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エナドリ、若者の購入伸び率が最多に 過去に救急搬送、死亡例も

エナジードリンクが若者にも普及しているが……。※画像はイメージ
エナジードリンクが若者にも普及しているが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

カフェインを含むエナジードリンクの市場が拡大しています。特に若者に人気で「受験勉強やゲームのための飲用」の可能性も。一方、カフェインを巡っては、救急搬送や死亡例が続いており、最近でも8歳の子どもの中毒疑いの事例があったり、含有量の多いコーヒー飲料を発売した大手メーカーがSNSで批判を集めたりしました。国や小児科学会などの見解から、カフェインとの正しい付き合い方をまとめました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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若者の購入の人数・本数ともに増加

カフェインを含む清涼飲料水であるエナジードリンク。調査会社インテージの全国15歳〜79歳の男女53,600人を対象にした消費者パネル調査で、若者のエナジードリンク購入の変化が明らかになりました。(バーコードスキャン方式によるインターネット調査/2013年5月~2023年4月実施)

それによれば、エナジードリンク市場は過去10年間で大幅に拡大。その中でも15〜24歳の購入の伸び率が他の年齢層よりも⾼い結果でした。

具体的には、この9年の15〜24歳100人あたり購⼊本数の年平均の伸び率が各年齢層の中でもっとも⾼い8%に。また、15〜24歳では特に購⼊者あたりの購⼊本数の増加が大きく、購⼊者増加に加えてエナジードリンクを飲む本数が増えたことが、エナジー市場拡大を牽引したとみられます。

また、深夜帯(21時〜4時)の購入の構成比が他の年齢層より⾼く、同社は「受験勉強やゲームのための飲用が多い可能性が考えられる」としています。

同社は若者のエナジードリンクの飲用シーンとして「受験勉強やパーティー、ゲームなど」を挙げ、「エナジードリンクはコーヒーよりも目覚まし効果が⾼いと認識されており、受験勉強や大会の準備をする若者が集中⼒を⾼めるために飲む傾向があります」と説明。

若者の間では「パーティーでエナジードリンクをアルコールと組み合わせて楽しむスタイルも流⾏」「近年では『eカルチャー』をコンセプトにした商品も登場し、ゲーム中に飲用することも増えています」と紹介しています。
 

カフェイン中毒で救急搬送、死亡も

内閣府の食品安全委員会の注意喚起によれば、カフェインはコーヒー豆、マテ茶を含む茶葉、カカオ豆、ガラナなどに天然に含まれる食品成分の一つ。カフェインを多く含む主な食品はコーヒーおよび茶類ですが、エナジードリンクや目覚まし用のドリンクには、さらに多くのカフェインが含まれているものがあります。

同委員会は「カフェインには、適量摂取することにより頭が冴え眠気を覚ます効果があります」とする一方で、「過剰に摂取した場合の一般的な急性作用として、めまい、心拍数の増加、興奮、不安、震え、不眠症、下痢、吐き気をもたらすこともあります」と指摘。

日本中毒学会の調査によれば、カフェインを原因とする症状により国内で救急搬送された人は、2011年からの5年間で101人にのぼり、3人が死亡しています。

この調査では、学会員が所属する264の救急医療施設に調査を依頼、うち39施設が回答。カフェインを含む風邪薬や鼻炎薬などを同時に飲んだケースは調査対象から除かれているということです。

救急搬送された101人は14〜54歳で、18歳以下は16人。また、この数字は2013年以降に86人と急増しています。症状は激しい吐き気・嘔吐やイライラ、興奮、動悸などで、重症例では7人が心停止していました。内訳は、眠気防止薬が97人、清涼飲料水が10人、コーヒーが5人でした(重複回答あり)。

2015年には、福岡で20代男性がカフェイン中毒により死亡した事例もメディアで注目を集めました。

この事例では、死亡した男性は24時間営業のガソリンスタンドで深夜から早朝にかけての勤務があり、日常的にエナジードリンクを多用しており、胃の中からはカフェインの錠剤も発見され、カフェインの血中濃度は致死的なレベルに達していたと報道されています。
 

カフェインとの正しい付き合い方

一般的なエナジードリンクには1本あたり100mg以下のカフェインが含まれていることが多いです。これはマグカップ1杯のコーヒーとほぼ同等です(商品や淹れ方により差があります)。

2023年1月には、日本小児科学会のこどもの生活環境改善委員会で、8歳11カ月の男児の「エナジードリンクによるカフェイン中毒疑いの事例」が報告されました。

この事例では、男児は近所にある自動販売機でエナジードリンクを購入し、一気にすべて飲んだところ、吐き気が出現し、持続するために救急外来を受診したそう。男児はエナジードリンクは飲んだことがなく、「見た目が魅力的であったため」に購入したとのことです。

これを受けて、同学会は「カフェイン含有量が多い飲み物に関しては、自動販売機での購入ができないようにし、購入できる年齢制限を設ける」ことや「エナジードリンクの缶を小児が選ばないような絵柄にする」ことを提案しています。

また、3月にサントリーが新発売した商品「BOSS CAFFEINE」については、子どもや妊婦でも手に取りやすいパッケージである一方、含まれるカフェイン量が「エナジードリンクの2.5倍」にあたる200mgだったことで「カフェインの過剰摂取につながる」とSNSで批判が集まりました。

同商品のニュースリリースには<今回、仕事や勉強、スポーツや運転などのシーンにおいて、エナジードリンクと同様に缶コーヒーを“使う”若い世代に着目しました。>として、意識的に若者世代をターゲットにしたことが記載されています。

カフェインの摂取量の目安として、世界的には、まず妊娠中の女性に対して、WHOなどが「カフェインの過剰摂取は胎児の成長遅延、出生児の低体重、早産、または死産と関連する可能性が示唆されている」としています。WHOは妊婦に対して、コーヒーを1日3から4杯までにすることを呼びかけているほか、イギリスなど、より厳しい制限を求めている国もあります。

なお、カフェインを一生涯、摂取し続けたとしても、健康に悪影響が生じないと推定される一日あたりの摂取許容量は、個人差が大きいことなどから、日本においては、また国際的にもあまり設定されていません。

ただし、カナダ保健省は「健康な成人は最大400mg/日」、子どもはカフェインに対する感受性が高いため「4歳〜6歳の子どもは最大45mg/日」、「7歳〜9歳の子どもは最大62.5mg/日」、「10歳〜12歳の子どもは最大85mg/日」まで、などとする注意喚起をしています。

日本の厚生労働省はエナジードリンクについて「製品に記載されている表示をよく確認の上、子ども、妊婦、授乳中の方、カフェインに敏感な方などは飲用を控えること」「他のカフェインを含有する製品を併せて喫食しないこと」、さらに「1日に何本も飲まないように注意しましょう」と注意喚起しています。

また、一般社団法人全国清涼飲料連合会では「カフェインを多く添加した清涼飲料水(いわゆるエナジードリンクを含む)の表示に関するガイドライン」を作成、これに基づき、カフェイン量の表示とともに「小児や妊婦などに対して飲用を控える旨」の表示が行われるよう取り組んでいるということです。

一方で、エナジードリンクが例えばeスポーツの文化に入り込み、販売戦略のために若者がターゲットにされている現実もあります。あらためて、カフェインとの正しい付き合い方が求められます。
 

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