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連載

#3 #就活しんどかったけど…

〝企業名〟出さない就活イベント 内容重視、入社後のミスマッチ防ぐ

卒業前なのに「何がしたいか分からない」学生が50%以上という調査結果も

企業名を隠した就活イベントが開かれました。写真は「人とものと時間を大切にする、日本の『丁寧』を世界へ。」と掲げられた土屋鞄製造所のブース
企業名を隠した就活イベントが開かれました。写真は「人とものと時間を大切にする、日本の『丁寧』を世界へ。」と掲げられた土屋鞄製造所のブース

目次

「就活で重視するのは『有意義な仕事をしたい』なのに、合同説明会では『企業名』でブースを選んでしまう」という調査結果が出ました。そんな学生の「ズレ」に着目し、「ミスマッチをなくそう」と初めて開かれたのが、企業名を隠して仕事内容や魅力をプレゼンする就活イベントです。参加した学生からは「先入観なく話を聞けた」といった声がありました。

就活しんどかったけど…

企業名が分からない状態で

8月上旬、東京都内で開かれた就活イベント「#キャリアビジョン直結型インターン」。ビジネス向けのSNSを運営するウォンテッドリー(東京都港区)が主催しました。

学生が長期インターンシップ先を選ぶ際の参考にしてもらうマッチングイベントで、会場には8つの企業ブースが設けられていました。通常の合同説明会と違い、ブースには「企業名」が表示されていません。

ブースに掲げられていたのは、「エネルギーの未来をつくる」「人とものと時間を大切にする、日本の『丁寧』を世界へ。」といったパーパス(企業の存在意義)やビジョン、企業の「やりたいこと」です。

イベントではまず、企業名が隠されたブースを学生が回って担当者と5分間交流しました。その後、企業名を明かしたプレゼンテーションがあり、学生が気になった企業のブースを再び訪れるという構成でした。

「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」と掲げられたウォンテッドリーのブース
「究極の適材適所により、シゴトでココロオドルひとをふやす」と掲げられたウォンテッドリーのブース

「人生選び」を伝える企業も

最初の交流時間では、参加した学生約70人がそれぞれのブースに分かれ、人事・広報担当者らから仕事内容や働き方、企業の提供するサービスなどについて説明を聞きました。企業側は時折、学生からの質問に答えながら魅力をアピールします。

5分という短い時間のなかで学生に何を伝えるかは、担当者次第です。

2020年設立でAI事業を展開するFastLabel(東京都品川区)は、業務内容といった会社にまつわる説明はしませんでした。

担当者が話した内容は、「働くとは何か」「学生が就職先を選ぶ際に何を考えたらいいか」など、〝人生の選択〟に関することです。ブースには「AIインフラを創造し、日本を再び『世界レベル』へ」というミッションが掲げられていました。

プレゼンをした同社の佐々木一陽(もとはる)さんは、「学生の立場になって、何を聞きたいかを考えた」と話します。

「その学生が会社に入ってどのような業務を担当するかは、その時々で変わってしまいますし、具体的にはお伝えできません。企業説明ではなく、どのような基準で業界や会社を選んだらいいのかというポイントを伝えたいと思いました」

企業名が明かされた後でブースを訪れた学生からは、「プレゼンよかったです」という感想をもらったそうです。

イベントには約70人の学生が集まりました
イベントには約70人の学生が集まりました

参加した学生は

企業名が伏せられた珍しい就活イベントですが、参加した学生からは好意的な反応が寄せられました。

東海大学3年の男性は、これまで説明会の参加なども企業名で選ぶことが多かったものの、それでいいのかという違和感があったといいます。「社会人の先輩方からも『会社に入ってからやりたいことが違うと気づいた』という声を聞きます」と話します。

イベントには大学4年生の姿もありました。

東京大学4年生の男性は大学院に進学予定ですが、将来への不安やインターンに興味があることからイベントに参加しました。「会社の規模より事業内容を重視しているので、先入観なくお話を聞けました。知らない分野の企業にも出合えてよかったです」

私立大学4年生の女性は、内定した企業はあるものの「モヤモヤ」が残っていて、引き続き就活をするか、大学院に進学するかを決めかねていたといいます。「企業名で判断するのではなく、入社して何をするかという視点に共感して参加しました。オンラインが主流の就職活動の中で、対面でお話しできたのもよかったです」

企業の担当者も、初めての試みに手ごたえを感じています。

FastLabelでブランドプロモーションを担当する村山悠太さんは、「最初に会社名を伝えず進めたことで、弊社が目指している本質的な部分がきちんと伝わった印象です」と話します。

「エネルギーの未来をつくる」と掲げられたENECHANGEのブース
「エネルギーの未来をつくる」と掲げられたENECHANGEのブース

半数の学生「何をしたいか分からない」

イベントを主催したウォンテッドリーの調査では、就職先を選ぶ際に「企業名」と答えた学生は11%にとどまり、最も重視されたのは「有意義な仕事(共感できるパーパスを持っている会社で働くこと)」(63%)でした。

一方、合同説明会では「企業名」を見て話を聞くブースを決めると回答した学生は76%。多くの学生が仕事内容よりも「どの会社に話を聞くか」を重視している結果になりました。

こうした〝ズレ〟が背景にあるためか、昨年12月の調査では、すでに進路が決まっているであろう2023年卒の学生51%が、「自分が何がしたいか、どんなキャリアを歩みたいかが分からない」と答えたそうです。

企業名を伏せたイベントを立ち上げたきっかけは、これらの調査結果だったといいます。

ウォンテッドリーのコーポレート担当・奈良英史さんは、「学生さんの最大の悩みは、やりたいことや歩みたいキャリアが分からないということです。スキルのマッチングは入社後に解消できる部分もありますが、『何のために働くか』『その企業に共感できるか』を入社後にすり合わせることは難しく、ここがズレていると中長期的に見てミスマッチが生まれます」と話します。

「そこを解消するため、学生さんたちが『自分のやりたいこと』を軸に企業に出合える場としてイベントを開催しました。内定をゴールにするのではなく、自分に合う仕事や楽しめる仕事をしたいという学生さんがこのイベントに関心を持ってくれたのかもしれません」

「企業側としても、有名企業だから興味を持たれるのではなく、企業の目指す方向に共感して一緒に歩んでくれる学生さんとマッチングできる貴重な場だと思います」

<体験談お寄せください> 新企画「就活しんどかったけど……」では、コロナ禍で変化もあった就活の「いま」を見つめ直し、よりよいあり方を探っていきます。

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