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電子機器の〝フリーズ〟なぜ起きる? 専門家に聞く家庭での対処法

電子機器はどうやってフリーズから守られているのか?※画像はイメージ
電子機器はどうやってフリーズから守られているのか?※画像はイメージ 出典: Getty Images

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突然、パソコンが動かなくなる「フリーズ」。そんな経験は、誰にでもあるはず。どうやって対処するべき? もしそれが電車など重要なライフラインを司る電子機器だったら? こうした電子機器はどうやってフリーズから守られているのか、専門家と鉄道会社に話を聞いた。(ライター・我妻弘崇)

フリーズはなぜ起きる?

そもそも、フリーズはなぜ起きるのか。その原因をIT機器製造メーカーのバリューソリューション株式会社、代表取締役・日野利信さんに尋ねた。

日野さんはパイオニアに技術者として勤務した後、独立。電子機器のフリーズを検知すると自動的に再起動し復旧する『NONフリーズ』を開発した、フリーズに明るいスペシャリストでもある。

まず、フリーズの原因としては、大きく「コンピュータ側の問題」と「外部環境の問題」の二つに分けられるという。

前者には例えば「プログラムなどの問題や不調」「いわゆる熱暴走」「ハードディスクの老朽化」「ストレージ(メモリ)不足」がある。これは普段、パソコンを使う人であれば、想像しやすいだろう。

後者はというと、「サイバー攻撃」もイメージがわくのではないか。インフラ設備などの稼働を妨害する攻撃は、ウクライナ戦争でも取り沙汰されている。

また、「電圧低下(ドロップ)」によるフリーズもある。電線に電流を流すと、電線の電気抵抗により一部の電流が熱に変換されるが、変換される熱量と電流が大きくなったときに、一時的に電圧が低くなる「ドロップ」という現象が起きる。このとき、電子機器が必要とする電圧を下回ると、停止してしまうのだ。

この他にも、日野さんいわく「意外と多い」というのが、「ノイズ(不要電波)」に関連して引き起こされるケースだという。

「コンピューターには、動作周波数(クロック周波数)があります。その周波数がずれると、フリーズすることがあります」(日野さん、以下同)

若干、話が難しいので、一つひとつ説明していこう。そもそも動作周波数とは、CPUが1秒に動作する回数を測るもので、単位はGHz(ギガヘルツ) 。CPUのスペックを確認すると、必ずXXGHzと書いてあるはずだ。

「パソコンはもちろん、動作周波数は携帯電話やWi-Fi、テレビ放送・衛星放送、レーダー、電化製品などにも存在します。その動作周波数を狂わせる、ほとんどの原因がノイズです」

心臓のペースメーカーの動作不全を引き起こさないように、優先席付近では携帯電話の電源を切るように言われるのは、まさにこのノイズによる干渉を防ぐためだ。(なお、現在の環境では携帯電話の電波がペースメーカーに与える影響は少ないとみられている。)

ノイズとは「電気的・電磁的雑音」のこと。電子機器に電波障害や画面の乱れ、誤作動、場合によっては故障を引き起こすことも。特に、フリーズに関しては、ある電子機器の使用環境において、干渉してくる「想定されていない周波数」がノイズとされる。

ノイズの原因になるのは、違法無線(不法電波)やアマチュア無線など。これらによっても、パソコンや防犯カメラなどの電子機器がフリーズする。

電子レンジでWi-Fiが切れる

ノイズの発生源はまだまだある。小さいものでは電子レンジ、大きいものでは高圧送電線。ノイズは、いたるところで発生するという。

「たとえば、電子レンジの仕組みは、強力な電磁波(高周波)を食品に当てることで、食品の中の分子を揺らして温めるものです。この電磁波の漏れが大きければ大きいほど、ノイズとなり、パソコン環境に影響を与えてしまいます」

Wi-Fiが切れる――。こういった現象にも周波数が関係しているそうだ。無線LANに利用される電波には、「2.4GHz帯」と「5GHz帯」の2種類がある。前者は、障害物に強く、影響を受けにくいため遠くまで届きやすい。後者は、障害物に弱いため障害物の影響を受けやすいが通信速度が速い。

汎用性の高い「2.4GHz帯」は、電子レンジをはじめ、さまざまな電化製品に使われている。つまり、「2.4GHz帯」のWi-Fiの場合、同じ周波数帯を使っているため、電子レンジなどのノイズによって、Wi-Fiが不安定になり、切断されることがあるというわけだ。

