連載
#28 親子でつくるミルクスタンド
全国で災害多発、行政サポートにも限界… 新たな防災と支援のかたち
全国各地で多発している災害。7月に豪雨被害に遭った秋田県で、災害ボランティアに参加すると、浸水被害に遭った飲食店エリアなどで「生業(なりわい)支援」まで手がまわっていない現状がありました。「防災アクションガイド」などをつくってきた筆者が、新たな防災対策や、被災地支援のかたちを考えます。(木村充慶)
石川県能登半島の地震や、中国四国地方から関東まで広範囲に被害が出た台風2号など、今年も全国各地で自然災害が多発しています。
地震、台風、大雪など、毎年のように災害が日常化しているように感じます。
今年7月には、豪雨の影響で秋田市や秋田県五城目町などで浸水被害が発生しました。
復旧が思うように進んでいないと聞き、災害から約1ヶ月後に現地を訪れました。
それぞれで災害ボランティアに入り、作業のお手伝いをしました。路地に入ると、依然として濡れた荷物などが乾かされていることもありました。
浸水被害の後は、まずは床・畳をはがして土砂などを撤去し、十分に乾燥させます。そのままにすると腐ってカビや細菌などが蔓延してしまいます。
床上浸水した場合は、ぬれた家財道具なども家から出し、すべて乾燥させる必要があります。
乾燥させたら、家の中をきれいに掃除して、住める状態に戻せたら床や家財などを戻していきます。
時間のかかる大変な作業で、災害ボランティアが手伝うことが多いです。
災害ボランティアは、社会福祉協議会を中心とした現地の「災害ボランティアセンター」が受付窓口となることがほとんどです。
センターのスタッフが被災状況を調査し、参加するボランティアを5名ほどのグループに分けて被災者のもとへ派遣、作業が行われる流れです。
私が訪れた秋田市のお宅では、床はすでにはがされており、周りの掃除や家財をしまう作業をしました。
秋田市は県庁所在地ということもあり、全国から個人や企業、そして大学生などたくさんのボランティアが集まっていました。
五城目町でもボランティアに参加しましたが、中心地から離れたローカルエリアのため県外の人はほとんどいませんでした。その分、被災していない地元の人が参加していて、助け合う地域のつながりを感じました。
同じような被害であっても、地域によって支援の広がりが違うことがわかりました。
個人の住宅には、災害ボランティアセンターを中心にサポートが入ることが多いですが、飲食店や工場といった企業の施設や、農家の田んぼや畑に支援が入ることはほとんどありません。
今回、秋田市では、飲食店が多く立ち並ぶエリアが甚大な被害に遭いましたが、主に従業員だけで復旧にあたったといいます。
災害支援では、個人などへの支援は「生活支援」、企業などへの支援は「生業(なりわい)支援」と分けて考えられます。
商業系・農水系と行政の所管も分かれているため、災害ボランティアが担うのは生活支援がほとんどだといいます。
しかし、ただでさえ行政の職員が減っている今、災害時には職員がまず緊急対応に回って生活支援をおこなうことが多く、生業支援が後回しにされがちです。
今回も、被災した飲食店の方々からは、「行政からの被災状況の調査はなかった」「支援の動きもほとんどなかった」と聞きました。
しかし飲食店や工場、農家では、大きな業務用機械などがあり、被害は個人宅以上に甚大になることもあります。
秋田市で飲食店を経営している男性は、店が床上浸水し「冷蔵庫といった厨房機器が被害に遭った。1カ所あたり数百万円以上の被害があったのでは」と推測します。
「ただでさえコロナで大変な状況の中、銀行や信金などから借りるだけ借りていた飲食店が多かったと思います。その最中に発生した災害で、もう融資を受けられなかったり、事業を続けるのを諦めたりするところも多いのではないかと心配しています」
別の飲食店経営者には、食品メーカーの工場では億単位の被害が出ていたと話す方もいました。
現在でも正確に被災状況が把握できていないそうですが、状況を重く見た県が、国などに支援策を働きかけているといいます。
災害後のサポートがうまく進んでいないと、行政への非難を口にしたくなりますが、FUKKO DESIGNという団体をつくり、復興や災害支援に取り組んできた筆者は、「行政の支援も限界」だと感じています。
日本中で災害が多発し、行政の人的・金銭的支援にも限りがあります。
そのようななか、「自助」と行政による支援「公助」と合わせて、周囲と助け合う「共助」が必要だと指摘されることが多くなりました。
しかし実際には「ご近所づきあい」も希薄化していて、「共助」にも難しさが伴います。
そこでSNSやITサービスを通じ、住んでいる地域に限定されない人びととつながって助け合うケースも出てきています。
たとえば、災害が起きた時、SNSなどを使って被災していない地域に金銭的支援や物資支援を募ったり、ボランティアを募集したり。こういった「つながる共助」の動きをもっと顕在化し、広げていくことが大切ではないかと思っています。
防災時の「助け合い」では、企業の力も大切です。
企業の防災というと、被災時に事業が続けられるよう計画を立てておく「事業継続計画(BCP)」が注目がいきますが、こちらは企業のサービスなどをいかした支援です。
たとえば、自動車メーカーのディーラーの社員が、自主的に店舗前にEVを出してケータイなどの充電ができるようにしたケースもありました。
IT企業のエンジニアが、安否情報をネットで調べられるサービスを作ったケースもありました。
ほかにも、2020年に熊本県の球磨川の氾濫で被災した「鶴之湯旅館」では、自動車メーカーがEVを貸し出すといったサポートをしました。
その後の復興のときにも、その自動車メーカーは旅館の建物に太陽光パネルなどを設置し、蓄電して今後の災害に備える仕組みの導入を引き続きサポートしていました。
さらに、数千万にものぼる再建の資金調達のため、全国でのコンサルティング経験を豊富に持つ、地元在住の中村哲さんが融資の交渉や補助金申請といったサポートもしていたそうです。
災害時に、被災していない自分は「働くひと」としてのサポートが何かできないか――。そんな目線で考えると、まだまだ出来ることがあるかもしれません。
このときの「支援」は、一方向のものではありません。支援したことを会社のPRに活用するといったこともできます。
企業としてもメリットがあるということを意識しながら支援することで、その支援も長続きさせられ、結果、多くの人たちにとってどちらもメリットがあるのではないでしょうか。
1/11枚