連載
#1 #就活しんどかったけど…
オンライン面接を〝ハック〟 でも対面では…コロナ禍で経験した就活
連載「就活しんどかったけど…」
大学3年生の頃から意識し始めた「就活」。大学生活がコロナ禍と重なった22歳の女性は、エントリーシート(ES)の「ガクチカ(学生時代に力を入れたこと)は1年生の時のことばかり書いていた」と振り返ります。一方で、オンライン面接は「自分にすごく合っていた」そうですが、最終面接が対面になると――。ことしの春に専門商社に入社した女性に、コロナ禍で経験した就活について聞きました。(withnews編集部・水野梓)
ことし4月、専門商社に入社した女性(22)。「だんだんと仕事に慣れてきたところです」とはにかみます。
2019年に都内の私立大学に入学。選んだのは社会学や経営学・マネジメントなどを学び、留学が必須の学部でした。
2年生でコロナ禍と重なり、大学の講義はすべてオンラインに。所属していた運動部の活動も休止になってしまいました。
「将来は英語が大事」と考えて選んだ学部でしたが、留学もコロナ禍で行けず、〝オンライン留学〟に切り替わりました。
「ふだんの講義と変わらず、オンラインで受けるスタイルでした。その時点でガクチカに書けることは、ほとんど大学1年の頃のものでした」と振り返ります。
実際に「就活っぽいこと」に初めて取り組んだのは大学3年生の6月。企業のインターン情報が解禁され、「やった方がいいんだろうな」と考えて、提出書類に貼る写真を撮ったり、「自己分析セミナー」に参加してシートを作ってみたり……。夏には、大手企業の5日間のインターンに応募しましたが、受からなかったといいます。
9月からベンチャー企業でインターンを始め、コロナ禍で休止していた部活でも練習や部内の試合が再開していきました。
就活の選考では、早期に始まるSE(システムエンジニア)を受けていましたが、途中から「自分には向いていないかもしれない」と思い始め、業界を「商社」にしぼるようになりました。
年が明けた頃、いくつかの企業の1DAYインターンにも参加。面接の練習などを重ねたといいます。
最も大変だったのは、ESの締め切りが重なった3月3週目にコロナにかかってしまったこと。「もう終わったな」と感じたそうです。
「でもその後は、『あの時ほど最悪なことはない』と思えたので、意外とスムーズに就活を進められました」と笑います。
当時のスマホのスケジュールを見返すと、びっしり「就活」の予定が詰まっています。
30から40社を受けた記憶ですが、ほとんどESでは落ちず、1,2次面接まで進みました。
就活で大事にしていたのは、福利厚生や仕事内容ではなく、「働いている人の雰囲気」。「説明会の前に座談会プログラムで話す社員の方や、やりとりする人事の方の雰囲気で『ここはいいかも』って判断していました」と話します。
「若手社員の方に『風通しはどうですか?』と質問もしました。もしかしたら本当の回答ではないかもしれないけれど(笑)、この人たちと働いてみたいって思えるかどうかが重要でした」
「就活は楽しかった?」と聞かれると、「楽しくはなかった」と思い返す女性ですが、友人のなかには、1社落ちるたびに「一生就職できないかもしれない」と悩んでいた人もいたそうです。
「でも私は『なんとかなるでしょ』って思っていて。メンタルが強かったのかもしれません」と話します。
これまでバイトの面接で7回ほど落ちた経験があるそうで、「ふつうバイトの面接ってそんなに落ちませんよね?(笑)」と苦笑します。
「落ちる耐性がついていたのかもしれません。就活で『お祈りメール』がきても、『ちっ』と思うぐらいでした」と話します。
とはいえ、友人たちの就活の動向は気になっていたといいます。
「大学の友達がどんどん内定をとっていて。インスタのストーリーでの『就活終わった』アピールもちょっと嫌でしたね」
3月末から4月頭、志望度は高くなかったものの、2社から内定が出たことは「心の余裕」につながったといいます。
女性にとっては、コロナ禍で面接が「オンライン」になったことも「自分にすごく合っていた」と言います。
数十社の面接を受けたなかで、対面の面接は2回だけ。最終面接がオンラインのところもありました。
パソコンのカメラが下にあるので、「自分の顔が下にくるように画面を設定して、自分の顔を見ながら話していました」といいます。オンライン面接を自分にフィットするように〝ハック〟していたので、「緊張はあまりしませんでしたね」と話します。
「『就活なめているでしょ』って思われるかもしれませんが、面接の10分前に企業理念を調べてPC画面の後ろに貼っておいて、Zoom画面を小さくする…ってこともしていました」
ただ、最終面接が対面だったとき、「初の対面の面接」に緊張し、頭が真っ白になって「話す内容が全て飛んでしまいました」。結果は不採用だったそうです。
「対面の面接は、向かい合っている面接官の皆さんそれぞれを見渡して話さなきゃいけなくて、難しかったですね。2度目の対面の面接では心構えができて、それが今働いている会社です」
自分の希望に合うところで働けて、満足している女性ですが、就活全体を振り返ると、「髪の毛を真っ黒にして、表情が見えやすいように前髪をつくらずに分けてピンでとめて……という〝ルール〟のようなものが好きじゃなかった」と話します。
「さすがに黒髪かなぁ」と考えてブリーチはやめたそうですが、前髪については「見た目で落とすならどうぞ!」と考えて、普段の髪形のままで臨んだそうです。
「父の時代には、ネクタイをしなかったとか、チェックのスーツで面接をしたとか聞きました。採用活動にも関わっている父は、『リクルートスーツでみんな同じにしてどうするの』って話していました」
実家に住み、就活のことも両親に相談していたという女性。ESも父にアドバイスしてもらったといいます。また、大学のOBOGから、オンライン面接のクセをアドバイスしてもらったのも役立ったそうです。
就活セミナーや就活サイトなどでは、「ガクチカ」には「数字を入れて具体的に書いた方がいい」「この活動を自分が引っ張った、と主体性をアピールできるようにストーリーを作った方がいい」ともアドバイスされます。
女性は、就活が終わって企業で働くいま、「『ガクチカ』は、『何をやったか』ではなくて、企業側の質問に『どう答えるか』なのではないかなぁと感じました。だから、ガクチカは盛らなくてもいいのかなって思います」と言います。
就活中の学生や、これから就活を始めようとしている人に向けて、「ご縁のある会社にご縁があると思うので、落ちてもそんなに気にしなくていいよと伝えたいです」とエールを送っています。
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