まず、宿便の量についてです。おなかの調子を整える食物繊維の必要量は「1日1回規則的に排便がある」ことが一つの目安で、この状態の人の排便量は1日に約150g(見た目ではMサイズの鶏卵で約3個分)とされます(※)。
※食物繊維の必要性と健康 - 厚生労働省
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/food/e-05-001.html
大便の量を測定することは難しいものの、一般的に、日本人の大便量の目安は150〜200gとされます。
このことからわかるのは、冒頭のように宿便が数kgあるというキャッチコピーは、1カ月分くらい便がたまった重度の便秘の状態を指すことになります。その時点で健康とは言えないので、これが健康な人にもあるというのはウソだと考えられます。
また、宿便という言葉は、キャッチコピーとしては、「腸の壁(のひだ)にヘドロのようにこびりついた便」というイメージと共に用いられることがよくあります。宣伝ではこうした宿便を落とすことで「やせる」「キレイになる」ような印象を持たせる場合もあります。
しかし、便が体の外に出て体重が軽くなるだけなので「やせる」わけではありませんし、そもそも定義が難しい「キレイ」になれるかどうかは断言できるものでもありません。もちろん、便秘が解消されるならいいことではあるのでしょうが、便秘の解消の基本は食物繊維の豊富な食事など生活習慣の改善です。
また、腸はぜんどう運動をしており、内容物を出口へと押し出しています。その細胞は常に置き換わり、古くなって脱落した腸の細胞は大便の主な構成物の一つです。つまり、健康な人にも「腸の壁(のひだ)にヘドロのようにこびりついた便」があるというのは、考えにくいのです。
便秘が長く続くようであれば、医療機関に相談を。そうでなければ食事や運動など生活習慣に注意を。宿便のキャッチコピーに騙され、効果の疑わしい健康食品に頼ることなく、本質的な解決をすることをおすすめします。