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〝生〟商品の多様化、食品衛生のプロが危惧する「あいまいさ」

生クリーム、生菓子、生ビール、生ハム、生パスタ……

生チョコレートは、公正競争規約でその定義が定められていますが、「生」がつく食品は他にも。写真はイメージです=Getty Images
生チョコレートは、公正競争規約でその定義が定められていますが、「生」がつく食品は他にも。写真はイメージです=Getty Images

目次

最近、スーパーやコンビニの商品棚に、「生」がつく飲料や食品が増えたような気がしている記者。生というと、「新鮮なもの」というイメージが先行していたのですが、いくつかの商品名の由来をみると、必ずしもそうではないものも。「生」ってなに?どんなときに使われるの?――。企業向けに食品衛生の研修なども行い、食品安全に関する情報を発信している専門家に話を聞きました。

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「生」の定義の有無、現状ないまぜ

話を聞いたのは、LRQAサステナビリティ株式会社取締役で、食品衛生の教育研修などを通じて食品安全の情報を発信している今城敏(いまなり・さとし)さんです。

2021年に「食品の『生』ってなに?」(https://note.com/imanari/n/n1602ae845c40)というコラムをnoteで公開していました。

コラムの中では、生クリームや生菓子については国の法律などで定義がされており、生ビールや生チョコに関しても業界ルールがあることを説明。一方で、「生」を用いた商品の中には、基準が明確ではないものもあると指摘しています。

このコラムを元に今城さんに話を聞くと、「『生』の定義があいまいなまま広く使われると、『生』が危険に扱われてしまう可能性もある」と、現状への懸念を語りました。
パンにも「生」がつく商品が。写真はイメージです=Getty Images
パンにも「生」がつく商品が。写真はイメージです=Getty Images

怖さの一つが「優良誤認」

これまでに、食品メーカーで研究や商品開発を担当したり、工場の品質管理も務めてきたりした今城さん。その経験からも、「生」がつく商品に関しては以前から注目していたといいます。
気になり調べる中で、今城さんは「生の定義があいまいだったり、はっきりしない商品もありました」。

この「定義がはっきりしない」「定義があいまい」ということには「怖さがある」と指摘します。

その怖さの一つとして挙げたのは、「優良誤認」というキーワードです。

消費者庁のホームページによると、優良誤認とは、「一般消費者に対し、(1)実際のものよりも著しく優良であると示すもの(2)事実に相違して競争関係にある事業者に係るものよりも著しく優良であると示すもの」を指し、場合によっては景品表示法違反にあたるといいます。

「フレッシュさを伝えるために『生』を使っているのだとしても、最近では『やわらかさ』をイメージさせる場合もあり、消費者の誤解を生む可能性があります」

「フレッシュさ」に過剰に応えようと…

「さらに怖い」というのが、法律ではっきり定義されていない「生」商品があることで、消費者が求める「フレッシュさ」に、過剰に応えようとする商品提供者も出てきてしまうのではないかとの懸念です。

最近では、「鶏レアチャーシュー」として、中まで火が通っていないと思われる状態の写真もメニューに掲載されていたラーメン店で、食中毒者が出る事案もありました。

生や加熱が十分でない鶏肉には、食中毒の原因となるカンピロバクターが付着している場合があります。カンピロバクターに感染すると、下痢や腹痛などの症状が現れ、感染数週間後に、手足の麻痺や呼吸困難などを起こす「ギラン・バレー症候群」を発症する場合もあります。
(参考:厚生労働省HP https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000126281.html
生しらすも鮮度をイメージさせます。写真はイメージです=Getty Images
生しらすも鮮度をイメージさせます。写真はイメージです=Getty Images

消費者側も基礎知識を持つ必要


今城さんは「消費者にとって、『生』がつく商品に珍味の感覚がある場合もある。だからこそ、こういう商品が生き残ったり、新しいのが出てきたりしているのでしょう」と話す一方で、そこには消費者側も食品に関する基礎知識を持つことも必要不可欠だと指摘します。

「例えば最近、じゃがいもを生で食べるレシピをネット上でいくつもみかけました。『じゃがいもの芽や緑色の部分には、ソラニンなどの毒素が含まれる』などの知識がある人であればいいのですが、毒性のある食品が、家庭料理においても安易に『生』で取り入れられることには懸念を覚えます」

「生」表記の氾濫の副作用


「生」がつく商品名が広がる背景については、消費者が「生」という言葉に「新鮮さややわらかさを感じていて、国民性としても『生』のものを求める傾向があるように感じる」と今城さん。

現在、はっきりとした定義のない「生」の商品に関しては、「命に関わるほどの危険性があるわけではないからこそ、規定がないのだろう」と理解を示しつつも、「現状のまま『生』の表記が氾濫すると、食品安全の意識が不足した生活者に『生』が危険に扱われてしまう可能性もあるのではないか」と警鐘を鳴らしています。

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