IT・科学
麻央さんがつないでくれた縁 市川團十郎さんが植樹活動を続ける理由
長野・志賀高原で10年 植えた木は7万本超
歌舞伎俳優の市川團十郎さん(45)は、2014年から長野・志賀高原で植樹活動を続けてきました。参加者とともに植えた木は7万本超になり、おととしには環境問題を伝えるNPO法人も立ち上げました。なぜ木を植えることになったのか? そこにある思いとは――。(朝日新聞社イベント運営2部・樋口彩子)
今年6月下旬、快晴の空の下、長野・志賀高原にある旧笠岳スキー場の跡地に約840人が集まりました。
市川海老蔵改め、13代目市川團十郎さんの呼びかけで、2014年に始まった「いのちを守る森づくり」、通称ABMORI(エビモリ)の植樹活動です。
團十郎さんと長女のぼたんさん(12)、長男の新之助さん(10)のほか、北は福島県から南は兵庫県まで全国19都府県から応募した参加者約600人、地元の小学生、高校生らが集まりました。
標高1700メートル、約2100平方メートルのスキー場跡地に広葉樹ミズナラやオオヤマザクラ、針葉樹ウラジロモミなど14種類、5200本の苗木を植えました。
このスキー場は2009年に営業を終えました。同じエリアでは2015~17年に続く植樹です。
今回植樹をするところの隣では、かつて植樹した苗木が高いところでは約5メートルまで育ってきていました。そんな様子を間近に見ながら、参加者が土に苗木を入れ、わらを敷き詰めていきました。
終了後には地元特産のりんごジュースと根曲がり竹のたけのこ汁がふるまわれました。
ABMORIの植樹活動は10年前、地球温暖化や猛暑などの異常気象が気になった團十郎(当時は海老蔵)さんが自身のブログで「地球のため、日本の美しい四季を守っていくために何かしたい」とみんなで取り組めることの募集を呼びかけたことをきっかけに始まりました。
ブログについた「海老蔵の森をつくったら」というコメントが目に入り、妻の故・麻央さんに「植樹をしたい」と相談。以前、麻央さんがニュース番組で知り合った、国内外で植林活動をしていた生態学者の故・宮脇昭さんを紹介されました。
2014年6月、長野・志賀高原の旧前山スキー場跡地で初めての植樹があり、宮脇さんが監修して、ABMORIの森づくりが始まりました。
それ以来、志賀高原で閉鎖したスキー場跡地を森林として再生させるため、年1回の植樹活動を続けてきました。
新型コロナウイルスの影響で中止となった2020年を除き、今年で9回目の開催です。これまでの参加者はのべ9393人、植えた木は7万本を超えました。
地域の環境教育としても位置付けられ、地元の長野県山之内町では、東小学校でABMORIに植えるためのコメツガの苗の採取やドングリからの苗作りをしています。
町内3小学校の6年生は植樹活動に参加します。地元の高校生も毎年の植樹活動のリーダー役や、過去に植えた苗の測定(モニタリング)をしています。
町の担当者は「これからは育樹の活動にも取り組んでいきたい。子どもたちには数十年後、自分が植えた木が森になったところを見てもらえるのを楽しみにしています」と話します。
團十郎さんはコロナ禍で予定されていた團十郎の襲名披露公演が延期になった2021年、NPO法人「Earth&Human」を設立しました。
時間ができたことで地球環境問題について改めて向き合い、植樹活動だけにとどまらず自らが先頭に立って地球環境問題の啓発活動などもしていこうと考えたためでした。
NPO法人ではメンバーが地球環境を考えるアースデーに参加したり、ビーチクリーン活動をしたりしています。
麻央さんがつないでくれた縁で、團十郎さんは子どもたちとともに植樹活動を続けてきました。
團十郎さんは、この10年を振り返り「正直、こんなに続くと思っていなかった」と話します。毎年、地元の小学生や、全国各地から多くの親子連れが参加する植樹活動になりました。
「子どもたちが木を植える作業を共有していくことは、子どもたちの未来を自分自身でつくっていくこと。その姿を見ることが私のモチベーションになっている」と語ります。
昨年、團十郎を襲名しましたが「私は血液型がAB型ということもあるので」と、植樹活動の名前は「ABMORI」のまま続けることにしました。
志賀高原だけにとどまらず「全国各地の植樹ができるところにABMORIとして参加することは、今まで通りやっていきたい」と決意していました。
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