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#13 親になる

ついに離乳食スタート、どう準備する? WHO提唱「補完食」考え方

我が子に初めて離乳食を食べさせると「初めて食べ物を食べた赤ちゃんのような顔」としか言いようのない顔をした。※画像はイメージ
我が子に初めて離乳食を食べさせると「初めて食べ物を食べた赤ちゃんのような顔」としか言いようのない顔をした。※画像はイメージ 出典: Getty Images

目次

生後5、6カ月ごろから始まる離乳食。でも、実際に始めようとすると、事前知識と準備が必要なことに驚きました。特に最近では、WHOの提唱する「補完食」の考え方も注目されています。我が家での実践も交えながら、離乳食と補完食の違いをまとめつつ、困り事について専門家に話を聞きました。(朝日新聞デジタル企画報道部・朽木誠一郎)
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最初からは「ぱくぱく」しない

さて、赤ちゃんが生後6カ月を迎える頃のビッグイベントと言えば、「離乳食」です。

育児を間近で見ることのなかった私にとって、離乳食のイメージは漠然とした「赤ちゃんがぱくぱく食べてにっこり」くらいのもの。おわかりの方も多いように、この時点で「わかってない」ことがバレてしまいます。

というのも、後から学んだことですが、口腔機能が発達途中の赤ちゃんは、最初から食べ物をぱくぱくできません。初期(ごっくん期)、中期(もぐもぐ期)、後期(かみかみ期)、そしてぱくぱく食べられるようになる完了期までには、およそ1年の長い道のりがあります。

そもそも、そんな簡単に食べてくれはしないし、にっこりどころかしかめ面だったり泣き出したり吐き出したり戻したり……もちろんお子さんによりますが、我が家では、離乳食の道のりとは親の奮闘の軌跡でもあるーーということの想像すらつかないところからのスタートでした。

幸い、妻の趣味は料理。医療者なのでもともと一定の知識があり、現在は育休中で、開始前から熱心に勉強していました。我が子の食事に関しては、まさに先生です。私は調理の後片付けと、休日の食べさせ担当に。

厚生労働省の『授乳・離乳の支援ガイド』によれば、離乳食を与える目安は「首のすわりがしっかりして寝返りができる」「5秒以上座れる」「スプーンなどを口に入れても舌で押し出すことが少なくなる(哺乳反射の減弱)」「食べ物に興味を示す」の4つ。

妻とは「ハーフバースデーを機に離乳食を始めよう」と決めました。誕生日プレート風に盛り合わせた離乳食を準備し、お祝いと記念写真撮影のあと、いよいよ最初の一口をベビースプーンで近づけてみると……。

何やら楽しいのか、きゃっきゃと笑うので、そのまま口にスプーンを入れてみました。すると、本人は私たちも見たことのないようなしかめっ面に。まさに「初めて食べ物を食べた赤ちゃん」そのものの顔でした。でも、その後はぺろぺろと口の周りをなめ、ごくん。夫婦で拍手したのでした。

現在、我が家で大活躍しているのがブレンダーと電気圧力鍋。離乳食のレシピには、「すり潰す」「細かく刻む」「よく煮る」などの工程が登場しますが、これをすり鉢や漉し器、下ろし金、包丁、鍋とガスコンロで行うのはかなりの負担になります。

家にある場合はぜひ活用を、なければ事前の準備として、購入を検討してもいいかもしれません。

赤ちゃんに与える食事には「(卵などの)食物アレルギー」や「調理の仕方(基本的に生はNGなど)」、「食材の適不適(はちみつは加熱してもNGなど)」などの多数の論点がありますが、私がまず興味を引かれたのは、近年注目されている「補完食」という考え方でした。
 

WHOが提唱「補完食」

補完食とは、WHO(世界保健機関)が「離乳食」に代わる言葉として提唱する「母乳だけでは足りなくなる栄養を補うための食事」のこと。

前述の厚労省の支援ガイドでは“WHO では「Complementary Feeding」といい、いわゆる「補完食」と訳されることがある”と、離乳食とほぼ同義のものとして紹介されていますが、実際には量や回数などに少し異なる点もあります。

実は、一般に言われる離乳食の“決まりごと”は、明確な科学的根拠があるものばかりではなく、経験的・実践的に伝わってきたものもあるのです。例えば、離乳食を始めるときによく言われる「10倍粥や重湯から」もそう。

よく指摘されるのが、「10倍粥は薄い」ということ。母乳と比較すると半分以下のカロリーで、当然、それだけでは必要カロリーを満たすのが難しくなります。そのため、補完食では母乳以上のカロリーがある5倍粥を目安にスタートします。ちなみに、前述の支援ガイドでは「つぶしがゆ」スタートとされており、「何倍か」とは特に記載されていません。

