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#21 親になる

夏祭りで「ハッ」 屋台のその食べ物、子どもに与えて大丈夫?

お祭りでは子どもの事故が発生しやすいというが……。※画像はイメージ
お祭りでは子どもの事故が発生しやすいというが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

コロナ禍で中止されていた夏祭りが各地で再開され、大きな賑わいを見せています。一方で、高揚した気持ちから、普段なら買わない食べ物やおもちゃを買ってしまうことも。でも、屋台で販売されている商品には、子どもに与えるときの注意点が多くあります。親はどうすればいいのか、心構えと対策を紹介します。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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夏祭りの屋台で“ハッ”とした

何かと行事の多い夏。1歳を迎えた我が子は、保育施設での幼児用プール体験に大興奮し、はしゃぎ過ぎて見たことのない形相になっていて、その熱中ぶりがちょっと怖かったです。

さて、夏のイベントの目玉は他にもあり、コロナ禍で中止になっていたものが全国的に再開している「花火」「お祭り」もその一つでしょう。

すっかり「赤ちゃん」から「小さい子ども」といった印象になってきた我が子を、地域の夏祭りに連れて行くことにしました。

コロナ禍が続き、あまり人混みに慣れていない我が子は、物珍しそうにキョロキョロ。でも、ちょっと不安なのか、抱っこする親のTシャツの胸元をギュッと握っていて、可愛らしいです。

まだまだ感染に気をつけなければいけない時期は続くのかもしれませんが、やはり、この子にいろんな光景を見せてあげたい、元の世の中に戻ってほしい、という思いも浮かんできます。

その中でも我が子がひときわ釘付けになっていたのが、賑やかに呼び込みをする屋台の数々です。カラフルなおもちゃやジュージューと熱い鉄板の色や音、匂いに興味津々の様子でした。

その一つ、「ベビーカステラ」の屋台のおじさんに「お子さんにどうだい?」と元気よく言われて、ハッとしました。「ベビーカステラ」って、うちの子どもに与えて大丈夫かな?

はちみつを含む食品は1歳から

1歳を超えると、食べていいとされるものは増えます。逆に、1歳までは食べてはいけないとされる食べ物があります。

主なものでは「はちみつ」。これについては近年、厚生労働省や自治体などが、ネットでも盛んに注意喚起をしているので、子どもがいない場合でも、聞いたことがある人もいるのではないでしょうか。そして、カステラなどには材料としてはちみつが含まれていることがあるのです。

厚生労働省は、1歳未満の赤ちゃんがはちみつを食べることによって「乳児ボツリヌス症」という病気にかかることがある、として、警戒を呼びかけています。

乳児ボツリヌス症は、ボツリヌス菌が腸内で増えて毒素を出すことによる病気。同省によれば「便秘、ほ乳力の低下、元気の消失、泣き声の変化、首のすわりが悪くなるといった症状を引き起こす」ことがあり、「ほとんどの場合、適切な治療により治癒しますが、まれに亡くなることもあります」とします。

ボツリヌス菌は土壌中などに広く存在している細菌で、はちみつなどに混入していることがあります。大人にとっては危険性が高くありませんが、腸内環境が整っていない1歳未満の赤ちゃんには「リスクが高い食品」(同省)です。

ボツリヌス菌は熱に強いので、通常の加熱や調理では死にません。そのため、1歳未満の赤ちゃんには「はちみつやはちみつ入りの飲料・お菓子などの食品は与えないようにしましょう」ということでした。

うちの子はもう1歳になっているので、入っていたとしても問題はないわけですが、念のため、屋台のおじさんに「はちみつって入ってますか」と聞いてみました。返事は「どうだったかな」という、のんびりしたもの。とりあえず子連れの自分たちが手軽につまみたかったので、購入。結果、親がおいしく食べきりました。

屋台のおじさんも、きっと何の気なしに声をかけただけ。1歳前後の子どもの正確な年齢なんて見た目ではわからないでしょうし(前述したように、もう「赤ちゃん」ではなく「小さい子ども」に見えます)、お祭りという状況を考えると、親が気をつけるべきとも感じます。

「お祭り」子どもには危険も

実は、お祭りで購入するおもちゃや食べ物については、行政も注意喚起を繰り返しています。ポイントは主に二点で、その場や屋台で購入して持ち帰ったり食べたりした商品による事故が起きやすいということ、その原因の一つに商品に「注意表示」「成分表示」などがないことが挙げられます。

ベビーカステラの例について言えば、こうした屋台の焼き鳥やたこ焼きといった食品には、法律上の栄養成分などの表示義務がないとされています。そのため、はちみつ以外にも、例えばアレルギーを引き起こす食品が含まれていたとしても、それを確かめる方法は、販売者に聞くしかありません。

そのため、現実的には、屋台の食べ物には年齢によって与えられない食品や、アレルギーを発症する可能性がある成分が含まれているかもしれない、ということを前提に、購入するかどうか判断する必要があります。

お祭りでは、特に小さい子どもの事故が起こりやすくなるため、消費者庁は8月初旬、「安全も忘れずに楽しんで」と注意喚起をしました。

同庁と国民生活センターには、お祭りから持ち帰ったおもちゃや屋台の食品などが関係する事故の情報が医療機関から寄せられています。また、事故情報データバンクに登録された情報の中にも同様の相談事例がみられます。具体的には下記のような事例が紹介されています。

<縁日で年上の子のために持ち帰った水で膨らむボールを、洗面器にたくさん入れて遊んでいた。子どもが赤いボールを一つ食べたと言ったため受診し、通院して様子を見ることとなった(2歳)>
<お祭りで買ったケミカルライト(光る棒)を寝室に置いていたところ、子どもがかじって割ってしまい、中の液体が付いた手で目をこすり痛みが生じた。水で洗い流して受診し、経過観察となった(5歳)>
<屋台で買った串に刺さった食品を歩きながら食べていたところ、滑って転んでしまい、串が口に刺さった(8歳)>
<子どもから目を離した隙に、屋台の鉄板に触れてしまい、手のひらにやけどを負い、通院が必要となった(3歳)>

こうしてみると、お祭りではやはり、子どもを連れた親が気をつけるべきポイントが多そうです。

おもちゃは、安全性や取り扱い上の注意がわからない場合には「子どもに与えないようにする」こと、また「子どもの手が届かないところで管理する」ことを心がけましょう。同庁は「不要であれば廃棄することも検討してください」としています。

また、お祭りの屋台は食べ物も魅力的ですが、食べるときは「落ち着いて食べられるように工夫を」と同庁は呼びかけています。

危険があるからといって、子どもをお祭りから引き離そうとするのではなく、その年齢にあった見守りを実践していきたいと、楽しそうにニコニコと笑う子どもの姿を目の当たりにして思ったのでした。

【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。

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