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IT・科学

見た目に悩む人へ 自分を「評価する人」じゃなくて仲間を見つけて

プラスサイズモデル・吉野なおさん

ダイエット情報や、コンプレックスをあおる広告などがあふれる今。過去に摂食障害で苦しんだプラスサイズモデルの吉野なおさんは「自分を評価する人じゃなくて、仲間を見つけて」と呼びかけます
ダイエット情報や、コンプレックスをあおる広告などがあふれる今。過去に摂食障害で苦しんだプラスサイズモデルの吉野なおさんは「自分を評価する人じゃなくて、仲間を見つけて」と呼びかけます 出典: 吉野なおさん提供

目次

摂食障害に悩んだ過去があるプラスサイズモデルの吉野なおさんのもとには、体型に悩む人たちから相談が寄せられます。モデルを始めた10年前よりも、見た目に悩む人が増えていると感じているそうです。「自分を評価する人じゃなくて、仲間を見つけよう」と呼びかけているなおさんに話を聞きました。(withnews編集部・水野梓)

吉野なお(Nao):1986年、東京生まれ。2013年3月より、雑誌『ラ・ファーファ』(文友舎)でプラスサイズモデルとして活動を始める。雑誌のほか、通販サイトや広告など、プラスサイズのファッションモデルとして活躍。摂食障害(主に過食症)を経験、回復した経験をコラムやイベントなどで発信。Twitterはhttps://twitter.com/cheese_in_Nao

10年前に比べて「見た目の悩み」増加

モデル活動を始めて10年が経ったというなおさん。当初から、摂食障害(おもに過食症)に苦しんだ経験は明かしていましたが、インスタグラムといったSNSで発信するようになってから、お悩み相談も数多く寄せられるようになりました。

【なおさんインタビュー前編】「やせたら付き合う」と言われ…摂食障害に苦しんだ過去から思うこと

そんな体験から、モデル活動を始めた10年前と比べて「見た目に悩む人は増えている」と感じるそうです。

「見た目のコンプレックスを刺激する情報が多いですよね。写真加工アプリも進化して、ダイエットのビフォー・アフターを載せるSNSアカウントもあるし、ダイエット広告も増えています。インフルエンサーが勧めるサプリなど、ダイエット情報の真偽の見極めも難しいなぁと感じます」

出典: Getty Images ※写真はイメージです

SNSは、海外のプラスサイズのファッション情報を手軽に得ることができたり、プラスサイズモデルの考え方が海を越えて日本に伝わったりと、もちろんいい面もあります。

一方で、「自分がもし今の情報環境で10代だったら…」と想像すると、「やせたときに『こんなにやせました』ってビフォーアフターをアップしていたと思います。それでたくさん『いいね』をもらいたいなと思っていたはず」と話すなおさん。

「それで、さらに『やせなきゃ』という負のループにはまっていったんじゃないかな」

人の体型に口出ししてくるのは…

ダイエットの危険性を指摘したり、摂食障害の体験を紹介したりする記事には、「摂食障害にならないよう、適度にダイエットできないのが悪い」といった反応があることもあります。

なおさんは「私にも、『やせろ』『太っているのは不健康』といったコメントがよく来ます」と言います。

「でも、そういう人って表面的なところしか見ていませんよね。太っている人はいっぱい食べている、制限がきかないといったイメージで、責めることができると思っているのかもしれません」と指摘します。

「健康と『やせ』がセットという価値観が広がっていて、さらに、体型ってすぐには変えられないので、口出ししやすいだろうなとも思います。男性から『ダイエットなんて簡単にできる』とコメントが来たこともありますが、男性と女性は体のつくりも違うし、なかなか筋肉質にはなれません。それに体質や個人差もあります」

出典: Getty Images ※画像はイメージです

現代の20代の女性は、5人に1人がBMI(体格指数)18.5未満の「やせ」の状態です。女性の平均BMIは、終戦直後よりも現代の方が減っているという状況です。

それなのに、SNSや街中にはダイエット広告があちこちにあり、スマホのカメラではほっそりして映るフィルターがかかるなど、社会からの「やせ礼賛」のメッセージはあふれています。

