会」での販売をしており、放課後等デイサービスや児童発達支援センター、病院などからの注文があるといいます。

淳一さんは、「はみ出すのは悪いことではありません。ただ、はみ出す感覚を持つことで、はみ出さずに書けるようになり、『できた』という気持ちが芽生えます」と話しています。

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