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#15 親になる

母子手帳〝炎上〟で振り返る父親との接点 妻「見せたくない」の理由

“母子手帳”を巡りネットでさまざまな意見が出たが……。※画像はイメージ
“母子手帳”を巡りネットでさまざまな意見が出たが……。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

4月から約10年ぶりにリニューアルされた母子手帳。父親が「(妻の)出産後の気持ち」などを記載するページが追加されたり、「親子手帳」などへの名前の変更の議論があったりしたことが、SNSで大きく取り沙汰されました。父親になったばかりの記者が、経緯を紹介しつつ、母子手帳との接点や、父親の自覚を持ったリアルなきっかけを振り返ります。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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母子手帳リニューアルが“炎上”

在宅勤務の休憩中のことです。生後半年を過ぎた我が子をあやしながら、何の気なしにSNSを回遊していました。すると、「母子手帳」というワードがネットで“炎上”しているよう。まさに身近な話題ということで、起きていることを調べてみました。まずはその経緯を紹介します。

きっかけは、4月から約10年ぶりに母子手帳がリニューアルされたことを報じた、テレビのニュース番組でした。

そもそも、母子手帳とは、妊娠中や産後の女性と、生まれてきた赤ちゃんの健康を守るために、その状態を記録していくもの。正式名称は「母子健康手帳」です。

妊娠が判明したとき、住所のある自治体に妊娠届を提出することになっていますが、通常はこのときに窓口で母子手帳がもらえます。

妊娠の記録や、出産後の母親の健康状態、赤ちゃんの成長記録を書き込むもので、母子保健法という法律で、自治体が私たちに渡すことが定められています。

成長記録については、今回のリニューアルで「医療機関、子育て世代包括支援センターなどで参考にする」という注釈がつき、専門家や相談機関が一緒に子育てを見守っていることを示しました。

リニューアルでは他に、「父親や周囲の方の記録」というページが増え、そこには「赤ちゃんを迎える気持ちなどを書き留めておきましょう」と書かれました。「育児は父親も一緒にするものであり、母子手帳への記録にも参加してもらいやすくする」狙いがあるといいます。

母子手帳を巡っては、長年その名称問題が議論されてきました。具体的には「親子手帳」への変更です。すでに「親子健康手帳」といった名称を併記している自治体も複数あります。

今回の見直しにあたっても、「育児は男性も一緒にするものだから、母子とするのは時代に合わない」という意見が一部の専門家から出ました。

一方で、健康を守る対象は母子であるとして「名称を維持すべき」という意見もあり、結局、議論は平行線に。今回は変更なしという結論になりました。

このニュースを機に、特に「父親や周囲の方の記録」や名称問題について、母子手帳の本体の役割、すなわち母子の健康を守ることから外れるのではないか、父親の育児参加を促すためであればアプローチが的外れではないか、といった意見がSNSで飛び交い、「母子手帳」「親子手帳」がTwitterでトレンド入りするなど、関心が集まりました。

妻「見せたくない」の理由

振り返ってみると、父親の私が最初に母子手帳を“使った”のは、出生届を提出したときのことでした。

出生届は生まれた日から14日以内(生まれた日を1日目と数えます)に提出しなければなりませんが、医療機関で出産した場合、母子はそのうち約半分、入院しています。退院しても、基本的に母親は1カ月、家にいることが推奨されるため、子の父親が対応することも多いのではないでしょうか。

代理人に頼むこともできますが、「訂正は生まれた子の親しかできない」などの事情もあります。他にもいくつかの手続きをまとめてしたかったので、私は平日に出産関連の休暇を取得して、役所に行きました。

そして、出生届を提出するときには、母子手帳を持参するのが一般的です(提出自体は母子手帳がなくてもできます)。というのも、母子手帳には「出生届出済証明」という項目があり、そこに記入や押印をしてもらうことが必要だからです(持参しない場合、もらえる証明書を切り取って貼り付けるなどの対応をします)。

もらったその日に「父」欄に名前を書いた母子手帳でしたが、関わりはそれ以来でした。というのも、母子手帳に記載するのは「妊婦の健康状態等」や「妊婦の職業と環境」など。

妻に見せてもらって驚いたのは、「妊娠中と産後の歯の状態」といった細かい項目もあったことでした。ちなみに、厚生労働省によれば、むし歯や歯周病などの病気は妊娠中に悪くなりやすく、歯周病は早産などの原因になることがあります。

このように、出産までに父親が母子手帳に関わることは、正直、これ以上ないようにも感じます。我が家の場合、妻は「(歯科の)既往や体重なども書いてあるので、夫とはいえ積極的に見せたいとは思わない」と言っています。

夫婦間にもプライバシーがあること、また、こうした母体の情報も「母子の健康を守る」ための母子手帳には不可欠であることを考えると、母子手帳を使用する主体は母にならざるを得ないのでは、とも思いました。

後日、お子さんのいる同僚(女性)とこの件について話してみました。すると「正式名称の『母子健康手帳』だと目的がわかりやすいのに、母子手帳と短縮されると印象が変わるのかも」という意見が。

たしかに、この略称により、あまり本質的でない議論になってしまっている面もあると感じます。一方で、すっかり普及した名前なので、今さらこれを正式名称で呼び直すというのも、現実的ではなさそうです。

手帳よりリアルだったのは

他にも、健康診査の記録や予防接種の記録は、持ってさえいけば主に保健所や医療機関が記入してくれます。

一方で、子どもの成長・発達の経過や、発育曲線、保護者の記録、例えば「2カ月ごろから抱っこで哺乳瓶からミルクを飲むのをイヤがるようになった」「寝返りがえりX月X日」などは夫婦で分担して書くのもよさそうです。

我が家では、育休中の妻が健康診査や予防接種に付き添うことが多く、そうするとどうしても「主に妻の手元に母子手帳がある」という状態になりがちです。記入するのも妻が多くなるからか、「これはあなたが書いて」と頼まれることもありました。

とはいえ、実際は記入量がそこまで多いわけではないというのも、また正直なところです。

今回のリニューアルで注目された「父親や周囲の方の記録」というページ。一人の父親としては、「父親の育児参加を促すため」なのであれば、その象徴は母子手帳でなくてもいいのでは、という意見です。

多くの場合、父親の「育児が始まる」という実感は、出生届を提出するときに得られることでしょう。母子手帳は、母親の負担が大きいときは父親が代わりに記入することはあれど、その内容を見れば、母親のための要素が大きいことは自明です。

例えば私の場合は、授乳やうんち・おしっこ、睡眠の記録をするアプリを妻と共同の権限で使いだしたとき、「育児は父親も一緒にするもの」ということを強く意識しました。日々のミルク作りやおむつ替えの方が、圧倒的にリアルだったのです。

狙いはわかるし、男性の育児に水を差すようなことはしたくないものの、母子手帳に父親用のページを増やしたり、名前を変更したりすること以上に、まずはある一日、お世話をしっかりすることが、「育児は父親も一緒にするもの」への堅実な第一歩になるのではないでしょうか。

【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。

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