「エアコンなどのモーター系の電化製品もノイズを発生させやすいです」と日野さんが指摘するように、もしWi-Fiが不安定になりやすい方は、一度ルーターの設置場所を、そうした電化製品から遠ざけてみるといいかもしれない。

もちろん、こうしたノイズによる障害は、自宅に限った話ではない。電圧の高い電気が流れているところには、ノイズが出やすくなる。鉄塔があるような高圧送電線の近くでは、大きなノイズが発生している。

「電車にはパンタグラフがあり、これもノイズの発生源です。そうでなくても、駅のホームには電子機器がたくさんあるため、ノイズが発生しやすい場所と言えます」

このように、フリーズの原因は複合的だ。しかし、電子機器そのものの故障による停止は、日野さんによればたった10%ほど。多くは外部環境の問題により起きており、その中でもノイズは見逃せないと日野さんは指摘する。

ただし、こうしたフリーズは、実は「再起動をするだけで正常に戻る」。読者のみなさんの家庭でフリーズが起きたときは、慌てずにその電子機器を再起動すればほとんどのトラブルは解消できると言える。問題は、少しの間でも電子機器が止まってしまうことが、大きな損害につながるような場合だ。

ライフラインのフリーズ対策は

その一つが、前述したような「駅」。電車の運行を司る電子機器がもし、フリーズして、復旧に時間がかかったら……。どのような対策をしているのか、東急電鉄電気部の担当者に話を聞いた。

「例えば弊社はすべての駅に防犯カメラを設置していて、その数は合計大体3000台ほど。電車の運行に関しては影響ありませんが、防犯カメラに関して言えば今もフリーズは発生しています。肌感では、1週間の中で1台ぐらいフリーズしているでしょうか。原因は複合的ですが、ノイズの影響もあるでしょう」

機械室にはさまざまな電子機器があり、その電波干渉もある。また、一般の企業と異なり、同社は沿線に自営の変電所を有する。まさに複合的だ。
          
防犯カメラだけではない。たとえば、デジタルサイネージなどは各駅に無数あり、システム化され、担当部署が全体をコントロールするような機器となる。

これらはそのシステム自体にフリーズも起きやすく、起きた場合の対応も難しい。まずは遠隔で再起動を図り、それでも直らなければ、担当部署の職員が現地に赴くという。

このように、モノが現地にある以上、システム化はゴールではなく、その運用に思わぬ人的なコストがかかることがあるのだ。

「IoT(Internet of Things=モノのインターネット)化が当たり前になる」とうたわれ、「自動運転」などの技術がもてはやされる現代社会。しかし、「大きな視野でフリーズ対策を講じていかなければ、そういった未来は訪れないと思います」と警鐘を鳴らすのは、冒頭の日野さん。

例えば街中に無数にある携帯電話のアンテナ。電波は弱いが遠くまで届く4Gから、電波は強いが近くまでしか届かない5Gへの移行で、実はアンテナの数が大きく増えている。しかし、アンテナ自体のフリーズ対策や、対策ができる人材の育成は「ほとんど進んでいない」のだという。

「我々がやっているのは、監視カメラやホテルのWi-Fiなど、痒い所に手が届くようなフリーズ対策です。大きな規模のフリーズ対策に、我々の出番はありません。社会に実装する、インフラになるような巨大なネットワークシステムを構築していくのなら、もっと真剣にフリーズ対策を考えなければならないと思います。

また、人を育てるということも欠かせません。現在、ネットワーク機器が停止した際に、きちんと対応できる若い技術者が減っています。エンジニアは、IT企業やゲームのプログラミングといった華やかな世界に流れています。復旧作業などの領域で技術を発揮しようといった気持ちを持つ人が少なくなっている。本当に、自動運転やIoTを社会に定着させるのであれば、こうした分野のリスクマネジメントができるエンジニアを育てていかないといけません」

新しい未来を作るのであれば、「もしも」のときを想定した新しい設計が必要になる。

「外出していても家の状態がわかったり、家電製品をコントロールできたり、これからもっとすばらしい世界になっていくと言われています。でも、ルーターが止まったら、どうするんですか――そのことについては、誰も触れていませんよね?」

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