連載
#12 #コミュ力社会がしんどい
一人が寂しくて不安…発達障害の私が安心できた「似た者同士」の空間
「人と関わりたい」思いがつなぐ関係性
大人になってから発達障害と診断された、漫画家のゆめのさん(ツイッター・@yumenonohibi)。生来の特性ゆえに、思うように他人と付き合えず、孤独感にさいなまれてきました。「やっぱり人と関わりたい」。そんな気持ちが強まる中、自らと似た境遇にある人々が集う当事者会に足を運ぶことにしたのです。交流の中から生まれてきた思いについて、ゆめのさんに描いてもらいました。
コミュニケーションが苦手――。ゆめのさんが長い間悩んできたことです。興味や関心に偏りがあったり、こだわりが強かったり。そんな性格ゆえに、周囲の人々との距離感がうまくつかめず、苦しんできました。
30歳を超えた頃、通っている病院で受けたのが、発達障害の一つ「自閉症スペクトラム障害(ASD)」の診断です。それまで感じていた生きづらさが、障害の特性に由来すると判明したのでした。
「しょうがない。人と関わらず、家で一人で完結することをして生きよう」。そう考えつつ日々を過ごすゆめのさんでしたが、胸には寂しさや不安が渦巻いていました。社会から疎外されている感覚すら抱き、思い悩みます。
これまでの経験について、理解し合える人々と出会いたい。ゆめのさんは苦悩を共有できる仲間を求めて、当事者会を探すことに。そして性自認が女性の人限定の集まりの存在を知り、参加してみようと決意します。
当事者会の開催当日、ゆめのさんは他の参加者たちと共に、会場内で机を囲んでいました。引きこもり状態にあったり、対人関係に難しさを覚えていたりと、全員がそれぞれの苦悩を携えた人々です。
「こんにちはー」。互いにあいさつした後、しばし流れる沈黙。「……緊張しますね」。苦笑する参加者の中に、ゆめのさんは自分自身と共通する要素を見て取り、いつのまにか安らいでいました。
初対面ではありましたが、不思議と会話が盛り上がります。湧き上がる楽しさに誘(いざな)われるようにして、身の上話が次々と口を突いて出てきました。気付けば、あっという間に終了の時刻となり、足取りも軽く会場を後にします。
心の内側にため込んでいた感情や、共有できないと思ってきた価値観を、他人と分かち合うことができた。その事実が、気持ちを晴れやかにしてくれたのです。
この体験に手応えを得た後、ゆめのさんは別の当事者会のイベントにも出席するようになりました。初めて会う人たちと言葉を交わすことで、コミュニケーションの練習をしたいと考えたからです。
小規模なお茶会や、大人数で語らう会など、集まりの規模は様々。なかなか輪に入れず、気まずさを感じるときもあったものの、段々と場慣れしていきました。
ある会合での出来事です。居合わせた参加者の一人が、神妙な面持ちで自らの過去を語り始めました。「僕は……学生のころからクラスでのけ者扱いされて、いじめられていて」「トラウマでうまく対人関係が築けないんです」
でも、と、その人は続けました。「今日はこんなふうに皆さんとお話しできて、すごく楽しいです」。コミュニケーションが苦手な者同士だからこそ、成立する交流の形がある。ゆめのさんは、そう感じたのでした。
今回取り上げたいくつかのエピソードは、どれもゆめのさんにとって、たくさんの気付きに満ちたものだったそうです。
「世の中の〝普通〟に合わせるのが難しくても、同じ属性の人となら、分かり合い、共感し合うコミュニケーションを取ることができる。それが当事者会に行ってみて得られた発見でした」
世間一般によしとされている人付き合いの形になじめずとも、つながりを回復するための機会となり得る。その点で当事者会は、他者との関わりにつまずいてきた人にとっての可能性を秘めていると、ゆめのさんは話します。
「ただ当事者会においても、うまが合う人・合わない人双方と出会うし、人間関係の問題も生じる場合があります。参加するだけで疎外感が解消される、と安易に肯定しすぎるのも、ちょっと違うかなと思いました」
まずは実際に身を置いてみて、居心地が良いと感じられる集団の中で、色々な人と対話してみる。そうした経験を重ねたところに、生きづらさをほどくためのヒントが現れるのかもしれません。
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