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小分けの袋もテープもなし 紙の袋のエコ花火「予想上回る売れ行き」
「こんな花火っぽくないパッケージでは売れない」からの逆転
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「こんな花火っぽくないパッケージでは売れない」からの逆転
小分けのプラ袋に入った花火が台紙にテープで貼りつけられ、プラスチックの大袋に入れられている――。家庭用の花火セットといえば、そんなイメージが一般的ではないでしょうか。ところがこの夏、紙袋に入ったシンプルなデザインの花火セットがSNSでも注目されています。これまでの「当たり前」を変えた商品が生まれた背景を取材しました。
おもちゃ花火といえば、花火ができる近くの公園へ包装されたままの状態の商品をバケツとともに持って行き、暗闇のなか「はがすの面倒くさいな」なんて言いながら(蚊にも刺されながら)、準備をした……筆者にはそんな思い出があります。
この夏、従来の商品包装から脱却し、紙の袋に手持ち花火を入れた「エコパッケージ花火」を発売したのは、花火の製造・販売を手がける「若松屋」(愛知県・西尾市)です。
この「エコパッケージ花火」は、ベージュを基調とした落ち着いたデザインの紙製の袋を採用。デザインもシンプルで、商品名と商品写真、「エコ」なポイントを英語で記載しており、おしゃれな印象です。袋を開けると、従来は小分けされていた花火が、そのまま入っています。
花火の種類は、従来品と変わりませんが、内容量は従来品から20%増量しています。
エコパッケージ花火を考案した同社営業部長の竹内直紀さんによると、開発のきっかけは2020年にさかのぼります。
おもちゃ花火の他、打ち上げ花火も手がける同社ですが、コロナ禍で多くのイベントが中止となり、打ち上げ花火の現場にも行けなくなり「今年はもう終わった」という雰囲気があったといいます。
コロナ禍以前は、「新規参入が難しい業界でもあり、正直言うと、新しいことを始めたり、積極的に広報したりというのが得意ではなかった会社でした」と振り返る竹内さん。
ただ、コロナ禍の苦境で「何かしなくては」という機運が高まったといいます。
そんな中、着目したのが持続可能な開発目標(SDGs)の観点でした。
当初、「花火は遊んだら100%ゴミが出るので、SDGsとは遠いもの」と考えていた竹内さんでしたが、あるSDGsの専門家の講演を聞いて、考えが変わったといいます。
「SDGsということだけを突き詰めた全く新しい商品を考えてみよう」という発想に切り替わりました。
2021年、会社の同僚も巻き込み、SDGsな商品開発を話し合う中で「プラスチックの袋をなくそう」という発想が生まれ、それが元となり「エコパッケージ花火」にたどり着いたといいます。
筆者が気になったのは、そもそも従来商品がビニール袋で小分けされていることや台紙にテープ付けをされていることにはどんな意味があったのかということです。
小分けのビニール袋が使われている理由のひとつに「輸入」の商習慣が影響しているといいます。
海外から花火を輸入する際には、「種類ごとに輸入する」という業界内の取り決めがあり、複数の種類をまとめてパッケージに入れて輸入することはできません。
そのため若松屋では、これまでは種類別にビニール袋に入れて輸入していたのをやめて、エコパッケージで使う花火は紙テープでくくって輸入しています。
台紙にテープ付けして透明な大袋に入れる売り方は、「業界の常識として、入っている花火の中身を広げて見せるものが好まれてきた」ことに由来するといいます。
そのため、紙袋に入れて見せ方が大きく変わるエコパッケージ花火は、開発当初、社内での賛同を得ることに苦労したといいます。「種類ごとに見せることをせず、袋にまとめて入れてしまうことで、『おもちゃ花火』であることを表現する面積が物理的に減ってしまうんです」
そこを打破するための策として採り入れたのが、商品と一緒に、店頭説明用のポップも一緒に卸に渡す方法でした。この販売方法で、「実用新案(物品の形状、構造または組み合わせに係る考案を保護するための権利)」も取得しました。
店頭説明用のポップには、花火の写真や「エコパッケージ花火」の三つの特徴である「プラスチック不使用」「製造コストの削減」「輸送コストの削減」を明記しています。
今年から発売を始めた商品は、イオンの一部店舗や、ホームセンター「ジョイフル本田」、東京・銀座のおもちゃ店「博品館」などで販売。
竹内さんによると、シーズンが始まる前に小売店からは「こんな花火っぽくないパッケージでは売れない」と言われることもありました。
ただ、フタを開けてみると、エコパッケージ花火は若松屋の計画数を大きく上回る売れ行きでした。在庫はほぼなくなっているといいます。
「『SDGsの取り組みのために』という名目で扱ってくれた小売店さんは、売り上げを期待していなかったと思います。それなのに売れたので、お客さんも驚いていました」
小売店の販売員のなかには、「商品を見て、ポップを読んで、SDGsを掲げた商品であることにちゃんと気づいて買ってくれていました。思った以上に、お客さんは商品を衝動買いしていない」と話す人もいたそうです。
若松屋のエコパッケージ花火の商品展開は現在4種類ですが、来年は生産数を増やしたりリニューアルしたりして、新たな展開も考えていく予定だといいます。
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