MENU CLOSE

ネットの話題

コツメカワウソ「かわいい」だけじゃない裏の顔 ペット化のリスクは

5月31日は「世界カワウソの日」

エサを求めて鳴く上野動物園のコツメカワウソ。新鮮なエサを用意するのも大変で、個人で飼育するペット化には「さまざまなリスクがある」といいます
エサを求めて鳴く上野動物園のコツメカワウソ。新鮮なエサを用意するのも大変で、個人で飼育するペット化には「さまざまなリスクがある」といいます 出典: 水野梓撮影

目次

ことし5月31日は「世界カワウソの日」です。その日にあわせ、全国各地の動物園がコツメカワウソの生態を「#ペットにしても幸せにできない動物」のハッシュタグでSNS投稿したり、イベントを開催したりしています。ペットに向かない「ウラのカオ」を知ってほしい――。上野動物園のコツメカワウソを訪ねると、「かわいい」だけではない一面が見えてきました。(withnews編集部・水野梓)

【PR】「あの時、学校でR-1飲んでたね」

ペットとして飼うリスクを知って

5月の平日の昼間、上野動物園のコツメカワウソの展示エリアを訪れると、飼育されている1頭のオスが甲高い声で鳴いていました。

きっと昼の「エサの時間」を察知して鳴いているんだろうなぁ……と想像します。離れた柵からでも十分大きく聞こえる鳴き声です。

飼育員がアジを水面に投げると、すごいスピードで追いかけてキャッチ。手で抱えて味わいます。

投げ込まれたアジに一目散に向かっていくコツメカワウソ
投げ込まれたアジに一目散に向かっていくコツメカワウソ

その後に与えられた「ニワトリの頭」は、豪快にむさぼります。

生息地では、魚のほかにカニなども殻ごと食べるコツメカワウソ。その「かむ力」を発揮してもらおうと与えているそうです。

ニワトリの頭をむさぼるコツメカワウソ。ワイルドな顔つきです
ニワトリの頭をむさぼるコツメカワウソ。ワイルドな顔つきです

冷凍するとビタミンが壊れてしまうため、エサは鮮度の高いものを与える必要があります。

上野動物園の教育普及課長・大橋直哉さんは「かわいさに注目されるコツメカワウソですが、飼育は意外に大変なんです」と指摘します。

狭いスペースでストレス、獣医師は?

WWFジャパン(世界自然保護基金ジャパン)によると、メディアなどで取り上げられ2017年ごろから〝ペットブーム〟が起きたコツメカワウソは、生息地の環境破壊などを背景に、過去30年間で個体数が3割も減少しました。

IUCN(国際自然保護連合)のレッドリスト危急種(VU)に指定され、取引がリスクに拍車をかけているとして2019年にはペット利用の輸入が禁止となりました。

展示エリアの水場を泳ぐコツメカワウソ。上野動物園では生きたドジョウを与え、エサとして追いかけるコツメカワウソの運動量を確保しているそうです。水道料金も高額なことに…
展示エリアの水場を泳ぐコツメカワウソ。上野動物園では生きたドジョウを与え、エサとして追いかけるコツメカワウソの運動量を確保しているそうです。水道料金も高額なことに…

一方で、規制の前に輸入されたコツメカワウソや、その個体から生まれた個体であれば、その証明ができて許可を受けた場合の購入は違法ではないといいます。

実物を見るとやっぱり「かわいい」と感じてしまうコツメカワウソですが、動物園で愛(め)でたいと改めて感じました
実物を見るとやっぱり「かわいい」と感じてしまうコツメカワウソですが、動物園で愛(め)でたいと改めて感じました

それでも、野生動物であるコツメカワウソをペットとして飼うことにはさまざまなリスクがあります。

まずは、狭いスペースで飼うことでストレスがかかる、体調を崩しても獣医師がなかなか見つからないといった「動物福祉」を確保できない問題です。

ほかにも、野生動物を飼えなくなって遺棄したり転売したりといった問題も考えられます。

たとえば「かわいい」と人気になったアライグマは、遺棄されて繁殖。生態系に悪影響を及ぼす「特定外来生物」に指定されてしまいました。

そして何より密猟・密輸を増加させ、絶滅に追い込むリスクがあります。

WWFジャパンの浅川陽子さんは、「『ペットとして飼いたい』という需要があることで、生息地での現地での密猟、密輸につながることが最も問題です」と指摘します。

「しつけ」虐待容疑のインフルエンサーも

上野動物園ではWWFジャパンとともに、「世界カワウソの日」の31日まで、ペットに向かないコツメカワウソの「ウラのカオ」を記した「しおり」を配布しています(配布時間は13~14時、場所は上野動物園東園の動物慰霊碑横)。

しおりの裏側は3種類。コツメカワウソの「ウラのカオ」が紹介されています
しおりの裏側は3種類。コツメカワウソの「ウラのカオ」が紹介されています

25日にしおりを受け取った来園者のひとりは、2022年に、コツメカワウソをたたくようなそぶりで追い回していたSNSのインフルエンサーが、動物愛護法違反(虐待)の疑いで書類送検になったことを覚えていると振り返ります。

子どもたちもしおりを手にしていました
子どもたちもしおりを手にしていました

インフルエンサーは「エサをやるときにかまれるので、しつけのつもりでやった」と話していたそうですが、上野動物園の大橋さんは「なつくように見えても、犬や猫とは違って、やはり野生動物です。見ると飼うでは大違いです」と指摘します。

都内から訪れた来園者は「ペットとして飼おうと思うなんてびっくりしました。コツメカワウソの生態やかわいさは、動物園で見るのがいいですね」と話していました。

【関連記事】飼ってみたい…にNO〝あのペットのウラのカオ〟動物園が伝える理由
https://withnews.jp/article/f0220926000qq000000000000000W02c10201qq000025076A

関連記事

PR記事

新着記事

CLOSE

Q 取材リクエストする

取材にご協力頂ける場合はメールアドレスをご記入ください
編集部からご連絡させていただくことがございます