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ヤクルトファンはどこにいる?視聴履歴で見えるプロ野球ファンの分布
プロ野球はセ・パ両リーグの優勝が決まりましたが、クライマックスシリーズへの進出をかけ応援に熱が入っているファンも多いはず。そんなファンの地域分布を、ケーブルテレビ大手のJCOMが視聴履歴から調べたところ、鉄道との関係が見えてきました。(朝日新聞デジタル企画報道部・篠健一郎)
JCOMでは、12球団の全試合を生中継しています。
同社の「あしたへつなぐ研究所」の調査では、視聴履歴の収集と利用の許可を得た280万世帯の契約者を対象に、2022年のプロ野球の試合の視聴時間や視聴試合数に基づいて、①プロ野球ファンかどうか、②ファンであればどの球団のファンかを独自に判定。
その結果、分析に利用できると判定した37万世帯の居住地を調べました。
なお、中日の本拠地がある愛知県など、JCOMがテレビサービスを提供していない地域もあります。
ファンの世帯数は、阪神・オリックスの優勝で湧く関西では、大阪・兵庫・京都はいずれも阪神が1位、2位が巨人でした。大阪と兵庫に球場を持つオリックスは、両府県で3位でした。
2キロ間隔でファンの世帯数が最も多い球団を示した地図を見ると、阪神が多いことが一目瞭然。巨人が数点見られる程度です。
阪神と巨人を除くと、オリックスや広島、ソフトバンクなどのファンが浮かび上がってきました。
関東の1都3県のファンの世帯数はいずれも、東京に本拠地がある巨人が1位でした。2位は、東京は阪神、神奈川は横浜、千葉はロッテ、埼玉は西武と、東京を除いて、各県に本拠地を持つ球団が入りました。
2キロ間隔の地図で見ると、埼玉では、西所沢駅から本拠地のベルーナドームの最寄り駅である西武球場前駅を結ぶ西武狭山線と、池袋駅と吾野駅(埼玉県飯能市)を結ぶ西武池袋線沿線に多いことが見えてきました。
その傾向は、巨人を除く地図でみると、よりくっきりとわかります。
西武の親会社、西武鉄道は球場への誘客に力を入れています。9月初めのソフトバンクとの本拠地3連戦では、「西武特急シリーズ」と銘打ったイベントを企画。
選手などの写真が入った西武線1日フリーきっぷ(非売品)を、一部の席を除く来場者全員(9月3日の試合対象)に配ったり、西武鉄道の本物の車掌が「1番ホームに参りますのは~」などと、スタメン選手を紹介したりするなどしました。
また特定の試合を対象に、都内の西武線沿線に在住・在学・在勤の人を対象に、チケットを特別価格で販売しています。
こうした取り組みが、沿線に住むファンを増やしているのかもしれません。一方、JR中央線を境に西武ファンが少ないことから、分析をした担当者は「中央線が壁のように機能しているように見える」とみています。
鉄道との関係は、他のチームでも見られました。千葉ではJR京葉線や総武線沿線、神奈川では、JR京浜東北線や横浜市営地下鉄と、いずれも本拠地球場の最寄り駅を通る鉄道沿線にファンが確認できました。
JR東日本千葉支社は2016年から、ロッテに加え、バスケットボールやサッカーなど、京葉線沿線に本拠地を持つ六つのプロスポーツチームを「KEIYO TEAM6」と称し、6チームと連携し、プロモーション施策に取り組んでいます。
関東に本拠地を持つ残りの1球団、ヤクルトのファンはどこにいるのでしょうか。現在のチーム名は「東京ヤクルトスワローズ」ですが、球団創立時の1950年は「国鉄スワローズ」と鉄道関連の名前を冠していました。
2キロ間隔の地図を契約者の年代別で見ると、70歳以上、50~69歳は巨人ファンが圧倒的に多いのに対し、49歳以下になると、ヤクルトなど巨人以外のファンの分布が見えてきました。
あらためて巨人を除く地図で見ると、ヤクルトファンが東京を中心に埼玉、千葉、神奈川、茨城と広く散らばっていることがわかります。
ヤクルトの本拠地・明治神宮球場の最寄り駅は、球場の公式サイトによると、銀座線の外苑前駅、総武線の信濃町駅と千駄ケ谷駅、都営大江戸線の国立競技場駅と4駅あります。
このことから、担当者は「神宮球場は都内のどこからでもアクセスが良く、ファンが分散しているのではないか」と推測しました。
視聴履歴のデータから見えてきたプロ野球ファンの地域分布と鉄道の関係。担当者は「ファンの居住地は、球場との直線距離の近さではなく、球場への鉄道でのアクセスの良さとの関連が強そうだ」としています。
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