梅雨の時期は食中毒に注意が必要です。中でも、コロナ禍で半減していたカンピロバクターによる食中毒が現在、国内で相次いでいます。主に生や半生の鶏肉から感染する細菌であるカンピロバクターは、まれに難病を引き起こしたり、後遺症が残ったりすることもあるため、厚生労働省などが注意を呼びかけています。どのような対策があるのか、まとめました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
4日には札幌市、8日には京都市、10日には広島市が、それぞれ飲食店、保育園給食、飲食店での食中毒が発生したと発表、患者からはカンピロバクターという細菌が検出されたことを明らかにしました。
内閣府食品安全委員会によれば、「今の時期をはじめ、1年を通じて特に気をつけたい食中毒菌の一つがカンピロバクター」。鶏刺しや鶏タタキ、鶏レバーなどの生肉や、加熱が不十分な肉料理を食べたことによる食中毒の事例が、毎年、多く報告されているとします。
カンピロバクターは鶏や牛などの家畜の腸内に生息しており、生の鶏・牛の肉や、肝臓に付着していることがあります。この菌は、冷蔵または冷凍温度でも長期間にわたり生存できます。
カンピロバクターが付着した食品を食べると、2~7日ほどで、下痢、腹痛、発熱、頭痛、吐き気、おう吐などの症状が現れます。死亡例は少ないものの、乳幼児・高齢者など抵抗力の弱い人は重症化する危険性もあり、注意が必要です。
まれに、カンピロバクターに感染した数週間後に、手足の麻痺や顔面神経麻痺、呼吸困難などを起こすギラン・バレー症候群を発症する場合があり、筋力低下や運動麻痺の後遺症が残ることもあります。
厚生労働省によれば、カンピロバクターによる食中毒は、国内で発生する細菌性食中毒の中で、近年、件数がもっとも多いもの。年間300件、患者数2000人ほどで推移してきました。
そんなカンピロバクターによる食中毒について、厚労省は11日、あらためて注意喚起をしました。
この中で、厚労省は市販鶏肉から20〜100%という高い確率でカンピロバクターが見つかっていること、「新鮮だから安全」ではなく鶏肉は中心部までしっかりと加熱することなどを呼びかけています。
厚労省によれば、最近でも、屋外で飲食店が食肉を調理し提供するイベントで加熱不十分な鶏肉を提供し(イベントのホームページでは、「新鮮だからこそできる鶏ささみ寿司」などとアピール)、500名を超える患者が発生した事案があったということです。
実は、カンピロバクターの患者数は、コロナ禍の2020~22年は700~900人台に半減していました。これは、飲食店の利用が減ったためとみられています。今年は飲食店の利用が増えたためか、各地で発生が報告されており、専門家からは今後、急増のおそれがあるとして警戒されています。
内閣府食品委員会によれば、カンピロバクターによる食中毒の予防のためには、以下のポイントが重要だということでした。
・生または加熱不十分な鶏肉や鶏レバー、牛レバーなどの肉を食べない。
・特に鶏肉などの肉は、十分に(中心部を75℃以上で1分間以上、またはこれと同等の条件で)加熱してから食べる。
・保存時や調理時に、肉や肉に含まれる細菌と、他の食材(野菜、果物等)との接触を防ぐ。生の肉は洗わず、生の肉に触れた手はしっかり洗ってから他の食材を取り扱う。生の肉に触れた調理器具、食器は十分に洗い、調理器具や食器は、熱湯で消毒し、よく乾燥させる。