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#2 #就活しんどかったけど…
日本の就活、早すぎ?「後々苦しむのは自分…」1年生からインターン
連載「就活しんどかったけど…」
3年次にIT企業から早々に内定をもらった都内の私立大学4年生の男性(22)は、大学1年生の冬から長期インターンに応募し、「営業スキル」を磨いていたといいます。一方で、企業を選ぶときに重視していたのはワークライフバランスで、育休取得率もしっかりチェックしていたといいます。(withnews編集部・水野梓)
コロナが流行し始めた2020年、都内の私立大学へ入学した千葉在住の男性。入学式も開催されませんでした。
1年生の頃はオンラインで講義を受け、サークルも新歓などに参加して選ぶことができなかったので、ネットで調べて学祭の運営委員会に参加したといいます。
就活を意識し始めたのは大学1年生の冬。周囲よりもかなり早かったといいます。
「普通のバイトをするんだったら、長期インターンをやって、働く人たちのコミュニケーションを早くから学べたらいいなと思いました」
「何の仕事をするにしても営業は重要」と考え、同じ大学の学生が働いていたり、大手が開催していて知名度があったりするインターンを探し、面接を受けて合格しました。
インターンの業務内容は、営業販売でした。複合商業施設でブースを開設して、通りすがりのお客様に声をかけ、商材を売り込みます。
「バイトもあまりやったことがない19歳が、初めて会った40~50代の方に売り込む……というのは、最初はすごく難しかったですね。営業スキルが磨かれました」と苦笑します。
とはいえ、バイトよりも時給の高い、好待遇なインターンも多く、「お金をもらいながら学べる」というメリットを感じていたといいます。
2年生の3月から、自己分析やウェブテスト受験なども始めました。質問集を友達に送って答えてもらう「他己分析」もしました。友人という第三者から見ると、自分がどんな風に見えるのか、送ってもらったといいます。
「面接官も第三者なので、自分が見ている自分より、他の人が見ている自分の方がよりギャップがないのではと考えました」
エントリーシート(ES)には、学生時代に力を入れたこと(ガクチカ)も、営業の長期インターンの経験を書きました。
「サークル活動だと、自分の活動を数値で表すことがなかなかできません。だから、その活動がどれだけすごいのか、どうしても面接官に伝わりづらい面があります」と言います。
「一方で、この長期インターンの経験だと、定性的にも定量的にもアピールができたという部分がよかったと思います」
インターン先で出会った先輩のなかには、外資系の企業で内定をもらっている人もいたため、ESの書き方などもアドバイスをもらいました。
「日系企業なら『チーム全体で取り組み、貢献した』という書き方の方がいい」といった助言があったそうです。
最も忙しかったのは、3年の春からでした。
4~5月上旬にウェブテストが続き、5月中旬から7月後半までは夏のインターンの面接ラッシュ。7月上旬から10月下旬には、合格した夏のインターンに参加する日々を送りました。
1DAYインターンも含めると、参加した数は40~50社にのぼるといいます。オンラインのインターンも多かったものの、重ならないようにスケジュールを管理するのは大変だったそうです。
男性は業界や仕事のやりがいへのこだわりはなく、ワークライフバランスを重視した企業で働くという「働き方」を大事にしていました。
「仕事は自分の人生を実現するための手段のひとつ、という思いが強かったんです」と振り返ります。
志望企業をしぼっていく段階では、先輩に評判を聞いたり、社員の口コミが載っているサイト「オープンワーク」で残業時間を見たり、男女の育休取得率をチェックしたりしていました。
「自分の働き方」を重視するようになったのは、インターン先の先輩たちが、自分の将来プランを考えて就活をしていた影響が大きいそうです。
「仕事をバリバリやってお金を稼ぎたいという人もいたし、働き方を重視する人もいたし、先輩それぞれで『幸せのカタチ』は違いますが、みんな『自分の幸せ』をちゃんと考えた上で将来のキャリアを選択しているんですよね」
その上で、男性自身は「働きながら子育てもちゃんとしたい」と考えたそう。「だから育休取得率は男性の方もしっかりとみます」と話します。
東京勤務で、ワークライフバランスを重視し、年収はこのくらい……と、自分の求めていることを探りながら、志望企業を5,6社に定めたといいます。
1月、第一志望のIT系企業から、インターンを受けた学生にだけ選考の連絡がきたそうです。受けたところ、2月に早期内定が出たといいます。
この企業のインターン期間は4日間でしたが、そこで出会った社員と話していても、OB訪問で話を聞いても、サービス残業などはなさそうで、自分の目指す働き方と合っていると感じたそうです。
ほかの企業と迷ったりもしましたが、第一志望の企業は「内定承諾」をせかすこともなく、その点も好感があったといいます。
振り返ると、最も大変だったのは夏のインターンの時期。面接の勝率は50%ぐらいで、最初の方は、ほとんど「全敗」だったといいます。
落ち込みもしましたが、それまでオンライン面接を受けた経験はなく、「これは慣れだな」と頭を切り替えることができたといいます。
日本の就活制度がどんな風に変わっていってほしいかを尋ねると、男性は「面接の形式が、オンラインなのか対面なのかが選べるようになったらいい」と話してくれました。
特に、夏のインターン選考は時期が集中するため、スケジュールが詰まっていて「全てが対面の面接だったら絶対にうまくいかなかった」と振り返ります。
一方で、「3年生の時が最も忙しい」と先輩から聞いていたので、1~2年の頃から多めに大学の講義をとって調整していたため、とる講義の数を減らし、学業との両立は問題なかったといいます。
1年の冬から早々と就活を意識し、3年の夏に山場を迎えた男性に、「日本の就活は早すぎますか?」と聞いてみたところ、「周囲も早くから就活に取り組む人たちが多かったので、自分はそうは思いませんが、これ以上早くなっちゃうと困りますね。今が限界だと思います」と苦笑します。
なかには、就活が忙しくなって講義を欠席しようとしたところ、大学の先生とケンカになった――という学生もいたといいます。
「大学生なのに、週1回しか講義がとれない、講義に出られない……というのもおかしな話なんですが、後々苦しむのは自分なんで。早めに動くと有利に働くというのはその通りなので、できることからやっておくといいと思います」と話しています。
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