梅雨の時期は食中毒に注意が必要です。セレウス菌は食中毒の原因の一つで、「加熱しても殺菌できない」という特徴がある病原体。国内ではチャーハンや焼きそばなどでの食中毒が多いというこの菌について、内閣府の食品安全委員会が注意を呼びかけています。どのような対策があるのか、まとめました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
気温と湿度が高くなる梅雨は、細菌性の食中毒が発生しやすくなる時期。その原因の一つであるセレウス菌について、内閣府の食品安全委員会が6月、注意を呼びかけました。
同委員会は、セレウス菌について「熱に強く通常の加熱調理で殺菌できません」、そしてセレウス菌による「食中毒発生の多い食品はチャーハンや焼きそばなど」だとします。
なぜ加熱調理で殺菌できないのでしょうか。それは、セレウス菌には「芽胞」という熱に強い形態になって生き残る特徴があるから。このとき「90℃で60分の加熱にも抵抗性があるとされ、通常の加熱調理で殺菌することができません」とします。
さらに「この菌は調理後の食品中で増殖して、嘔吐を引き起こす毒素が20~30℃で多く作られ、その毒素は126℃で90分の加熱処理でも分解しないと言われています」と同委員会。菌自体や、その菌が作る毒素も、熱に強い特徴があります。
セレウス菌は土壌や空気中、河川など自然界に広く生息します。そのため、農作物を汚染しやすい細菌です。
セレウス菌食中毒は、この菌に汚染された食品を食べることにより発生します。嘔吐型と下痢型があり、嘔吐型は汚染された食品中で菌が産生する毒素によって、下痢型は食品と一緒に入り込んだ菌がヒトの体内(小腸)で増殖し産生する毒素によって、それぞれ引き起こされます。
嘔吐は食べてから0.5~6時間、下痢は食べてから8~16時間で見られ、日本の事例は嘔吐がほとんど。多くの場合、発症後1~2日で回復するということです。
厚生労働省の2022年度(令和4年度)の食中毒統計によると、総事件数(962件)に占める割合は0.3%、総患者数(6856人)に占める割合は0.7%と、そう多くありません。ただし、2008年には家庭で調理された食品が原因で1名が死亡した事例があります。
国内でセレウス菌食中毒の発生の多い食品は、チャーハン、ピラフなどの焼飯類、焼きそばやスパゲッティなどの麺類など。
一般食品に通常付着している程度の菌数では発症に至りません。しかし、セレウス菌は熱に強い芽胞を形成するため、加熱調理された食品であっても、室温で放置すれば増殖し、嘔吐を引き起こす毒素が作られます。
なお、同じく芽胞を形成する食中毒の原因菌にはウェルシュ菌があり、原因としてカレーやシチュー、宴会料理など、食肉や魚介・野菜類を使用した煮物や大量調理食品が多くみられます。こうした料理も放置すると食中毒のリスクがあります。
セレウス菌は自然界に広く存在するため「食品に付着させないことを徹底するのは不可能」と同委員会は指摘。だからこそ、菌を増殖させないことが重要だとします。そのため、セレウス菌による食中毒の予防のためには、以下のポイントが重要だということでした。
・大量調理はせず必要なぶんだけ調理をし、調理後はすぐに食べる。
・調理後に食品を保存する場合は、菌が増殖する前に冷蔵庫に入れる。
・冷蔵庫に保存した食品も、なるべく早めに消費する。