また、育児本には離乳食が始まると母乳やミルクを減らしていくように促すものもありますが、補完食では開始後も母乳やミルクは無理に減らす必要がないとされてます。「食事量が増えると自然に減っていくので、大人が能動的に減らさなくてよい」というイメージ。

赤ちゃんは生後6カ月ごろから成長に必要な栄養の量と、母乳やミルクだけで摂れる栄養の量が乖離していきます。カロリーだけではなく、たんぱく質や鉄などの栄養素も同じです。

そこで補完食では、母乳やミルクを基本にし、成長にあわせて不足する栄養を補う方が、赤ちゃんの栄養状態が良くなる、という考え方をとっています。

ほかにも、離乳食のたんぱく質源としてはよく「白身魚から」と推奨されますが、補完食では適切に調理した赤身の肉や魚を与えても問題ないとされます(脂質の量は適正なカロリーになるように注意する必要があります)。むしろ、赤ちゃんは鉄が不足しやすいため、赤身の肉・魚やレバーはそれを補う上でも重要です。

取り組んでみた実感としては、“決まりごと”が多すぎて親が大変になる離乳食に対して、合理的かつ“決まりごと”が少ないのが補完食、という印象。

ただし、目安がなさすぎても困ってしまうし、特に食物アレルギーをチェックするための卵などの食材の与え方は、育児本など従来の離乳食で言われる手順が適しているとも思いました。

赤ちゃんによって食べやすいもの、食べにくいものも違います。我が家では基本は補完食の考え方を取り入れ、目安が必要なときや、心配なときは離乳食の“決まりごと”を参照するという「いいとこどり」の運用をしています。
 

「吐き出す」「戻す」悩みに

離乳食にしろ補完食にしろ、大きな考え方はともあれ、親としては結局のところ、具体的な料理に落とし込まなければ始まりません。実際に赤ちゃん用のレシピ本や、ネットのレシピを参考に、日々の料理を作ることになります。

そして、食べさせたときの我が子の反応は、当たり前ですが、どこにも書いてありません。笑顔のまま吐き出したり、時間が経ってミルクと一緒に戻してしまったり……。こうした実践の際の心構えについて、医師の相川晴さんに話を聞きました。

というのも、相川さんは著書『赤ちゃんのための補完食入門』(管理栄養士・川口由美子さん監修/彩図社)の中で、例えば「8倍粥くらいで様子をみて2週間で5倍粥に移行した」のように、現実的な「相川家の実践例」を交えながら私たち親を後押ししてくれていたからです。

やはり、食べないときはなかなか食べない我が子。食べても(飲み込まずに)吐き出したり、時間を置いて戻してしまったりします。せっかく作ったもので、悲しくもなりますがーー。

相川さんはまず「水分が摂取できているか、おしっこはしっかり出ているか、顔色がいいか、機嫌がよく元気かなどを確認してみてください」「そうであるなら、その日に必要な水分やエネルギーが補えているので、大丈夫です」とします。

ただし、赤ちゃんの体調に不安がある場合や、発育が(母子手帳などに記録する)成長曲線のカーブから上や下に外れていく場合などは「まずはかかりつけの小児科医に相談を」とのことです。

ちなみに、補完食を吐き出したり戻したりしたとき、同じ量を食べ直させた方がいいのでしょうか。これには「赤ちゃんもいっぱい頑張って食べた結果ですので、どちらの場合も食べさせ直さなくてOKです」「赤ちゃんが口からべーっと出しちゃうのも、赤ちゃんにとっては成長していく上での一つの経験と思って、気を取り直していきましょう」と相川さん。

「よく吐き戻すときは、一度に食べさせる量を少し減らして、その分、補食をするようにしたり、食べた後お腹を圧迫しないよう、横にしないようにしてあげると吐き戻ししにくくなることがありますのでお試しください。

もしあまりに回数が多い・吐く量が多い・特定の食材のときに吐く・体重が増えない(減る)といったときには一度かかりつけを受診して相談してみてください」

「補完食にしろ離乳食にしろ、一人ひとり違う赤ちゃんですから、育児書の通りにはうまく進まなくて当然です」と相川さん。離乳に取り組む親にエールを送ってくれました。

「私の子どもは上の子も下の子も少食で、本当に山ほど悩みましたし、実は今も悩んでいます。海苔しか食べない日もありましたし、自分で手づかみできるものしか食べないし、それすらもほとんど食べない……なんて時期もありました。

それでも幸い、カーブに沿って、小さめながらもじわじわと大きくなっています。大変と思いますが、育児、お互いに頑張りましょうね(辛いときは抱え込まずに、保健所などの相談窓口も利用してみてくださいね)」
詳細はリンク先から▼

赤ちゃんのための補完食入門(彩図社)

【連載】親になる
人はいつ、どうやって“親になる”のでしょうか。育児をする中で起きる日々の出来事を、取材やデータを交えて、医療記者がつづります。

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