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乳幼児のおもちゃ禁止、政府の異例の対応 誤飲「腸に穴が開く」例も

今回禁止されることになったおもちゃ「マグネットセット」の例。主に海外で製造されたものが、ECサイトで販売されている。
今回禁止されることになったおもちゃ「マグネットセット」の例。主に海外で製造されたものが、ECサイトで販売されている。 出典: Getty Images
子どもの安全のため、おもちゃへの新たな規制が導入され、6月16日から強い磁力を持つおもちゃ「マグネットセット」の製造や販売が禁止になります。近年、誤飲事故の報告が続いたためで、政府は磁石の誤飲について、深刻な例になってしまうリスクが高いと注意喚起しています。経緯と、大人がとるべき対応についてまとめます。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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「腸に穴が開く」“深刻な例”多く

19日に公布された政令で、子どもの安全のため、おもちゃへの新たな規制が導入されます。その対象の一つは強い磁力を持つおもちゃ「マグネットセット」です。

マグネットセットとは、3〜5mmの強力な小型磁石を使ったおもちゃで、球状や立方体のものがあり、互いをくっつけて遊ぶもの。主に海外で製造されたものが、ECサイトなどで販売されています。

経済産業省や消費者庁によると、2017〜22年に少なくとも11件の誤飲事故が発生。事故の被害者は年齢0〜7歳の子どもでした。

そのため、政府は6月19日から、子どもが誤飲する恐れのある小さなもので、磁力の強いものを、消費者に向けた商品として製造・販売することを禁止することを決めました。

今後、直径3.17cm未満のものは、誤飲しても体外に自然排出される水準の磁力であるように基準が定められます。

では、子どもが強力な磁石を誤飲すると、どんなことが起きるのでしょうか。実は、磁石の誤飲では、事態が深刻になる場合があります。

磁石の誤飲が怖いのは、複数の磁石を飲み込んだり、磁石にくっつく金属を一緒に飲み込んだりしてしまった場合、消化管を移動する途中で、その間に腸が挟まることにあるから。

経産省や消費者庁も「複数を飲み込み、それぞれが胃と小腸など異なる場所にとどまった結果、消化管を挟んでくっつくことで臓器に穴が開く深刻な例が多かった」としています。

2000~12年の米国のデータに基づく磁石誤飲の症例報告をまとめた報告では、医療行為が記録されている症例の内、約70%が外科的な処置を必要とし、自然に排泄されたのは20%をわずかに超える程度とされています。

海外のガイドラインでは、単独の磁石を誤飲したと思われるケースでもレントゲン撮影を繰り返して経過観察することが推奨され、複数誤飲のケースでは無症状でも入院の上、4〜6時間毎のレントゲン撮影が推奨されます。1個の誤飲だと思われるケースでも病院を受診の上、細かく経過観察してもらうことが必要です。

万が一、こうした磁石の誤飲事故が起きてしまったときは、自分たちで判断せず、まず病院に行くようにしましょう。

今回、おもちゃの製造や販売が禁止になりますが、それだけではなく、家庭内で使用している磁石、他にも乳幼児が誤飲すると危険な電池やたばこなどを、大人が子どもたちから遠ざけるなどする努力も必要です。
 

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