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連載

#1 知っておきたい相続のこと

突然の連絡「固定資産税を払って下さい」知らぬ間に〝相続〟の恐怖

相続ポータルサイト「相続会議」の編集長が、弁護士に聞きました

「負動産」を相続しなければいけない……そんなときはどうしたらいいのでしょうか?(※画像はイメージです)
「負動産」を相続しなければいけない……そんなときはどうしたらいいのでしょうか?(※画像はイメージです) 出典: Getty Images

目次

使い道がなかったり、売れなかったり、管理が大変で「負動産」などと呼ばれる土地があります。「そんな土地は相続したくない……」と、負動産の相続に困ったらどうしたらよいのでしょうか? 相続ポータルサイト「相続会議」の岩井建樹編集長が、相続に詳しい弁護士に聞きました。

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勝本広太(写真右)
弁護士。所属する川崎相続遺言法律事務所は、その事務所名のとおり、相続問題に力を入れている。

岩井建樹(写真左)
相続会議編集長。自身も田舎の土地や山林が相続されるかもしれないので、どうすればいいのかと思案中。
 

500万円と負動産、相続する? 放棄する?

ーー岩井建樹編集長:私も実家に土地があるのですが、将来相続したくないなと正直思っています。

勝本広太弁護士:売れない、活用できない。でも、雑草除去といった管理を怠ると、近所から苦情が来る。固定資産税も払わないといけない。そんな、いわゆる「負動産」に悩んでいる人は多いです。

特に地方から都心部に出てきた人は、実家や山林、田畑が遺産として残されて困っている印象です。遠方なので、業者に管理を任せるだけでもお金がかかります。万が一、相続した山林で土砂崩れでも起きたら、管理責任を問われかねません。


ーー負動産を相続したくない場合はどうしたらいいでしょうか?

ほかの相続人に負動産を相続してもらえるか交渉するのがよいと思います。例えば、自分よりも多めにお金を相続することを交換条件にすれば、負動産も引き継いでもらえるかもしれません。

交渉が不発に終わったら、相続放棄が選択肢となります。相続放棄をすれば、一切の責任から逃れることができますので。ただし、相続放棄すると、お金のようなプラスの遺産も相続することができなくなります。
画像はイメージです
画像はイメージです 出典: Getty Images
ーー500万円と負動産が遺産として残された場合、相続と相続放棄、どちらの判断をする人が多いですか?

その金額なら、多くの方が相続を選択するでしょう。負動産を相続しても、大きな実害が目先にあるわけではないので、放置しておけばいいという発想になりがちです。100万円と負動産なら、人によって判断は分かれてくると思います。

ーーお金は、ほしいですもんね。負動産は放置されがちとのことですが、社会的には何が問題ですか?

相続人の間で誰が相続するかを決めずに放置すると、その土地は相続人の共有状態(相続人みんなで持ち合っている状態)となります。そして、その相続人が亡くなると、その持分は次の世代に引き継がれます。

この「次の世代への継承」が繰り返されると、共有する人がどんどん増えていきます。その結果、所有者不明土地という問題が生じます。
 
~相続メモ~
所有者不明土地とは、所有者がすぐにわからなかったり、所有者がわかっても連絡がつかなかったりする土地のことをいいます。

所有者不明土地は、公共事業や災害の復旧事業を進めるうえでの妨げになります。また雑草の繁茂やゴミの不法投棄が生じ、周辺の環境や治安に悪影響を及ぼす恐れがあります。

この所有者不明土地の面積は、日本の国土の24%にのぼると推定されており、九州全土を上回ります。

こうした問題を背景に、土地の所有者をはっきりさせるために2024年4月から相続登記が義務化されることになりました。3年以内に登記しなければ、10万円以下の過料が科せられます。また、過去(義務化前)に相続した不動産も義務化の対象となります。

知らないうちに相続してしまうことも

ーー私としては自分の子どもたちに、負動産がさらに引き継がれるのが嫌なんですよね。息子たちが負動産を押しつけあうことになってしまう恐れもあるので。

自分の代で終わらせたいなら、相続放棄をするのがいいと思います。

相続するか、相続放棄をするか、選択できる人はまだいいです。中には、知らないうちに負動産を相続してしまう人もいます。

ーーどういうことですか?

先祖代々の土地で、亡くなった親も自分が相続していたことを知らなかった、もしくは忘れていた場合です。

中には、相続登記されず共有状態が続いた結果、「相続人が100人以上になっていた」なんて話もあります。そんな土地があることを知らないまま相続手続きを終わらせ、ある日役所から「固定資産税を払って下さい」と連絡がきて、気づくケースです。

この場合、親のほかの遺産を相続しているため、この土地を含めて相続は成立しており、放棄はできません。

ーー恐ろしい話ですね……。負動産を相続した後にできることはありますか?

まずは売却の可能性を探ることですね。隣地の人に声をかけたり、現地の不動産業者に相談したり。売れないと思っても、売れることはあります。あとは自治体に寄付を受け付けてもらえないか声をかけたり。

ーーなんとかなるものですか?

残念ながら、なんとかなったという話はあまり聞いたことがありません。誰も買ってくれない、もらってくれない、だから仕方なく持ち続けるというケースがほとんどかと思います。

ーー困ってしまいますね。負動産の買い取り業者もあると聞いたことがあります。こちらがお金を払って引き取ってもらう。

そういう手もあります。ただ、何でもかんでも買ってくれるわけではないようです。
 
勝本広太弁護士
勝本広太弁護士

国が引き取ってくれる制度はあるけど

ーー相続した土地を国が引き取ってくれる制度が始まったと聞いています。これは期待できるのでは?

2023年4月に始まった「相続土地国庫帰属制度」ですね。一定の条件を満たせば、宅地なら20万円の負担金を支払うことで、国が土地を引き取ってくれます。

ーー20万円ならなんとかなりそう。これで問題はすべて解決ですね。

いえ、そうとは言えません。建物のある土地や所有権について争いのある土地などはそもそも申請さえできません。

また、崖がある土地など管理に過度の費用や労力がかかる土地は申請しても不承認となりますので、ハードルは高そうです。

ーーそんな条件をクリアできる土地なら、そもそも売れるのでは?

そうかもしれません(笑) 国も負動産をもらっても困る、というのが正直なところでしょう。税金を使って管理することになり、国民全体の負担につながるので。

いずれにせよ、始まったばかりの制度なので、どの程度ハードルが高いのか、我々も注目しているところです。

ーー本当に難しい問題ですね。「お金だけ相続して、負動産は相続放棄する」ことができればいいのに。

残念ながら、そういった抜け道はないです。相続するか放棄するか、です。相続放棄は一度すると撤回はできませんから、慎重に検討して下さいね。

(※この記事は2023年9月1日の情報に基づいています)
勝本弁護士に話を聞く岩井編集長(左)
勝本弁護士に話を聞く岩井編集長(左)
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