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川で「ガサガサ」続けるYouTuber 毎回ゴミ袋が満杯に…
「何の気なしに見ていた動画」が行動を変えた
生き物を採集して、その様子を動画で紹介しているYouTuberのマーシーさん。多くのゴミが捨てられる光景を目の当たりにしたり、釣り針でケガをした動物を保護したりしていますが、「そんな情報が一番届いてほしい人に届いていない」という難しさも感じているそうです。「社会課題」の伝え方について語り合ったイベントを取材しました。
YouTubeチャンネルで登録者数36万人を擁するマーシーさんは、滋賀県内を中心に活動しています。川で生き物を網で追い込む「ガサガサ」をし、そこに生息する外来種などを捕獲する様子を動画にし、生態系の現状などについても伝えています。
7月に有楽町マルイで開催されたイベントでは、使い捨てプラスチックを使わずに暮らす「1カ月脱プラ生活」などの企画を手がけたRICE MEDIAのトムさん(登録者30万人)と対談しました。
司会者からの「ガサガサをする中で、ゴミが生き物に影響していると感じることはありますか」との問いに、マーシーさんは釣り糸や釣り針のゴミについてのエピソードを語りました。
釣り糸が前足に絡まったミシシッピアカミミガメがいたことや、おそらく釣り針でケガをしたと推測される、下あごがないニホンイシガメを保護した経験などを語りました。
「そのニホンイシガメは今、自宅で保護しています。食べやすいようにしたエサをピンセットで与えていますが、野生では生きられない体になっています」と指摘します。
また、ガサガサをするたびに、毎回1袋分のゴミ拾いをしているというマーシーさん。橋の下に大型家電が捨てられている光景などを目にしたこともあるそうです。
一方で、違法廃棄で生態系を破壊したりする人たちなど、「僕の発信が一番届いて欲しい人に届いていない」とも感じているそうです。
「イベントに来ている人たちには、すでに関心を持ってくれていると思う。ここで知ったことなどを多くの人に伝えてほしい」
対談相手のトムさんはこの夏、3度目の「1カ月脱プラ生活」に挑戦しました。この企画を始めた理由について「プラスチック製品に一度向き合わないと、どう使われているか意識しない」と話します。
今年は、脱プラを推進するオーストラリアからのリポートにも挑戦しました。
トムさんの動画は、大きなリアクションやユーモラスな動き、「えっぐ」「まじかー」など正直な気持ちを飾らない話し言葉でつぶやくなど、堅苦しくない演出が特徴です。
今回のイベントでも、「我慢してプラなし生活をするのではなく、楽しくやれそうなことをやっているうちにゴミが減らせるのではないかと思っています」と、社会問題へ取り組むハードルを下げて語っていました。
さらに、「街中のゴミについて『外にゴミを捨てる人が悪い』となりがちだけど、風で飛ばされてしまったゴミもあるかもしれない」とも。
その上で、プラごみを減らすのであれば、「そもそもの供給を減らすことが大切なんだと思う」と話していました。
伝わりにくい社会課題をどう伝えたら――。そのヒントを求めるため、今回、この対談イベントを取材しました。
トムさんのファンだという愛知県から訪れた30代のカップルに話を聞くと、女性はもともと環境問題に関心があったわけではないと打ち明けてくれました。
「なんの気なしにSNSを見ていたらトムさんの動画が流れてきて、おもしろさから見始めた」とファンになったきっかけを語ります。
RICE MEDIAの動画をきっかけに、自分のマグカップを持ち歩いたり、レジ袋を断ったりするようになったそう。
男性の方は、環境に関心があったものの「伝えるのが難しい話題」と感じていました。
「厳密に話しすぎると伝わらないけど、トムさんの伝え方は、身近なものが多くて堅苦しくない」と魅力を語ります。
今回のイベントの参加者には、若い世代も多かった印象です。
若者に人気のファッションビルが会場だったのも、参加しやすい一つの要因だと思います。イベントを通して、伝えたい層へのアプローチ方法が学びになりました。
マーシーさんもトムさんも、関心を持たれにくい課題をより多くの人に伝えるために動画という手法を使い、さらに企画の方向性を「見やすい」ものにすることなど、工夫をしています。その工夫がしっかり奏功しているように感じました。
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