なおさんは「栄養のあるものを味わって食べるとか、体を動かすといったプラスの考え方ではなく、『食べなければやせる』という誤ったマイナスの考え方が根づいてしまっているのも問題だな、と思います」と指摘します。

自分の「仲間」を見つけてほしい

なおさんは6月末、これまでの体験を振り返り、見た目に悩んでいる人に向けたメッセージをまとめたエッセイ本『コンプレックスをひっくり返す』(旬報社)を出版しました。

出典:『コンプレックスをひっくり返す』(旬報社)

本を執筆中に心がけたのは、悩む人びとへの「一方的な押しつけ」や「お説教にしたくない」ということ。

「あなたはそのままで美しい」といった励ましは、とても大事である反面、自信のないときは、肯定的な言葉を素直に受け取ることはなかなかできません。

「力任せに励ましをプッシュするんじゃなくて、回復に至るまでの細かな話をしたいなと思いました」と話します。

「自分を評価する人ではなく、仲間を見つけてほしい」と本のなかでも呼びかけます。

彼の考え方は「世の中の全てじゃない」

やせたいと思いつつ過食症に悩んでいた20代のとき、当時付き合っていたモラハラ気質の彼氏から「すっぴんがブスだからいつもメイクをしていろ」と言われ、アイプチやつけまつげのノリで、まぶたや皮膚が荒れてもメイクをしなければ人前に出れなくなってしまったというなおさん。

当時、働いていた会社の先輩たちと温泉宿へ泊まったときも、「ブスってイジられるかも」と不安で顔を洗えませんでした。

「メイク落としなよ」と勧められて思い切って化粧を落としたところ、誰も自分のすっぴんの顔には言及しません。ある男性の先輩はぽろっと「女子はすっぴんの方がかわいいよなー」と言ったそうです。

旅先でおいしいものを味わうなおさん
旅先でおいしいものを味わうなおさん 出典: なおさん提供

「『やせなきゃいけない』『すっぴんはダメ』という彼氏の考えに洗脳されていた状態でしたが、ふと、『彼の考え方って世の中の全てじゃないのかな?』『彼って変かも?』と感じた経験でした」

同年代が集う学生時代には、出会える人の幅が狭く、自分が心地よいと感じる人と出会えるとは限りません。しかし、なおさんは「大人になると行動範囲も広がって、出会う人の幅も広がって、共感できる人や仲間とも出会えます」とエールを送ります。

自分の心の「窓」を開けて

10代の頃は、「この先どうやって生きていこうか」と不安になり、見本や説明書、ルートマップがほしくなってしまう年頃でもあります。

「SNSや広告で、やせると幸せになる・うまくいく・彼氏ができる……そんな〝見本〟を見たら、自分もやってみようと思うかもしれない。でも、ルートって実は人の数だけあります」

徐々に回復していったと体験を振り返るなおさん=なおさん提供
徐々に回復していったと体験を振り返るなおさん=なおさん提供

そのうえで、なおさんは「自分の心の『窓』をちょっと開けてみてほしい」と呼びかけます。

「もしかすると虫が入ってくるかもしれないけれど、気の合う誰かとも出会えたりもします。そこで仲間を見つけてほしいです」

誰かに傷つけられた経験があると、怖くてなかなか窓を開けられない、ことも。なおさんは「もちろん、自分が誰かと出会って傷ついたり、誰かを傷つけちゃったりすることもあります。でも、自分の気持ちに素直になって向き合えば、共感してくれる仲間はきっと現れるはず」と話します。

「たとえ傷つくことがあっても、関わる人の数が増えれば『イヤな経験も薄まる』というメリットもあります」と笑います。

「誰かひとりに頼ったり依存したりするのではなく、たくさんの人と出会って多くの仲間をつくってほしいです」


吉野なお『コンプレックスをひっくり返す』(旬報社)
なおさんが参加するオンラインイベント<TASTE サマースクール2023 「ボディイメージについて話そう」>の参加はこちら(https://tiget.net/events/240339)から
【なおさんインタビュー前編】「やせたら付き合う」と言われ…摂食障害に苦しんだ過去から思うこと

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