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いつから「無音」に? 西松屋が店内BGMを流さなくなった理由
なんで西松屋ってBGMが流れていないんだろう――。SNS上で、たびたび話題になる西松屋の店内BGM。西松屋チェーンの担当者に流さない理由を聞くと、そのきっかけと店舗運営で心がけていることについて教えてくれました。(朝日新聞デジタル企画報道部・武田啓亮)
赤ちゃんや子ども向けの服や雑貨を扱う西松屋。たびたびSNSでは、「なんで西松屋って店内BGMがかかってないんだろう」「すごい西松屋ってまじ無音」と話題になっています。
担当者に話を聞くと、西松屋では2006年ごろまで童謡やアニメの主題歌、同社のCMソングなどを店内BGMとして使用していたそうです。
「当時、店舗運営の利便性の向上や効率化のため、慣習になっていた業務が本当に必要かどうか、見直しが行われていました」と振り返ります。
例えば、衣服の量販店でよく見かけるワゴンセール。
「商品を手に取るとぐちゃぐちゃになってしまって見づらい。陳列し直すのにも手間がかかる」「大きなワゴンが通路の邪魔になっている」といった理由で、廃止することになりました。
また、アパレル業界では当たり前のマネキンを使った服の展示についても「着せ替え作業に時間がかかる」といった理由から取りやめることになりました。
現在では代わりに、全ての洋服をハンガーに吊して陳列することで、実際に手に取って見てもらえるようにしているそうです。
こうした取り組みの中で、店内BGMも見直しの対象になったそうです。
「視察に行ったアメリカのチェーンストアではBGMはかかっていない」「音楽は人それぞれで好みがある。BGMがあると、かえって買い物の邪魔になるんじゃないか」「商品を選ぶのは耳よりも、目から入ってくる情報や商品にさわった感じの方が重要では?」
実際の店舗でテストして分析してみた結果、売り上げ減や利用者からの苦情といった問題は生じなかったため、全国的に店内BGMを流さないことにしたそうです。
BGMを流すのをやめる――。ささいなことのように思えますが、実は、西松屋の経営戦略ともかみ合う取り組みだといいます。
「積極出店」と「ガラガラ経営」。一見矛盾するように見えるふたつの言葉ですが、ここに、西松屋が育児用品チェーンとして成功した秘密があります。
「店内がすいている方がお客さんは落ち着いて買い物ができて満足するし、従業員も働きやすいからいいんです」
西松屋の大村禎史会長は社長時代の2012年12月に、朝日新聞の取材にこう答えています。
店内の1通路につき、お客さんが常に1、2組いるかどうかの状態がベストだといいます。
あえて「ガラガラ」の状態を保つことで、子ども連れがベビーカーを押しながらでもじっくり店内を回ることができ、少ない従業員でも無理なくお店を運営できるそうです。
店が繁盛して「混雑」するようになったら、近くに新しくお店を作る。
この循環を繰り返すことで、1985年には本社のある兵庫県中心に25店ほどだった店舗は、今では1090店(2023年8月時点)にもなりました。
良質な商品を低価格で販売する。店内を混雑させない。こうした西松屋の経営スタイルを維持するには、無駄を省き、1店舗あたりの運営にかかる費用や労力を抑えることが重要になります。
BGMを無くすことで、楽曲の使用料がかからない、新規出店の際に店内にBGMを流すための設備が不要になるなどの経費節減効果があるそうです。
SNSなどでは様々な反応がありました。
「欲しい商品が見つかるまで、じっくり落ち着いて買い物ができる」
これは当初の狙い通りでした。
「ベビーカーで眠っている子どもと一緒に入店して、退店まで起こすことなく買い物を終えられた」
「足音がよく聞こえるおかげで子どもが迷子になったり、曲がり角でよその子とぶつかったりする心配がなくなった」
こうした、子ども連れならではの反応もありました。
おおむね反応は好意的だそうです。
西松屋に店内BGMが無いことがたびたび話題になることについて、担当者は「小さなお子様連れのご家族が静かに買い物できる環境が、それだけ求められているということかもしれません」と感想を語ってくれました。
その上で、「『お客様にとって便利かどうか』を常に考えながら、今後も時代によって変化していくニーズに応えていきたい」と話しています。
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