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シェアサイクル、利用者数トップは愛知・岡崎の経路 その理由とは
「推しの自転車で聖地巡礼する人も多いです」
日々の生活の移動手段としてすっかり定着しているシェアサイクル。貸し出し拠点(ポート)は、都市部だけでなく地方にも増加していますが、その中でも特に好んで利用される経路はどこなのでしょうか。
調べてみると、都心から遠く離れた「意外な場所」が上位に入っていました。(朝日新聞デジタル企画報道部・山崎啓介)
調査に協力してくれたのは、「ハローサイクリング」などを運営する「オープンストリート」(東京都港区)。都府県の各地に約2万5千台のシェアサイクルを設置しています。
同社によると、利用者数が最も多かった経路は、愛知県岡崎市にある名古屋鉄道の東岡崎駅前ポートで借り、同じポートに返す周遊利用だったそうです。22年で最も多かった月には、284人が351回利用していました。
この経路が多かった理由について、同社の担当者は「人気ユーチューバー東海オンエアの『聖地巡り』で利用されているのではないか」と推測します。
東海オンエアは、言わずと知れた岡崎市を拠点とする人気ユーチューバー。市観光協会によると、動画によく登場する飲食店や洋服屋などが、東岡崎駅から1キロほど離れたエリアに点在しているそう。
協会の担当者は「シェアサイクルはタクシーより安く、バスほど時間に縛られず、目的地のすぐ近くまで移動できます。メンバーの名前をラッピングした『東海オンエア号』もあり、推しの自転車に乗りながら聖地巡礼する人も多いです」と話します。
一方、利用者数でなく、利用回数が最も多かった経路は、千葉市美浜区の高層マンション近くにあるポートから、JR海浜幕張駅前のポートまでの経路。月に659回利用され、2番目もこの復路でした。
出勤のために週に1,2回は利用するという20代女性は「バスは本数が少なく、使い勝手が良くなくて」。近くに住む50代男性も「シェアサイクルは気分転換にもなるので、毎日のように利用しています」と話していました。
次いで多かったのは、埼玉県朝霞市の病院「TMGあさか医療センター」からJR北朝霞駅への経路で、月432回。
東京都足立区の文教大・東京あだちキャンパスから東武スカイツリーライン谷塚駅間が月420回でした。
国土交通省によると、シェアサイクルは2005年ごろから全国の自治体で社会実験が始まり、NTTドコモなどの民間企業が参入。ポートは21年度までの5年で8倍に増え、43都道府県の7030カ所に設置されています。
ですが、ただやみくもに設備だけを広めても収益は上げられません。
そこで、NTTドコモの後にシェアサイクルを展開したオープンストリート社は、昼夜人口や駅との距離、大学やスーパーといった近隣施設の分布などから分析を行い、収益性が高い地域を予測してポートの設置をするかどうかを判断しているそうです。
利用経路ランキングで上位だった海浜幕張駅の周辺や文教大学のポートは、この売上予測を元に設置が進められた場所。
あなたがよく使うシェアサイクルの経路にも、ちょっと周りを見渡してみるとシェアサイクルが欠かせない「理由」が見えてくるかもしれません。
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